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HOPE  作者: 滝 陽水
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第十八章 真実

第十八章 真実


その日の深夜。

既に輝は自宅に帰り、愛は深い眠りにつき、営業終了のバーでマスターはグラスを傾けていた。

しばらくすると、バーの扉が静かに開いて一人の女性が姿を現した。そして黙ってカウンターに座る。

「待ってたよ。そろそろ来るんじゃないかと思ってた」

マスターは指定席に座った薫に話しかけながら、いつものウィスキーを注いだ。

「でしょうね。ちょっと耳に入れておきたいことがあったの」

「…聡とメルダのことかな?」

薫は少し同様するが、表情は変えない。マスターは続けて、

「あの時、ずっと見てただろ。気が付いてないとでも思ってたのか?俺たちを甘く見すぎだぜ?」

「…そう。じゃ、話は早いわ。何かヒントでも貰えるかと思ってね、最後まで録画しておいたわ。でも結局何もなかった。処分しようかと思っていたんだけどあなたたちに見せたほうがいいかと思ってね」

「そりゃありがたいけど…いいのか?そんなことして」

すると薫は伸びをしながら、

「そうね…上にバレたら、懲戒じゃ済まないかも」

そう言いながら薫はカウンターの上にメモリーカードを置いた。マスターはそれを受け取りながら、

「分かった。これは俺が個人的にみんなに見せた後、処分しておくよ」

薫はウィスキーを一気に飲み干すと、

「頼むわ…ねぇマスター」

「…なんだ?」

薫は立ち上がって、

「また…飲みに来てもいい?」

マスターはグラスを片づけながら、

「ここはバーだぜ?来る客を拒みはしないさ」

「…ありがと」

薫はそのまま夜の闇に溶けて行った。



次の日曜日。

輝の号令で四人が〝クレスト〟に集まった。

「で、マスター。何?見せたいものって」

翔がマスターに問いかけると、

「ああ、これだ。DVDにしておいた」

TVの中にはあの日の研究所内の様子が映されており、画面内にはメルダに制止される新田、大男に抱えられた輝、翔と明日香に抱えられるマスターそして綾乃と愛が映っていて脱出しているところだった。



全員を見送ったあと新田は大きな声で、

「おーい!そこの君も早く逃げた方がいい」

そう言うと自らの上着を脱ぎ捨てた。その上半身には大きめの爆弾が怪しく光を放っていた。

声をかけた方からゆっくりと薫が姿を現した。

「よく気が付いたわね。褒めてあげる」

「何を今更…君たちに褒められても嬉しくないんだが」

新田とメルダは共に並ぶと、

「もうこの研究は終わりだ。すまないな、期待に添えなくて」

新田は晴れやかな笑顔で薫に語りかける。薫も何故かホッとしたように、

「そうね。もうここに居ても収穫はなさそうね。残念だわ」

するとメルダが、

「…薫さん。ごめんなさい」

「…なんでメルダが謝るのよ。私のことは気にしないで、在りのままを上に報告するだけよ」

新田は薫の様子を見て、

「そうか。やはり君も望んでのことではないんだな」

「…ええ。でも、任務に私情は禁物だから。じゃ、そろそろ行くわ」

そう言って振り返る薫に新田は、

「まあ待ちたまえ。これを持って行くといい」

そう言ってフラッシュメモリを投げた。

「これは?」

「何もなしって言うんじゃキミも立場が悪いだろう。折角出資してくれたんだ、ヒントくらいは渡しておこうと思ってね」

「…いいの?」

「大丈夫さ。それがあってもいまのような軍事用のRBSはできない。肝心の部分は変更してあるからね。安心して渡してやれ」

薫は少し笑うと、

「…ありがと。またどっかで会ったら一杯やりましょ」

そう言うとその場から消えるように去って行った。

部屋に残された新田とメルダは向かい合うと、

「全く、舞は強引だな」

「なによ、全部想定内のクセに」

お互いに微笑むと、

「いや、全部って訳じゃないよ。輝くんたちの働きは大きかった。感謝している」

「でも、薫さんには悪い事したかも。わざわざ進捗調査にまで派遣されて…」

「確かに。でもHFPなんて僕たちの研究の目指すものじゃない。あんなのを実現させるくらいなら」

「え?じゃあ、実験リストに愛の名前があったのは?」

「あれはダミーだよ。実行する気なんてなかった。資金確保のためには見世物が必要だったからね」

「そう…。あなたらしくないとは思ってたけど。じゃ、何でゲームに偽装してまで運用テストしたのよ?」

「RBSは元々災害救助用に亮が開発していたものだ。しかし、これに某国が目を付けて資金提供をする代わりに軍事転用を強要していたのさ。そして最後のテストって時に亮が事故死した。僕は亮の本心を知っていたからね、研究を受け継いだとき、何としても軍事転用だけは避けさせようと一芝居打つことにしたんだ。そして、輝くんたちの集めた実戦データを元に、逆に軍事転用できないようにすることにしたんだ」

「そうだったの…そういえば、マスターの怪我、大丈夫かな?あそこまでする必要あった?」

「あいつはあのくらいじゃ死なないよ。救急車も手配しておいたし、すべて急所は外してある。それに相手はお国だよ?だから僕がここまですれば…アイツに疑いが向くことはない」

「もう…聡らしいね。でも…本当にこれでよかったの?」

「何が?」

「もうすぐ私たち死んじゃうんだよ?聡だけでも生きれたのに…」

すると新田は舞の肩を掴むと、

「いいかい、舞。僕にとっては君より大事なものはない。僕は答えが聞ければ満足なんだ」

すると舞は恥ずかしそうに俯いて、

「こ、答えって…?」

「決まってるだろ?プロポーズの答え。もうあと数秒だけど、僕と結婚してくれるかい?」

そう言って指輪を取り出す新田。舞はそんな新田を見上げると、

「…もちろん!お願いします!」

そう言って左手を差し出す。そして新田は舞の手に指輪をはめた。

「ありがとう…もう思い残すことはない。後は愛ちゃんが継いでくれるだろう…僕と亮の意思を」

すると舞は新田を抱きしめながら、

「何言ってるの。これからあの世で幸せになるんでしょ!…二人で」

そう言うとゆっくりと唇を重ねた。


その直後、二人を大きな閃光が包んだ。



                                                      《了》


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