銅線状の触角を自慢気に生やしてカサカサいう虫を素手で捕まえれる人は尊敬する
更新です
古明地姉妹が神社で暫く居候することになった数日後
神社内でゴロゴロしてたテンを引っ捕らえてさとりとお茶を飲んでいた
「へぇ……そんな昔からここに……」
「ここ、元戦場だぜ?」
「考えられないわね……」
「まぁ、俺達が地上で一番古い生物じゃないか?まぁ、俺よりこいつらの方が歳上だが」
「そういえば、そうだったわね。すっかり忘れてたけど」
「それなら妖精では考えられない妖力を持ってても可笑しくは無いわね」
ちなみに、こいしは子供達の「こいしちゃん遊ぼ~!!」で無理矢理連れていかれました
なんか、里全体を使って鬼ごっこらしい
大人も数人混ざっていた
いい年してそれはどうかと思ったが、楽しいならいいさ
幸せが一番。これに尽きる
「その意見には同類ね」
「だろ?」
「それにしても、ほんといい雰囲気が漂ってる里よね。他の里は私達が行ったら石を投げ付けられたり……」
「何故こんな美人に石を投げるか」
「もう心の奥底の言葉を隠す気は微塵もないのね」
「隠しきれないし」
もう心の奥底をさらけ出してもいいかなって思っている
「お姉ちゃん!」
と、こいしが乱入
「どうしたの?」
「か、匿っ……」
「待て~!!」
「はやっ!!!」
と、こいしがすぐに縁側から去っていき、それを子供が追っていく
家の里の子供達を舐めたらいけないな。そんじょそこらの大人よりも体力があるからな
遊びながら体力を付けていく。楽しみながら体力を付けていく。これが一番だ
「それにも同感ね」
「おぉ、気が合うな」
「もう心を読まれたことに対して反応すら無くなった暮羽である」
反応するだけ無駄だろうに
「まぁ、他の里を行ったり来たりする内に、こいしのサードアイが段々と……ね?」
「閉じかけてるな。かろうじて開いてるが」
「ここは最後の賭けだったのよ。ここも駄目だったらこいしは……」
「そんな最悪な未来は考えるな。明るい未来を考えないと、物事は悪い方へとずるずると進んでいくぞ」
「そうよね……ありがとう」
まぁ、とことん運が悪い人は急に明るい未来から落ちる時もあるけど
そんな奴は大抵悪いことを繰り返してきた奴だ
良いことをしてきた奴は例えドン底の人生からでも、救いの手が降りてくる
この世はそうやって出来ているんだ
頑張った奴が報われなければ可笑しいからな
「そういえば、貴方の嫌いな物ってなに?」
嫌いな物か……
強いていうならば
「銅線状の触角を自慢気に生やしてカサカサ音を立てて壁やら天井やらに張り付いて人間目掛けて突っ込んでくるあの黒い昆虫だな」
「それ、油虫よね?」
「止めろ!!名前を出すんじゃない!!悪寒が走る!!!」
あれの名前を聞いたら背中がゾクッとするんだよ!!!
「油虫なら……」
と、さとりが自身の後ろを指差す
ま、まさか……
「さっきからそこに……」
「☆○×□?!Ωωδγ×□!@Σ!!!」
「ひゃいっ!!?」
口から何語か分からない奇声を発しながら思わずテンの後ろに回り込み、そのまま後ろから抱き締める
この間、コンマ一秒
「無駄に速いわね」
「なななななな何を!!!?」
「さ、さとり!!それ何処かに投げ棄ててくれ!!頼むから!!!マジで!!!」
「……分かったわ…………はい」
「こっちに持ってくるなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「少しは落ち着きなさいって……ポイっと」
な、投げた!!?投げたよな!!?
……うん、視角には居ないな……
あのGは居ないな
ゴキブリは居ないな……
「……手を洗ってくるわ」
と、退出するさとり
た、助かった……
あ
「悪い、テン」
「あ……別にもうちょっと……」
まさかあの野郎が入ってくるとは……
毒団子でも仕掛けておくか……
「全く、男ならあんな虫くらいどうにかしなさいよ」
「油虫だけは……油虫だけは無理なんだ……」
「……意気地無し」
「うるせぇ!!!あれが口の中に入ったときなんて考えてられるか!!!」
「そんなの、私だって嫌よ!!!それに、さっき明るい未来を考えろとかどうとか言ってたのは何処のどいつかしら!!?」
「すいませんでした」
「よろしい」
だけど、あれだけは……あれだけはほんと勘弁してほしい
「お姉ちゃ~ん……」
またこいしが涙目で入ってくる
「どうしたの?こいし。怪我でもしたの?」
「さっき、空から油虫が飛んできて襟から服の中に入って今も……」
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
「黙りなさい!!!!」
「ひでぶっ!!」
その油虫、完全に私が投げた油虫よね……
って、暮羽を思わず気絶させたけど大丈夫かしら……
「お姉ちゃ~ん……」
「すぐ取ってあげるわね」
こいしの服を脱がして服の中から油虫を取り出して今度は思いっきり山の方へと投げる
まぁ、暮羽を追い出す必要が無かったからよしとしましょう
「……洗う?」
「うん……」
……こいしの服、どうしようかしら……
「う……ぁ……」
……はい?
ひ、酷い目にあっ……
「へ?」
「あ……」
「やっぱり……」
何故にこいしさんが服を脱いでるんですか…………
「え……ぁ……ぅ……」
……こいしの顔が段々と羞恥で赤く染まっていく
それと比例してさとりの拳が段々と強く握られていく
「……死になさい」
「ちょっ、りふじ……ごぶぁっ!!!!!」
ふ……不幸だ……
~少年気絶中~
約三十分後に目覚めました
こいしにはテンが香李のお古を着せたようだ
で、今は香李と縁側でお茶を飲んでいる
「まぁ、それはお父さんが悪いと思いますよ?」
「香李もかよ……」
「鍛え過ぎるのも考え物ですね」
いや、回復が速いのは神様スペックのお陰だよ
まぁ……あっちの世界でされた事によって気絶しにくくなったのは事実だが
あと、回復が速くなったのもそのせいだが
「だけど、香李ももう二十過ぎか……」
「そうですね……」
娘が出来てもう二十年も経ったのか……
あっという間だな
「そろそろ香李も旦那さんを見付けたらどうだ?」
「…………」
「どうした?」
「全く……鈍感ですね。本当に」
は?
「ソル達が行動しないからこの際言います。私は……お父さん、桜庭暮羽が好きです」
「そうか」
「親子としてではありません。異性としてです。恋愛対象としてです」
「はぁ!!?」
驚きの余りに香李を見ると、香李の顔は真っ赤になっている
……マジかよ
「お父さんは……どう思ってますか?」
「…………すまん」
「……やはりルーミアですか」
「……いや、俺はまだ恋愛対象としてあいつを見れて無い」
「はぁ……この女たらし」
「何だと!?」
「ほんとの事だよ。お父さん」
……娘に女たらしと言われるとは……
「別に答えは何時でも良いよ。私が死ぬまでに、答えを出して」
「……あぁ」
「ついでに、これも言っておくね」
「何だ?」
「私は、来世もお父さんの娘になる。何百年後でも、何千年後でも。絶対に」
「……どうしてこんな時に?」
「何でだろうね。病気にもなってないのに。死ぬ訳じゃ無いのにね。でも、閻魔様にどんな決断をされようと、私は絶対にお父さんの娘にまた生まれ変わるよ」
「…………」
「……じゃあ、私はご飯の用意をしてきますね」
…………はぁ……
女たらしか……
それに、娘に告白されるなんてな……
……でも、俺は香李とは付き合えない
好きでもないのに、付き合えない
気持ちが纏まってないのに、香李を妻として迎えるなんて出来ない
気付くのが遅すぎたんだ。知るのが遅すぎたんだ
待たせ過ぎたんだ
……ったく、最低な男だよな。俺って
「そうね……最低よ」
「……さとりか」
「でも、はっきりと決断しないと、今以上に最低になるわよ?だから、はっきりと言いなさい。自分の気持ちを」
「……ありがとう」
「色々とお節介を焼いてくれたお礼よ。あの子が寿命で逝くまでに、言ってあげなさい。私達にとっては一瞬でも、あの子からしたら、自分の一生なのだから」
「……そうだな。ちゃんと考えておかないとな」
……あと数十年か
短いな~
と、いうわけで香李が告白です
別に、香李がもうすぐ逝くとかのフラグじゃありませんよ?
とは言っても、この小説内ではあと十話も無い命ですが……