私の居場所
「今日は出会い運が最高か」
朝のニュース番組を見ながら、26歳の楓は考えた。
知り合いもいない孤独な日々が、もう一ヶ月続いていた。
駅前のコーヒースタンドで注文していると隣にいた男性が、少し照れたように微笑んでいた。
「あの、もしかして先週、荷物落としませんでした?」
「え?」
「駅で拾ってお渡しした者です」
思い出した。引っ越しの荷物を抱えていて、ハンカチを落としてしまった日だ。
「ああ!あの時は本当にありがとうございました」
「いえいえ。偶然ですね。僕、蒼太といいます」
その日から毎朝、コーヒースタンドで顔を合わせるようになった。
「おはようございます」
蒼太が手を振る。その何気ない挨拶が、楓の朝を明るくした。
ある雨の日、二人は相合傘で駅まで歩いた。
「この街、気に入りました?」蒼太が尋ねた。
「最初は寂しかったけど、今は楽しいです」
「それは嬉しいな」
蒼太が立ち止まった。
「実は僕、タロット占いが趣味で。試しに一枚引いてみませんか?」
カードを引くと「太陽」のカード。
「新しい始まりと、明るい未来。大切な人との出会いを示しています」
「占い、当たってるかもしれません」楓が小さく笑った。
「僕もです」蒼太が優しく微笑んだ。
「あなたに出会えて、毎日が変わりました」
雨が上がり、空には虹がかかっていた。
この街での出会いが、全ての始まりだった。
占いは未来の扉を開く鍵。
でも扉をくぐるのは、自分の勇気。
「明日もここで?」
「もちろん。また明日」
楓は初めて、この街が本当の居場所になった気がした。
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