転移
やれやれと頭を振っていた黒い人物が、飽きたように呟く。
「うるさいよ、君達」
変化は急激だった。
僕らを包囲するように囲む、男達が動く。
洗練された滑らかな動作で、次々と僕らは無力化される。
もとより攻撃力は皆無なんだけどな。
僕も、数秒で猿轡を噛まされ、腕を縛られ、転がされる。
...プロだ。
抵抗らしい抵抗も出来なかった。
ちょっとかっこいいー。やっぱり憧れるよな、武術とか。
なんで数秒で猿轡を噛ませられるんだろう。
ひんやりして気持ちいい体育館の床を堪能してたところ、黒い人物が喋りだした。
周りも、合唱をしだしている。
『**~∴~/--∴*』
何を言っているのか全くわからない。
何語だろう?
唄みたいだけど。
すると、ルービックキューブがペカーと光る。
安っぽい光。
蛍光灯に良く似た、白い光。
放出された光は、空中で円を描き、次第に複雑な模様を形成する。
普通なら、神秘的、幻想的といった感想を抱くのだろう。
しかし高貴さは微塵も感じさせない。
チープな感じの光で、台無しだ。
どんどん光の円は巨大になっていき、もうすでに目が開けられないほどになっている。
『∴**~/・・・∴~***!』
唄が最高潮に盛り上がったとき、一際強く、光の円は輝いた。
思わず、ぎゅっと目を閉じる。
そして、再び目を開けたとき、森が広がっていた。
熱帯雨林のように、蒸し暑い。
小鳥の鳴き声よりも、猿の鳴き声が聞こえてきそうな森だ。
ここどこ?
南アメリカ?
いや、でも一瞬の移動はないだろ...
周りもウーウー呻いているし、説明してほしい。
「ようこそ、異世界へ。生徒諸君?」
ああ、テンプレートですか。
そうですか。




