幼竜と
「お前は何ができるんだ?」
森の中を歩きながら、肩に乗る幼竜に尋ねた。
この先何が起こるかわからない。
少しでも手札を良くしておきたいのだ。
「そんなにすごいことはできないよ」
こいつはオレの肩を降り、正面に回り込んだ。
「僕にあるのは本体さんの知識の一部、さっき君に伝えたメッセージとか、いまの状況とかだね」
オレの周りをフワフワと回りながら答える。
「あとは君の知識、主に言語だね、それ以上は読み取れなかったし」
自分の頭の中をのぞかれたのは、気分が悪かったが、たいしたことでないみたいなので、スルーしてもいいだろう。
「本体さんの力の一部を使えるよ。えっと、それだったらいけるかな」
こいつは周囲を見回して、オレの足元の石を指さした。
「その石を拾って」
その石は直径五センチほどの小石と呼べるものだった。
オレは小石を拾い上げ、渡した。
幼竜は小石を両手でつかみ目を瞑った。
どうやら集中しているようだ。
「それじゃあ、行くよ」
黒い光が小石を包み込む。
数瞬後、小石は粉々に砕けた。
「すごいな」
素直に称賛する。
その言葉に、幼竜は目線をを逸らす。
首根っこをつかみ、目線を無理やり合わした。
「なんで、目を逸らした」
「気のせい、気のせい」
「そうか、なら言いたくなるようにしてやろう」
先ほどやったみたいに思いっきりシェイクしてやろう。
「ちょっ、やめっ!言うから、やめて!」
すると、十秒ほどでギブアップした、相当苦しいのだろう。
「もう、乱暴だな」
軽い抗議を入れてくるが、スルーだ。
「実は、僕の力じゃあの石を壊すのが限界なんだ」
「それに、一日に五回ぐらいしか使えないし」
………………
沈黙が走る。
「つかえねぇー……」
それなら、ハンマーで砕くほうが使える気がする。
「しょうがないでしょ、僕は生まれてきたばかりなんだから」
幼竜は再び、オレの肩に乗ってくる。
「いずれもっと強くなるから、将来に期待してよ」
もういいだろう。よく考えれば、オレの方が無力だしな。
「で、これってどこに向かっているの?」
「とりあえず、川を探してるんだ。水場の近くには人がいる可能性があるからな」
世界史で、文明は川の近くに発祥していることが多かった。
異世界でも、変わらないと思う。
水が必要な生物がいると仮定した場合だが。
「だったら、右の方に行ったほうがいいよ。かすかだけど、水の音がするよ」
耳を澄ますが、オレにはまったく聞こえない。
だが、当てがないので、右に行くことにした。
今の状況はたまらなく不安だった。
だが、肩に感じる体温が不安を和らげてくれている気がした。




