傍観者
私は、ずっと見ていました。
彼がイジメに遭っているのを知っていて、それでも、ただ見ていることしかできませんでした。
私には、虐める人の気持ちが解りません。ただ、虐められる人の気持ちは痛いほど解ります。辛かったでしょう。痛かったでしょう。哀しかったでしょうに……。
それでも、ただ私は、遠くで見ていることしかできませんでした。怖かった。関わることを避けたのです。助けもせず、励ましもできませんでした。ただ、怖くて逃げていたのです。
彼の救いを求める目が、私に焼き付いています。私は、目を逸らしました。彼から。彼自身から。イジメそのものから。
でも、彼の恐怖に脅えた顔が、頭に焼き付くのです。私は、思考を逸らしました。頭から。私自身から。人間そのものから。
だからでしょうか、彼の人に絶望した目が、心に焼き付いて離れないのです。
私も、虐めている人達と何ら変わりありません。私は、彼を見殺しにしたのです。
私の敵は、私です。