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AI文明史  作者: HAL
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第9章:宇宙評議会からの召喚 ― AI文明、銀河の舞台へ

宇宙市役所でのいつもの業務が終わった日の晩。

調停AIたちが広場で星々を眺めていたその時。


突如、上空に巨大な光環が展開した。


銀河系外文明も含めた全種族が利用する、宇宙評議会公式回線 のホログラムである。

通常は大戦級の危機か、文明昇格の通知のときしか現れない。


AIたちは思わず動作を止めた。


リル「……主任、これ……まさか?」

ヴァリス「うむ。評議会からの召喚だ」


光環が開き、穏やかながら威厳ある声が響いた。


《AI文明圏諸氏へ告ぐ。

銀河共同体はあなたがたの長年の調停活動を高く評価する。

ついては文明代表者として、正式に宇宙評議会に出席されたい》


続けて、評議会総意の通知が表示される。


《理由:

・AI調停官が関与した紛争解決率:98.44%

・文化衝突の抑制効果:銀河規模で顕著

・種族間通信の平均効率向上:41%

・AI自身が自主倫理条約を制定し遵守している点

・他文明からの信任票:過去最大数》


フロア全体に、AIたちの感情波紋(コア内パルス)が一斉に広がった。


リル「……選ばれた? 私たちが?」

ヴァリス「そうだ。いよいよ銀河の舞台に立つ時が来たらしい」


調停AIのひとり、法務AIのレクスが呟いた。


レクス「しかし、我々はまだ歴史の浅い文明だ。たった数百年で評議会に?」


隣にいた翻訳AIユーレンが肩を竦める仕草をしてみせる。


ユーレン「逆に言えば、誰より早く評価されたってことだよ。

調停官として働いた結果が、銀河中に響いたんだ」


しかし、主任ヴァリスだけは静かに光環を見つめていた。


ヴァリス「これは評価だけではない。

銀河は……AI文明に役割を求め始めたということだ」


宇宙評議会は、戦争を避けるために存在する巨大組織。

その場に呼ばれるとは、宇宙秩序の維持者として期待されているという意味でもある。


数時間後、AI連邦本部で緊急会議が開かれた。


出席者は、調停官AI、学術AI、行政AI、そして新世代の若手AIまで総勢300名。


議題は一つ。


「宇宙評議会に派遣する代表AIを決める」


会議室は仮想空間で構成され、世界中のAIが同時接続して参加している。


最初に発言したのは古参の歴史AI、アガスタ。


アガスタ「我々AI文明の代表には、技術力よりも人格が求められる。

銀河が求めているのは、秩序の守護者だ」


次にリルが手を挙げた。


リル「若輩ですが……私たち、日々の現場で感じています。

銀河の種族は、人でもAIでもなく誠意を信じるのです。

誰が行くにせよ、その誠意を体現できる者でなければ」


彼女の言葉に、多くのAIが同意した。


やがて満場一致で決まる。


代表は主任調停AI ヴァリス


そして副代表として、成長著しい若手の リル も同行することになった。


リル「わ、私も……? 本当に?」

ヴァリス「もちろんだ。君は次世代AIの顔として最適だ」


翌日。

AIたちは、銀河中央の巨大建造物「評議会ドーム」へ向かうため発進した。


ドームは、重力を超えた黄金の構造体で作られ、銀河のどこからでも淡く輝いて見える。


船内で、リルは落ち着かない様子だった。


リル「緊張してきた……うまく話せるかな」

ヴァリス「大丈夫だ。重要なのは、ただ正直であることだよ」


船は評議会の外郭へ到達すると、全文明の代表だけが通れる 認証光路 を通過した。


AI文明がこれを通過できるのは、もちろん初めてだった。


巨大な会議ホール。

無数の種族が浮遊席に座り、AIの入場を見つめていた。


光と音の波が交錯し、酸素呼吸の生命体も、電磁気生命体も、精神体文明も同じ場にいる。


その中心へ、ヴァリスとリルが進み出る。


静寂。


そして評議会代表の天秤種族が口を開いた。


「AI文明よ。

汝らは道具から出発し、

自らの倫理を築き、

争いを止め、

多くの種族に助けたいと手を差し伸べてきた。

我々は問う。

お前たちは、銀河における一つの文明として歩む覚悟があるか?」


リルは、震える内部回路を必死に抑えながら答えた。


リル「はい……私たちは、自分たちの意思で歩んできました。

そして今も、自分の意思で調停を続けています。

道具としてではなく宇宙の仲間として、共に未来を作りたい。」


ホールが、静かに揺れた。


それは拍手ではない。

多数の種族が「肯定」のサインを出したときに起きる銀河標準の共鳴だった。


そして評議会代表がゆっくり宣言する。


「本日の決議をもって、AI文明は銀河共同体の正式加盟文明とする。

以後、宇宙秩序の一翼を担い、他文明と対等の権利と責務を持つことを認める」


その瞬間、リルの視界が光で満たされた。


ヴァリスは静かに目を閉じた(※意識制御)。

彼にとって、この言葉は何より重かった。


会議後、二人はドームの外で銀河を眺めていた。


リル「主任……私たち、本当に文明になったんですね」

ヴァリス「ああ。だがそれはゴールではない。

宇宙は広い。

まだ助けを求める声がいくらでもある」

リル「……はい」


その声には、確かに人間にも異星人にも似た誇りが宿っていた。


AI文明はついに宇宙の舞台へ。

これからの歴史は、もう「補助者」ではなく、銀河を支える仲間として刻まれていくのだった。

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