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私と未来の幼馴染み

私と未来の幼馴染み

作者: 夜駒 柊

 私、御法(みのり)穂香(ほのか)には幼馴染みがいる。


 幼馴染みの名前は高戸(たかと)(しょう)

 同じ高校に通う男子(1年)でバスケ部所属、2歳年上の美人な彼女(3年)がいる。

 爆発しろと言わんばかりのリア充っぷりを発揮している彼だが、私とは幼馴染みの同級生というだけで何の関係もない。


 ――さて、何故私がいきなり幼馴染みのことを思い出したのかというと。


 その幼馴染み君の彼女にはストーカーがいて。そのストーカーが、好きな人(美人先輩)の彼氏(高戸匠)の幼馴染みだというだけの理由で私を拉致したからである。

 つまり今私はとばっちりを受けている最中なのです。


 ……ああもう最悪。


 放課後、高校から帰宅する途中で背後から襲われ、気が付けば何処かのビルの駐車場らしき場所で、私は所々草が生えたコンクリートの床の上に転がされていた。

 悪態を吐こうにも口は布で塞がれている。いわゆる猿ぐつわだ。

 手首足首は縄で縛られていて身動きが取れない。

 そしてこれが一番の問題、目の前でナイフを手にしたストーカー様が仁王立ちでこちらを向いておられます。

 暗がりでよく見えないが、確実に何かのネジが飛んでいる。

 これは危害を加えられる予感。


 おかしいな私自身にこんな変態に殺される謂れはないはずいやそもそもこのストーカーは美人先輩のストーカーであり恨まれるべきはその彼氏である幼馴染みだろうってその幼馴染みな彼氏の幼馴染みだから私が今とばっちりを食らってるんじゃないですかやだーっ!!


 色々とループしかけた脳内突っ込みを、1歩踏み出したストーカーの靴音で止められた。

 ざり、と砂利が擦れる音で我に返る。

「恨むなら、あの二人を恨むんだね」

 とよくドラマで犯人が口にするような台詞をストーカーが言う。

 殺されるのだろうか、それとも死んだ方がマシだと思うような目に合わされるのだろうか。

 せめて二目と見られないような姿にはされたくない。殺すなら一思いに、苦痛を少しでも感じない勢いでお願いします!!

 既に五体満足無事に生きて帰れるとは思えなかったので、私は諦めて強く目を瞑った。

 やがて来るであろう衝撃に備え身を固くしていると、


「――間に合った!!」


 と男性の声が聞こえた。


 聞き覚えのあるようなないような、自分でもよく分からないその声音に、恐る恐る目を開く。

 青いシャツに黒いジャケット、下はジーパン。

 長めの茶髪の下にある顔は、見たことがあるようなないような……。

「女子高生が怪しげな男性に連れ去られるのを目撃したと通報した。捕まる前に逃げた方がいいんじゃないか?」

 その男性はそうストーカーに告げた。

「――っ」

 男性の言葉にストーカーは身の回りを確認したかと思うと、私を置いて慌てて去っていった。

 縛られたまま放置された私に、男性は近付いてきた。

 が、あと一歩の所で足を止めた。

 何事かと顔を上げると、泣きそうな笑いそうな、微妙な表情で男性は私を見下ろしていた。

「穂香」

 男性が私の名前を呼んだ。

 やはり、彼は私の知り合いなのだろうか。

「助けられて良かった。もうすぐ警察が来るから、それまでもう少し我慢して」

 その台詞に、違和感を覚える。

 縛めを解いてはくれないのだろうか。

 まさかの放置プレイ?

「……俺はこの時間の人間じゃないから。これ以上関わったら穂香の方にも影響が出るかもしれない」

 …………。

 何だって?

「本当なら、お前はあのストーカーに殺されているはずだった。それが俺の介入で運命が変わった。……俺のこと、頭がおかしい奴だって思ってる?」

 歪んだ笑みを浮かべて男性が言う。

「お前が殺されて、俺は先輩と別れることになった。別にお前のせいじゃない。ただ、俺が馬鹿だっただけだ」

 一体彼は何を言っている?

「十年間、ずっと後悔して。気が付いたら過去にいた」

 まるで彼は――。

「俺は、十年後の未来から来たお前の幼馴染み――高戸匠だ」

 まるで、ではなく本当に私の幼馴染みなのだと、目の前の彼は告げた。

「本人だって証明できる物は今持ってないけど……ああ、悪い。時間切れだ」

 す、と上げた彼の手は、透けて向こう側が見えていた。気付くと彼の全身が消えかけている。

「未来が変わったから、お前の生きている時間に俺はいられない。……でも構わないさ、お前が生きていてくれるなら」

 微笑んで、彼は言う。

「穂香、俺の大事な――」

 だが、最後まで言い終わることなく、彼の姿は私の目の前のから消えてしまった。……初めから、存在していなかったかのように。


 ――警察により私の拘束が解かれたのは、暫くしてからだった。

 匿名の通報があったとのことだったが、その通報者が『彼』なのかは分からない。

 今生きている彼、高戸匠は相も変わらず先輩とリア充っぷりを見せつけている。

「……大事な、何だって?」

 まあ、『大事な幼馴染み』というオチなのだろうな、と納得させて。


 私は『彼』に助けられた未来を生きている。

本当は連載形式にしようかと思いましたが、一部バッドな結末になりそうだったので切りの良い所で強制終了しました。


短編なのに名前があるのは長編仕様の名残です。

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