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察知

195000PVアクセスを突破いたしました。今後も本作を宜しくお願い致します。


大陸歴438年深緑の月6日・ダンジョン・マスタールーム


アイリスがダンジョンの修繕内容をマリーカ達に伝えた翌日、ロジナ候国からの正式要請を受けたラステンブルク伯国はヴァイスブルク派遣軍を出撃させ、その動向は出撃から2日を経過した深緑の月6日の朝にヴァイスブルクの森に散開して警戒任務に就いている使い魔達によって察知された。

使い魔達は森を進むラステンブルク猟兵部隊の先鋒集団を映し出した魔画像をアイリスの元に送り、それを確認したアイリスはダンジョン周辺での狩猟と採取を中止させた後にヴァイスブルク伯国亡命政権、リステバルス皇国亡命政権、女戦士傭兵隊の首脳部をマスタールームへの召集要請を出した。

召集要請を出したアイリスがリリアーナと共に情報の精査を行っていると急を聞いたミリアリアがマスタールームに入室し、入室したミリアリアを目にしたアイリスは束の間笑顔を浮かべたが直ぐに表情を真剣な物へと変えながら口を開いた。

「……お疲れ様ミリア、急な報せでごめんなさいね」

「……いや、それに大丈夫だ、それよりも状況はどうなっているんだ?」

アイリスに声をかけられたミリアリアは一瞬表情を緩めた後に即座にそれを引き締め直して問いかけながらアイリスとリリアーナが見下ろしているテーブルの所へと歩み寄り、アイリスはテーブル上に具現化させた地図の魔画像を示しながら状況の説明を始めた。

「ついさっき使い魔達がラステンブルクの猟兵部隊らしき集団を確認したわ、中隊規模の部隊がヴァイスブルク方面に向けて移動中よ、恐らく先鋒部隊で後続部隊がある筈……今後続部隊を確認したわ、かなり規模が大きいわね」

アイリスがヴァイスブルク方面に向かっている赤い矢印、ラステンブルク猟兵部隊先鋒集団の事を説明していると地図の端に新たな矢印、後続部隊が出現して最初に出現した赤い矢印に追従してヴァイスブルク方面に向けて移動を始め、アイリスは使い魔から送られて来た魔画像を確認しながら言葉を続けた。

「……ラステンブルクの猟兵部隊ね、やっぱりかなりの規模の部隊ね」

「……ああ、あそこにいるのは恐らく猟兵団長だ、見る限り最低でも前回出現した部隊と同規模、下手をすれば上回る規模だな」

アイリスの呟きを聞きながら魔画像を見ていたミリアリアはそこに映し出されている猟兵団長とおぼしき人影を見ながら厳しい表情で呟き、アイリスが頷く事でそれに同意していると使い魔から送られて来ている情報を精査していたリリアーナが真剣な表情で口を開いた。

「……ミリアリア様の見立て通りですね、現在使い魔が確認した猟兵部隊の規模は約3000、3個猟兵団相当の部隊です」

「……恐らくロジナへの援軍ね、この前の戦いでだいぶ叩いたと思ったんだけどまた増援を、それも迂回すらさせずに送り込んで来るとはね」

リリアーナの報告を聞いたアイリスが不敵な笑みを浮かべて呟いているとマリーカとアナスタシアが到着し、それに続いて他の関係者達が次々に到着してマスタールームに入室した。

マリーカ、アナスタシア、カッツバッハ、アイリーン、クラリス、エメラーダ、イレーナ、サララ、クーリア、ヴァル、10名からなる各勢力の首脳部が緊張した面持ちでテーブルを囲むとフランシスカ達が皆の前に紅茶やドライフルーツ等を置いた後に一礼して退室し、アイリスはそれを確認した後に一同を見渡しながら口を開く。

「……よく来てくれたわね、先程、新たな敵性部隊の存在が確認されたわ」

アイリスの言葉を聞いた出席者達は表情を鋭くさせながら頷き、それを確認したアイリスはテーブル上に具現化させた地図を示しつつ言葉を続けた。

「確認された部隊はラステンブルクの猟兵部隊で規模は約3000、3個猟兵団程度の部隊と推測されるわ、恐らくロジナへ候国軍への増援部隊でヴァイスブルク方面に向けて前進中よ」

アイリスの説明と同時に出席者達の前に森を進むラステンブルク猟兵部隊の様子が映し出された魔画像が具現化され、クーリアはそれを凝視しながら呟きをもらす。

「……伝え聞いた所ではラステンブルクの猟兵部隊は先の戦いにて大損害を被った筈、それにも関わらずそれほど日を置く事無く大損害を被った地に再び部隊を投入して来るとは少々意外ですね」

「……潜り込んでるあの2人がいい仕事をしてくれてるみたいね、あの2人の報告であたし達が小勢なのを知ってるからこの対応になったんでしょうね」

クーリアの呟きを聞いたアイリスは不敵な笑みを浮かべながら蠢動しているメッサリーナとアグリッピーナの事に触れ、それを聞いたクーリアが頷いているとヴァルが眼をスウッと細くさせながら口を開いた。

「……では、そろそろ、あの御調子者達を処分して宜しいでしょうか、正直目障りです」

「……フフフ、申し訳無いけどもう少し待って頂戴、まだ、隠し球を持っているからせめてそれを使うまでは待ってあげるつもりよ」

「……承知しました。出過ぎた発言御許し下さい」

ヴァルの強硬な意見具申を受けたアイリスは穏やかに微笑みつつ返答し、それを受けたヴァルが叩頭しながら返した言葉に対して頷く事で応じた後に更に言葉を続けた。

「今回貴女達を召集したのは発見したこの部隊に対する対策として静観すべきか襲撃すべきかを協議して貰う為よ」

アイリスがそう告げていると地図の魔画像のヴァイスブルク方面の端に敵性部隊出現を示す赤い矢印が出現し、それを確認したアイリスは素早く新たな敵性部隊の魔画像を具現化させて確認を始めた。

「……あらあら、結構めんどくさい連中が来ちゃったわね」

魔画像を確認したアイリスはそう言いながらロジナ候国軍第九騎士団を主力とした部隊が映し出された魔画像を皆の前に具現化させ、それを目にしたカッツバッハが厳しい表情で口を開く。

「……魔曲騎士団ですか、確かにやっかいですね」

「……魔曲騎士団の他にラステンブルク伯国の滅龍騎士もいます、部隊規模もかなりありますね」

カッツバッハの呟きに続いてアハトエーベネの姿を確認したアナスタシアが厳しい表情で呟き、その2人の呟きを裏付ける様に新たな敵性部隊の分析を行っていたリリアーナの報告が始められた。

「……先程確認された敵性部隊の概略ですが魔曲騎士団を主力にラステンブルクの猟兵部隊、軽装歩兵、軽騎兵、弩砲兵等の混成集団で兵力は概算ですが5000強と推測されます」

「つまり、ラステンブルクの猟兵部隊を含めると約8000名の敵性部隊が活動している事になるわね」

リリアーナの報告を聞いていたアイリスは不敵な笑みと共に呟き、その後に出席者達を見渡しながら言葉を続けた。

「……以上が現在判明している敵性部隊の概要よ、対策に関する各勢力の意見を聞かせて貰えるかしら?」

アイリスの言葉を受けた出席者達は暫し思案にくれ、その後に決意の表情で口を開いた。

「ヴァイスブルク伯国亡命政権は今回の対策に関してアイリス様に一任致します。進むも退くも全てアイリス様の御心のままに御決め下さい」

「リステバルス皇国亡命政権も同意見でございますわ、進む、退く、アイリス様がどちらの策を御取りになりましてもわたくしどもはそれに従います。心置無く御決断下さいませ、アイリス様」

「我等女戦士傭兵隊はアイリス様にお仕えしております。アイリス様がどの様な策を選択されようとも我等はその意向に従います。存分に御決断下さいませ、アイリス様」

マリーカ、アイリーン、クーリアは迷い無い口調で宣言し、アイリスは不敵な笑みを浮かべて頷いた後に口を開いた。

「……それが貴女達の総意と言う訳ね、ならばあたしの方針を告げるわ、現在確認された敵性部隊に対する襲撃を実施するわ、優勢なる支隊をもってロジナの部隊に対する大規模な欺瞞攻撃を実施してその進攻を妨害し、その間に主力部隊をもってラステンブルク猟兵部隊を包囲殲滅するわ、作戦実施は本日深更日付を越えた刻限を目処に実施する事になるわ、夕刻にこのメンバーに対して作戦計画を発表するから各勢力はそれを念頭に置いて行動しなさい」

アイリスの決断の言葉を受けた出席者達は大きく頷く事でそれに応じ、それを確認したアイリスはミリアリアとリリアーナ以外の出席者達を退室させ、その後に2人を交互に見ながら口を開く。

「あたし達は襲撃計画の立案作業を実施しましょう」

「ああ、そうだな」

アイリスの言葉を受けたミリアリアは鋭い表情でそれに応じ、続いてリリアーナも頷いたがリリアーナはその後に微笑を浮かべながらアイリスとミリアリアに声をかけた。

「……でしたら暫く彼我の詳しい情報を精査致しますのでアイリス様とミリアリア様は一度湯浴みをなさっては如何でしょうか」

「……へ?」

リリアーナがサラッとした口調で告げたとんでもない内容の発言を受けたミリアリアは思わず間の抜けた声をあげてしまい、その反応を目にしたリリアーナはニッコリと微笑みながら更に言葉を続ける。

「作戦計画を立案するのでしたらアイリス様にはリラックスして頂く必要がありますのでミリアリア様と一緒に湯浴みして頂く事が必要だと思いますので、それに夜襲となりますと今の内に湯浴み等を済ましておいた方が宜しいのではないでしょうか?」

「それはいい意見ね……ミリアはどう思う?」

リリアーナの言葉を聞いていたアイリスは大きく頷きながら相槌を打った後に少し頬を赤らめさつつミリアリアに問いかけ、ミリアリアは頬を鮮やかな朱に染めながら口を開いた。

「……た、確かに夜襲をするならば今の内にゆ、ゆ、湯浴みをしておいた方が良いな、そ、それでアイリスがり、リラックス出来るならい、一石二鳥だしな」

ミリアリアが真っ赤な顔で言葉を返すとアイリスは嬉しそうにニコニコしながら頷いた後にミリアリアの傍らに歩み寄り、ミリアリアは笹穂耳まで真っ赤にさせながら頷いた後にアイリスの身体を抱え上げた。

ミリアリアに抱え上げられたアイリスは頬を更に赤くさせながらも甘える様にミリアリアの胸元にもたれかかり、ミリアリアは茹でた蛸や甲殻類の様に真っ赤になりながらアイリスをマスタールーム内の浴室へと運び始めた。

「……ごゆっくり御寛ぎ下さいませアイリス様、ミリアリア様」

リリアーナは穏やかな表情で一礼しながら浴室に向かうアイリスとミリアリアに声をかけ、2人が浴室に入室したのを確認した後に表情を鋭く引き締めながら彼我の情報の集積と分析を開始した。



ロジナ候国が画策した損害補填の一環であるラステンブルク伯国軍猟兵部隊の援軍、不用意にヴァイスブルクの森を進んだ彼等の動きはアイリスが張り巡らしていた警戒網によって察知される。

アイリスは発見したラステンブルク伯国軍猟兵部隊に対する攻撃を決意し、ロジナ候国側の動向を睨みつつ襲撃に向けた準備を開始した……


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