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HOPE  作者: 滝 陽水
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第十四章 追跡

第十四章 追跡



翌朝。

輝はソファで眠っていたのだが、何やら柔らかな感触で目が覚めた。

「…ん?」

ゆっくり目を開けると、愛の寝顔があった。

どうやら寝ている輝に愛が抱き枕の如く、抱きついたまま眠っていた。

「!!」

咄嗟に飛び退く輝。その勢いで愛もソファから落ちそうになる。

「あ、あぶない」

輝はギリギリで愛を受け止め、抱きかかえるような格好になってしまった。

「…みゅ?あ。輝さんおはようございます…って、なんで私だっこされてるんですか…?」

輝は下ろしながら説明すると愛は、

「おっかしいなー。私、ベッドで寝ていたはずなんですけどねー」

しきりに首を捻っている。

やれやれと輝は周囲を見回すと、いつもと違うことに気が付いた。

「…愛、マスターとメルダは?」

「あれ?いないんですか?」

輝と愛は手分けをして建物内を探した。しかし、二人の姿はどこにもなかった。

「とりあえず、ご飯にしましょう。ね、輝さん」

輝は何か違和感を感じながらも愛の言葉に従って朝食を取ることにした。


朝食を食べ終わるころ、翔、明日香そして綾乃が輝を迎えに来た。

「何ーマスター帰ってきたんだって?」

翔は挨拶もそこそこに輝に説明を求めた。

輝は昨日の出来事を話すと翔は、

「ふーん。で、肝心のマスターは?メルダもいないけど」

「それが起きたらいなくなってたんだ。まだ聞きたいことが聞けてないのに」

悔しそうに唇を噛む輝。ふと綾乃を見ると、しきりに首を傾げていた。

「綾乃、どうかしたのか?」

「あ、うん。大したことじゃないんだけど…あそこの花瓶、いつもメルダが生けてたんだけど、何で今日はないんだろうって」

綾乃の指さす方向を全員が注目すると、確かに何も入っていない花瓶が一本寂しく置かれていた。明日香は花瓶を手に取ると、

「忙しくてそんなヒマなかったんじゃない?この時間にもう出かけてるんだから」

と、花瓶を振ると中から何か飛び出してきた。

「ん?何これ?」

明日香が拾い上げたのはUSBメモリーだった。


一同は輝が使っているパソコンの前でモニターを覗きこんだ。

パソコンを起動するとデスクトップに見慣れないテキストファイルがあったので、輝は不審に思い開いてみる。


 輝へ

 マスターだ。このファイルを確認したら、〝クレスト〟を出ろ。そしてしばらくは近づくんじゃない。

 納得できないかもしれないが、今は従って欲しい。他のみんなにも同様に伝えてくれ。


「なんだよこれ…」

思わず輝は呟いた。納得などできるはずもなかった。

「確かに。しかも、手を引けってことだよね、これ」

翔も悔しそうに輝を見る。明日香は内心ホッとしながらも、

「でも、マスターは私たちの身を案じてくれたんだよ。本当に危険なんだ…ってことじゃない」

これに追い打ちをかけるように綾乃が、

「しかも、どこにいるか分からないんでしょ?もうお手上げかも…」

すると輝は立ち上がり、RBSコントローラへ飛び込んだ。しかしすぐに出てくると、

「だめだ…起動しない…」

「RBSはメルダを通して子機に接続します。メルダがここにいませんから…」

愛の解説でより増した絶望感が四人を襲う。綾乃の言うとおり、納得できるとかできないとかの前に、どこへ行ったのかさえ分からないのだ。

「くそっ!ここまできて何もできないなんて…」

思わず輝はコントローラを殴ってしまう。それを誰も止めることはできずに黙って見ていた。

「…それで、さっきのメモリーって何が入ってました?」

今の雰囲気から見ると、いい意味で空気を読まない愛の声に輝は、

「そうだった!もしかしたらこの中に何かヒントがあるかも!」

USBメモリーを差し込み、中身をモニターに表示してみた。

中にはいくつかのファイルがあった。輝たちには何がなんやら分からなかったが、

「…ちょっと貸してください」

いつになく真剣な愛の声に輝は素直に席を譲る。

すると愛はすごい勢いでキーボードを叩き始めた。画面が瞬く間に切り替わり、とても輝たちにはついていけない。そんな中明日香は、

(パソコンってマウス使わなくても操作できるんだ…)

と、変なところに関心していた。

そして、数分たつと愛の手が止まり、輝の方を振り向いた。

「輝さん。スマートフォン持ってましたよね?貸してください」

輝はスマートフォンを差し出すと、愛はパソコンに接続してから更にキーボードを叩く。

「よし!これでいけるはず!」

愛は輝のスマートフォンを取り外すと輝に返した。

「何がいけるんだ?っていうか、何が入ってたんだ?」

輝の問いかけに愛は『フフン』と鼻を鳴らすと、

「いいですか、これはお姉ちゃんが残してくれた最後の希望です。今私が加工して輝さんのスマートフォンにそのプログラムをインストールしておきました」

輝がスマートフォンの画面をみると、見慣れないアイコンが生成されていた。

「これは、お姉ちゃん…つまりメルダの位置をGPSで捕捉するプログラムです!」

一同は思わず息を飲んだ。と、いうことは…

「これでメルダを追えば、マスターの居場所に辿り着くってことか!」

輝と翔はほぼ同時に声を上げた。そして向かい合ってハイタッチする。

「あ、でも、行くのはもちょっと待ってくださいね。準備してからにしましょ」

愛ののんびりした口調に輝は、

「いや、さっさと行って連れ戻してくる」

それを見た愛はいつになく真剣な表情を作ると、

「輝さん。今のあなたはRBSではないんです。しかも行先はおそらく研究所ですよ?何の準備もなく行っても怪我するだけです」

翔もこれには同意して、

「そうだよ輝。愛ちゃんの言うとおりだ。急がば回れって言うだろ?」

輝は納得いかない様子で、

「…分かったよ。でもどうするんだ?」

すると愛はいつものスマイルで、

「じゃ、ちょっと今から武器作っちゃいます!よーし腕がなるぞー」

しばらく見ていた綾乃と明日香は、

「じゃ、私たちは一度家に帰って準備してくるね」

と言い残して部屋を出て行った。



数時間後、再び〝クレスト〟に集合した五人。

綾乃と明日香は普段着に着替え、明日香は木刀やら警棒など数本、綾乃はライフルを持っていた。

驚く輝たちに綾乃は、

「あ、私、趣味でクレー射撃するから…」

と説明した。明日香は…聞くまでもないようで、誰も突っ込まなかった。

「愛ちゃんは?」

綾乃が話題を変えようと問いかけたと同時に愛が部屋の駆け込んできた。

「おまたせー!なんとか二つだけ作れた!」

愛がテーブルにおもちゃの銃のようなもの二つと警棒のようなものを転がした。

輝は銃を手に取ると、

「…なんだこれ?」

すると愛は鼻を鳴らすと、

「愛ちゃん特製のワイヤードショックガンです!」

「…なにそれ?」

「えーっとですね。敵は基本部分は電子部品でできていますので、電気ショックが有効なわけです。この銃の引き金を引くと、ワイヤーが付いたアンカーが射出されて目標に刺さります。んで、この赤いボタンを押すと電気が流れるのです!あと、この青いボタンを押せばアンカーが外れてワイヤーを巻き取って再使用できます!」

「その電気ショックで倒せるのか?」

「倒せることもあるけど完全ではないので、できればショックで停止している間に物理的にトドメを差すのが有効ですね!」

「ってか、愛、よくそんなこと知ってるな」

「ラボにいたときによく設計書をコソーっと見てたんで…」

納得しながら翔は銃を手に取ると、壁に向けて引き金を引いてみた。

『シュ』っという音と同時に壁と銃がワイヤーで固定される。そして赤いボタンを押してみると、

「バリバリ! ボン!」

壁に刺さった部分が激しい音と煙が上がった。どうやら本当に愛の説明する機能があるらしい。

「すっげー…」

翔は戻ってきたワイヤーが収納されるのを確認すると、ゆっくり銃を置いた。

「それじゃ、そろそろ乗り込むか!」

輝の言葉で全員立ち上がる。愛は銃と棒を輝と翔に渡しながら、

「止めるつもりはありませんが…ここからはRBSのように便利なアイテムはありません。もし無理だと思ったら、すぐに引き返してください」

「ああ、分かってる。愛はどうするんだ?」

「あ、私も行きますよ!みなさんばかりに頼りっぱなしって訳にも行きませんから!」

そういうとどこからか大きめのマシンガンのようなものを取り出した。これも愛特製らしい。

そして五人は昼下がりの住宅街を駆け抜けて行った。



しかし意外なほどゲートまでは近かった。

走り出してものの数分で山の中に入り、更に数分で最先端技術研究所というゲートの前に着いてしまった。

「…すっごい近かったんだね」

明日香が呆れたように呟く。愛が何やらゲート横の機械をゴソゴソといじると、音もなくゲートが開いた。

「ここからは何が来るか分かりません。皆さん注意してください!」

愛の言葉で一気に緊張が高まる。

「よし、行こう!」

輝の言葉で全員ゲートの中へ走り出した。メルダの発信地点に向けて。


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