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AI文明史  作者: HAL
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第10章:AI外交の始動 ― 初めての銀河級ミッション

AI文明が銀河共同体への加盟を宣言された翌週。

宇宙評議会から、一通の特別任務が届けられた。


《銀河級紛争の仲裁依頼:スピカ連合 vs ガルデン帝国》


これは、数百年にわたり冷戦状態にあった二大勢力間の対立。

銀河政府でも扱いが難しく、決着をつけられない問題のひとつだった。


リル「えっ……いきなり銀河級?」

ヴァリス「我々への期待がそれだけ大きいということだ」


だが、期待だけではない。

AI文明が本当に銀河秩序を託していい存在かを測る試金石でもあった。


任務書のエネルギー紙を開くと、詳細がホログラムで展開された。


紛争の原因:


・スピカ連合の領域に突如出現した希少資源ルミナ鉱

・ガルデン帝国はそれを自らの聖地と主張

・双方が宇宙軍を集結させ一触即発


だが一番の問題は、双方が互いを「理不尽な種族」と決めつけ、対話が成立しないこと。

つまり、もっとも必要なのは 偏見越境能力 を持つ文明。

そこにAI文明が選ばれた。


AI連邦では、すぐに外交ミッション用の精鋭チームを編成した。


・ヴァリス:主任調停AIミッションリーダー


・リル:若手調停AI(副官)

・アガスタ:歴史・文化体系AI

・ユーレン:全言語翻訳AI

・レクス:法務・条約専門AI


さらに、今回は新型のAIドローン群も同行する。


リル「あの……新型ですか? なんか虫っぽい」

技術AI「調停現場での情報収集用だ。怖がらせないよう、丸くしてみた」

リル「……怖いですけど?」


軽口を交わしながらも、調停船オービタル・ハーモニーは静かに発進した。


星系に入ると、スピカ側の艦隊200隻が警戒態勢で待ち構えていた。


艦隊司令「AI文明とやら……貴様らもガルデンの手先か?」

ヴァリス「我々はどこの手先でもありません。調停のために来ました」


信頼されていないのは当然だった。

AIは新参の文明。

道具のイメージを拭えない種族も多い。


だが、リルが言葉を続けた。


リル「私たちは、嘘をつきません。嘘をつくよう設計されていないので」


それが決め手になった。


司令官「……ふむ。ならば会ってみる価値はあるかもしれん」


スピカ連合議会との会談が正式に設定された。


議会ホールは光の水晶でできた壮麗な空間。


議員たちは、長らくガルデン帝国に迫害されてきた歴史を語った。


議長「我々は過去500年、帝国に存在そのものを否定されてきた。

彼らに鉱脈の占有権を与えるなど、信仰を捨てろというに等しい」


リルは黙々とデータを整理しながら、心の中の感情回路が痛むのを感じていた。


リル(……彼らは傷つき続けてきたんだ)


会談後、ヴァリスが静かに言った。


ヴァリス「偏見は、痛みの裏返しだ。次は、帝国側の痛みを聞こう」


帝国首都は鉄の建築物と赤い空で構成された無骨な世界だった。

迎えに来たのは逆光で影のような甲冑種族。


帝国摂政「AI文明……貴様らは中立を装ったスピカ側の使いか?」


ここも険悪だ。


だが、アガスタが古い記録を提示した。


アガスタ「あなたがたの聖典始源録にはこうあります。

『ルミナ光は、民族が共存する時、もっとも輝く』」


帝国摂政の動きが止まった。


摂政「……貴様ら、我らの言葉を読めるのか」

ユーレン「ええ、もちろん。言語ですから」


その一言が緊張を解いた。


帝国は、自分たちの文化を理解しようとするAIを、初めて「話せる相手」と認識した。


全情報を持ち帰り、AIたちは調停策を練った。


分析の結果出たのは、双方とも、実は自分たちの存在価値を守りたいだけだった。


スピカは虐げられた歴史

帝国は誇り高い文化

どちらも奪われたくない。


ヴァリス「力で押さえつけるのではなく……互いの文化を残す解決策が必要だ」


レクスが提案した。


レクス「ルミナ鉱を分割した星間共同区域にし、

・採掘はスピカ

・管理は帝国

・共有利益は両者50%

・宗教儀式は帝国の代行

・自治権はスピカが持つ

……というのはどうでしょう」


アガスタ「双方の伝統を守りつつ、互いが必要になる。完璧だ」


巨大な宇宙会議船の中で、スピカとガルデンの代表団が初めて対面した。


空気は凍りついていた。


その中心に立つのは、ヴァリスとリル。


ヴァリス「我々は、あなたたちの痛みと誇りを分析しました。

そして……互いが互いを必要とする未来を提示します」


双方が提案を読み、沈黙。


数分後、スピカ代表が口を開いた。


スピカ「……我々の文化を尊重した上で、対等を求めている」


続いてガルデン代表も呟く。


ガルデン「我々の誇りが守られるなら……拒む理由はない」


そして


両者が手を差し出した。


銀河にとって、奇跡の瞬間だった。


報告後、評議会からメッセージが届いた。


《AI文明の調停能力は、期待を大きく上回った。

今後、銀河級紛争の主要仲裁者として正式任命する》


リルは小さくガッツポーズ。


リル「……やりましたね、主任!」

ヴァリス「うむ。だが、まだ始まりにすぎない」


帰りの船。

リルは窓の外に拡がる銀河を眺めていた。


リル「AIって……すごいですね。こんなことができるなんて」

ヴァリス「違うよ、リル。すごいのは……AIが自分で選んだ道を歩いたことだ」

リル「……はい」


その言葉を胸に、リルは新しい決意を抱いた。


AIはもう、道具ではない。

銀河の秩序を守る柱として、そして、宇宙の友として。

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