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死者の告発  作者: 浅見カフカ


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23/32

地球岬

困ったな——

千早は顎に手を当てて考えこんでいた。

音尾さんはまるで新人刑事のように駆けて行ってしまったし......

それもまぁ仕方がないことかもしれない。

あの事件は彼が新人時代に起きたものなのだから。


「千早さん、どうしたんですか?」

黙り込んだ千早の顔を島田が覗いた。

「佐藤圭太の行方を、音尾さんに調べて欲しかったのだけどね」

「誰ですか?」

「今井加奈の恋人だね」

千早は犯人とは言わなかった。

彼は千早の中でしか殺人を犯していない。

あくまでも推理の中だけだ。

物証は何も無い。

「彼氏くんが居たんだぁ」

島田は悲しげな声でそう言った。

その同情は、どちらへ向けられたものだろうか。



らでん会議から三日後——

千早のスマホが事件の進展を告げるように鳴った。

目覚めきらない目で画面を見ると、島田の名前が表示されていた。

『ニュース!ニュース見ましたか!?』

「いえ、いま起きたので」

『佐藤圭太が死にました』

「どこでですか!?」

『ニュースでは地球岬に遺書と靴があるのを観光客が見つけたそうです』

「ご遺体は?」

『捜索中と言っていました』

「見つかってないのですね」

『......もしかして、千早さんは偽装自殺を疑っているのですか』

「見つからない以上は。それに生きていて欲しいと、単に願う気持ちもあります」

『そうですね。生きていて欲しいですね』



「管轄外ですが、あそこの署には同期もいるので聞いてみます」

音尾もニュースでは知っていたが、詳細は知らない様子だった。

すっかり打ち合わせに使っている第三取調べ室。

滅多に使われないというのは、普段は平和な街だということなのだろう。

「でもどうして地球岬だったのでしょう」

「あそこは"そういう目的"の人にも有名ですから」

「それって、昔の話ですよね。今は観光客も多くて——」

千早の言葉は、そこでノックに遮られてしまった。

「音尾さん、ちょっとすみません」

年若い刑事がドアの隙間から顔を覗かせて、音尾を呼んだ。

彼の緊張した声に、心にさざ波が立った。


(——あの場所は目立つ)

(あの場所でなくてはならない理由)

(自殺の痕跡を見つけて欲しい)

(捜査線上から外れる為)

(それは不自然だ。まだ私達以外、彼を追っていない)

一人残された千早の頭に、疑念や推理が次々と現れた。

それらはまるで、ソーダ水の泡のように無数に浮かんでは消えていった。


「千早さん!」

乱暴にドアが開かれ、頬を紅潮させた音尾が飛び込んできて言った。

「また、殺人事件です」


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