再開は嬉しい
あの人がこの陰陽師編でだけですが、最登場です
輝夜が翁さんの家をえーりんと共に出て行ってから数日が経った
不老不死の薬……蓬莱の薬は帝が一番高い山で燃やしたらしい
なんか引っかかることがあるんだが……気のせいだろう
そして、俺はそれなりに有名になった
格安で依頼を引き受ける陰陽師だと、それなりに広まってるらしい
そんな俺には、子供や貧乏な人がよく依頼に来る
そして、今日も依頼が来た
今日の依頼人は、一組の夫婦だった
「で、依頼は?」
「娘を助けて欲しいんです!」
「たった一人の娘なんです!」
またこんな依頼か
最近は妖怪の子供の拉致問題がかなり多い
「報酬は?」
「これだけしか……」
と、少量のお金を差し出してくる
「これからの事を考えるとこれが限界で……」
「で、ですが、有り金全部だって差し上げます!なので、お願いします!!」
と、二人とも頭を下げて頼み込んでくる
まぁ、ここまで言われちゃあなぁ
「分かりました。引き受けましょう」
「あ、ありがとうございます!!」
「ですけど、一つ条件があります」
「な、何でしょうか……」
何かとんでもない事を要求されるんじゃ、という顔をしている
まぁ、安い反面、しっぺ返しが来ると踏んでるんだろう
「娘さんと、幸せに暮らしてください。それだけです」
『は、はい!!』
机に置かれた金を半分だけ貰って、その場で立つ
「あ、あの、残りのお金は……」
「娘さんに使ってあげてください。俺はこれだけで十分なんで」
『あ、ありがとうございます!!』
そんなお礼言われるような事かね
さて、行くか
「ルーミア!こいし!」
「準備は出来てるわ」
「だいじょぶだよ~」
式である二人を読んで、家を出る
「何で子供が拐われるんだ?」
「美味しいからよ。赤子や子供は特にね」
成るほど。人食い妖怪の言葉なら信用できるな
熊みたいなものか。美味しいものを食べてしまったからそれしか狙わない……って感じの
「でも、子供をその場で食べないって事はそれなりに余裕があるからよ。暫くは安全よ」
「分かった。それに、位置は把握した」
少し京の外れの場所に妖力と小さな霊力を発見した
……ん?大きな霊力が一つ近づいている?陰陽師か?
まぁ、俺達の方が距離的には短い。すぐに着く
~青年等移動中~
ここの洞窟か。中々に不気味だな
まぁ、俺はちっとも怖くないが
「さて、行くか」
「とっとと取り返して帰りましょ。こんなの暇つぶしにもならないわ」
ルーミアに急かされて俺を先頭に、こいし、ルーミアの順番で入る
足音が洞窟の中に響く
「避暑にはもってこいな場所だね~」
「そうだな。ここ、乗っ取るか?」
「さり気なく恐ろしいこと言わないでくれるかしら?」
まぁ、冗談さ。だけど、お話(物理)をして夏の間は使わせてもらうかもな
さて、そろそろ最深部か?
「……何か変じゃない?」
「あぁ。女の子が寝てるなら分かるが、普通は誰かきたら声を上げるか物音をたてるはずだ……だが、行かなきゃな」
そして、最深部に着いた
最深部は空洞のようになっていて、小さな火が焚かれていて、それが唯一の光源になっている
「いざとなったら私に任せて。暗闇は私の場所よ」
「分かった」
そして、壁に寄りかかって寝ている女の子を発見して近寄る
寝息を立てて普通に寝ていた
さて、とっととこの子を親の元に返してやるか
……ハッ!?
「そこっ!!」
女の子を抱き上げようとした時、壁に気配を感じた
弾幕を放つものの、手応えはなし。外したか
周りをサーチする……壁の中妖力の固まりが走っている?
それが女の子の後ろの壁で止まり、女の子の中に入った
……憑依か!?
「チッ、感のいい陰陽師だな」
「……面倒な事を」
「テメェはここで俺に食われるんだよ!そこの妖怪共はぶっ殺してやる!!」
女の子の口から、暴言がはかれる
あ~……やべぇ、本体を滅茶苦茶ボコボコにしてやりてぇ
女の子の口からこんな事を言う馬鹿野郎を殴り飛ばしたい
「まずは明かりを消してやる!」
女の子の手から妖力弾が発射され、明かりが消され、一面が真っ暗になる
「ルーミア!」
「見えてるわ!すぐに倒して……」
「女の子の体は傷付けるな!」
「ハァ!?無理に決まってるじゃない!」
「傷付けたら依頼人が悲しむ!」
「……分かったわよ!」
ルーミアが交戦してるのか、パシッパシッと拳を弾くような音が聞こえる
俺も気配と妖力で分かるが、ルーミア程は動けないだろう
こいしの元に行き、ルーミアの戦いを聞く
「その剣を抜かねぇのか!?」
「分かっててやってるくせに……ッ!」
傷つけないようにとなると、大妖怪とはいえ、やはり苦戦しているらしい
こうなったら俺が本体を……
……ん?誰かが高速でこっちに来ている?
「お兄ちゃん、誰か来てる」
「分かってる……が、人間だ。心配ない」
霊力がある……だが、この霊力……昔、よく感じてたような……
「くっ!」
「ルーミア!」
「このっ!噛み付かないでよ!離しなさい!!」
くそっ、こうなった、俺が霊力を流し込んで無理矢理でも分離させて……
「それには及びませんよ。暮羽様」
……は?
いきなり様付けで呼ばれたことに驚いてる間に、その人は高速でルーミアと女の子にに近づいた
「誰よ!」
「そこで動きを止めてください!」
「何だか分からないけど……!!」
「ハァッ!!」
高速で近づいた人物は女の子に触れたのだろう。トンっと音を立てた
「封印ッ!!」
その瞬間、妖力が何かに吸われていった
ドサッと音がした。女の子が倒れたのだろう
「妖力だけを直接封印しました。本体も封印してる限りは動くことはないでしょう」
「あ、あぁ」
早く外に出ましょうと言われ、女の子を抱き上げてその人と共に洞窟の外に出る
その人は声からわかってたが、女性で、まだ十代前半位の歳に見えた
「私は霊花と言います」
「霊花か。俺は桜庭暮羽。しがない陰陽師だ」
「ルーミア。こいつの式よ」
「古明地こいし。お兄ちゃんの式だよ」
「はい、知ってますよ」
……なんだ?そんな俺達って有名なのか?
「いえ、上から見てましたから」
……上?
空から偵察してたのか?
「ソルさん達は置いてきてもよかったんですか?」
「ッ!!?」
な、何でそれを……
「霊花……お前、何者だ」
拳を握り、イザとなった時のために備える
女の人は殴りたくはないが……
「二代目、百励の巫女……と言えば、分かりますか?」
二代目百励の巫女……まさか!
「霊陽さん……なのか?」
戸惑いながらも、霊花に尋ねる
二代目の巫女さんは霊陽さんの筈だ……
「はい、私の前世は貴方の巫女、百励霊陽です。今は霊花と名乗ってます」
……マジかよ……
「お久しぶりです。暮羽様。数千年……いえ、数万年振りですね」
「あぁ……久しぶりだな……霊陽さん……」
「……転生したって訳ね」
「はい。今回でようやく会えました」
……うん?今回で?
「私、既に十回ほど転生してるんですよ。その度に、海の向こうの国だったり、都だったりに転生させられて、会えなかったんです」
そ、そうだったのか……
しかも、海外に転生って……って事は外国の言葉を話せるのか
「今回は運良く能力も手に入ったので、ここに寄った後で神社に行こうと思ったんですよ」
「能力?」
「はい。封印する程度の能力と空を操る程度の能力の二つです。封印する程度の能力は五度目の転生辺りで手に入れたんです」
なんだか、霊陽さん、滅茶苦茶強くなってね?
前は特に能力は無かった気がするんだが……
「それで、その子はどうするんですか?」
「あ、そうだった。ちゃんと送り届けないとな」
霊陽さんと話すのはそれからだ
ようやく暮羽様と会えました
諦めずに転生しまくった甲斐がありました。海の向こうの国の言語も覚えれましたし
「あんた……ほんとに二代目の巫女なの?」
「そうですよ?」
「……暮羽って昔からあんなの?」
「昔はもっとお調子者って感じでしたね」
「あんな風になったのは最近って訳ね」
「そんな感じですね」
映姫さんの所で働きながら暮羽様を見てると、段々と大人しくなっていったって感じでしょうか……
油虫が苦手なのは変わりませんが
「何か、やましい事とかしてないわよね?」
「……ふふ、どうでしょうね?」
「何かありそうね」
「実は夜這いして子供作って……」
「んなっ!!?」
「出産はこっそりと……」
これは暮羽様に内緒ですけどね
それにしても、ルーミアさん、顔真っ赤です
「よよよよよ夜這いって、あああ、あんた!」
「今回も夜這いして……」
「やらせるわけ無いでしょうが!!」
なんか、後ろがうるさい
まぁ、これからはまた、楽しくなりそうだな
さて、この女の子を早く送り届けないとな
陰陽師も大変だな
霊陽さんの登場でした
暮羽視点では霊陽、他のキャラの視点からは霊花と書きます
ちなみに、霊陽さんは香李とあの世で知り合ってます
何万年振りの再開ですが、それはまた別れがあるということで……
あと十話以内に陰陽師編は終わりです