どうしてそうなる!?
困った君
カタカタとキーワードを叩く音が響く。ここは、大手株式会社の一室。
書類整理課という部署で、会議録から必要なデータまで揃う資料室。そこでパソコンに打ち込んでいる妙齢な女性がいる。美人でもなければ不細工でもない平凡としか言えないのが九条 良美だ。
彼女は今、焦っている。「九条君。旦那さんが迎えに来ているよ」と誰かが言っている。
「あと二行」と応え打ち込んでいる。
普通、職場にお迎えは来ない。だが、誰も驚いていないところを見るといつもの事らしい。
「出来た。チェックお願いします」と書類を上司に提出している彼女の手には、杖が握られている。
「問題ない。帰宅して良いよ」と許可を貰い机に戻るため歩き出す。しかし、バランスを崩し倒れそうになるが、前から抱き締められ事なきを得る。
顔をあげると旦那の総一郎が心配した顔をしているため、大丈夫と言い移動しようとすると手を捕まれ介助される。
心配し過ぎな感じはするも、助かる。
周りから気を付けてねと声を頂くため、有難うございますと応えて机に戻りパソコンの電源を切り後ろにいる旦那の方へ振り向く。
「お待たせ。帰ろう」と言うと、頷かれドアに誘導される。
エレベーターを待ちながら「今日は早く終わるの?」と聞くと
「少し時間が掛かりそうだから、迎えの為に抜け出してきた」
との回答が
邪魔してはいけないなと考え「一人で帰れるよ。仕事頑張って」と玄関に行こうとするも手を離してくれない。「総さん?」
「一人でって、何かあったら大変だろうが」と体を引き寄せられ叱られる。そして、膝裏に腕を通され抱き上げてられる。姫抱っこだ。
「なにするの!?」と驚いていると
「良美が悪い」とそのまま連行される。
旦那の職場に付くと「戻りました。どこまで終わりましたか」と抱いたまま上司に聞いている。
降ろしてと合図するも無視される。
上司もなれた風に「奥さん抱っこか~若いな。ここまで終わったから後、頼むぞ」と仕事を指示
私を抱っこしたまま仕事を始めようとするため「邪魔じゃない?どっかすみに行くから離して」というも聞いてくれない。困り旦那の上司に助けを求める視線を送るも「そのまま座って。効率上がるから」との答えが…
普通はあり得ないと想うも、上司命令なら致し方ないなと諦めて座っていると新人さんかヘルプで来ている女子社員の目線が痛い。
旦那はイケメンではないものの美形で仕事ができるため、恋心と言うか結婚したい男性だろう。
しかし、中身は妻を過保護に扱う困った人ですよ~と思いながら身をちじめる。
体をちじめた事により密着したのか「どうした」と声をかけられる。家ではないので、つむじにキスはないものの、はた目から見たらイチャイチャしているように見えるのだろう。殺気が増した。
正直に言っても良いが、この後、面倒な事になるよりはごまかした方が良いと判断。
「お腹すいた」と伝えると
「そうか」と笑われ引き出しを開けて飴を取り出し口に当ててくる。
あれだ、“あ~ん”をさせる気みたいだ。恥ずかしいからやりたくない。
「有難う」と手を出すも渡してくれない。仕事の邪魔をしたくないため、口を開けて入れてもらう。
恥ずかしい。多分、顔は真っ赤になっているだろう。顔がと言うか耳までも熱い。
そんな私をみて気をよくしたのか、キーボードの打つ音がスピードアップしている。
そして30分後、指示された仕事を全て終え、上司に提出している旦那がいた。
「やっぱり、奥さんいると早いね。結構かかると思ったんだけど」と上司に笑わる
「妻が、空腹で倒れると困りますから」と真顔で言っている旦那
「今日は帰って良いよ。みんなも帰るぞ」と声を掛けて残務終了となる。
「やっと帰れるな」と応接ソファーに座らされ旦那の帰り支度を待っていると、先ほどの女性か近づいてくる
「九条さんの奥さんですか?」と言われるため頷くと小さな声で「あんたみたいなブスに勿体無い。私が貰うわ」といってくる。
貰うわって物じゃないし旦那さん。しかも、私にちょっかい掛けると大変だよと思っていると案の定いつの間にか、女性の後ろに来ていた旦那さん。
「雑賀くん何をしているのかな?妻に近寄らないでくれるか」と怖い笑顔で言っている。「え」と驚いている雑賀と呼ばれた女性。それを無視して目の前に立ち「さ、帰るよ」と促される。
立ち上がり、杖を渡されその場をあとにする
立ち上がるときに見えた旦那の上司は、頭を抱えていた
その後のフォローが大変そうですね