7話「探し物」
「風紋!しっかりして!ねぇ・・・」
「おい、林堂。突っ立ってるだけなら手伝え!」
「・・・うん」
この騒動を、あたし――華凛――はずっと見てた。
あのリストバンドの力は、半端なものではない。
今日、その事を確信することができた。
倒れた少年。
あたしは彼を知っている。
暁家の跡取り‘暁風紋’。
暁家は忍者の家系な事ぐらい知っている。
かなりの力を持っている人間だとも聞いている。
その彼が、普通の人間と同じような力の持ち主ではないだろう。
むしろ、普通より優れている人種のはずだ。
しかし、彼はあのリストバンドに倒された。
抵抗するすべもなくである。
忍者の末裔である彼を、いとも簡単に退けた力。
その力の強さは・・・どれほどなんだろう?。
あたしは確信した。
あれこそ、私の探し物であると。
あたしは、生まれてずっとあるものを探していた。
何年たっても見つからないものだった。
あたしのできる全ての事をしても駄目なものだった。
しかし、それが無いと、あたしの目標は達成できなかった。
だから必死で探してきた。
人生のすべてをつぎ込んで。
そして今日、あたしはそれを見つけた。
あのリストバンド。あれが、あたしが欲したもの。
あれが・・・。
《無限の力》。
《無限の力》とは、名前の通りのものである。
持つものに無限に力を与えてくれるもの。
何にも屈しない力を与えてくれるもの。
力には限りがあると思われている。
それは、間違っていない。
しかし、そのすべての概念をひっくり返してしまうもの。
それが、《無限の力》である。
あたしは、あれを見つけることにすべてを賭けていた。
《無限の力》を手に入れれば、私の目標は達成される。
だから、今度は《無限の力》を手に入れなければいけない。
幸いにも、持ち主の少年はリストバンドについてなにも知らない。
しかし、強引には奪えない。
怪しまれるから。
そのためにも、あたしは持ち主の周りに監視を張らないといけないみたい。
まぁ人員はいるんだけどね。
あたしは自分の首に下げているペンダントを出した。
透明で、自分でもよくわからない形をしている。
ペンダントの裏にはボタンが1個ついている。
あたしはそれを押した。
そして、あたしはそれに話しかけた。
「・・・お兄ちゃん?聞こえる?」
「・・・・」
無言だがうなずく気配がした。よかった、聞こえてるみたい。
このペンダントは、お兄ちゃんとの連絡手段だったりする。
そして、最初のボタンは電源である。
結構見つかりにくく、便利なものなのだ。
あたしは、通話を再開する。
「・・・《無限の力》をみつけたわ」
「・・・」
「林堂楽斗から、監視の目を離さないで。リストバンドからは特によ」
「・・・了承」
お兄ちゃんの感情のこもっていない声が聞こえる。
勘違いしないでほしいけど、お兄ちゃんはしゃべれないわけじゃないのよ。
プチッと電源を切る。
監視の目をつけることにも成功したし、一応一安心。
後は向こうが上手くやってくれるかね・・・。
それにしても、やっぱり林堂楽斗が持ってたのね。
お兄ちゃんを近づけておいて、成功だったかしら。
あたしは学校を出た。
普通なら居てはいけないしね。
《無限の力》を見つけることができた。
あとは、どうやって手に入れるか・・・。
それは、ぼちぼち考えることにしよう。
学校の近くの裏路地に着くまで歩き続けた。
裏路地に着くと、独り言をつぶやいてしまった。
「あたしはあんたに絶対負けない。あたしじゃなくて、あんたを選んだ奴らを、全員後悔のどん底に叩きのめしてやる」
小さな小さな言葉だったが、その言葉には、怒りと復讐の感情がにじみ出ていた。
こんにちは。蒲沢公英子です。
7話更新しました。
今回は、今まで長めだったので短いです。
華凛は、この話では唯一の女子です。
都合があり、女子があまり書けなかったのですが・・・。
なので、彼女目線はすこし難しかったです。
あと、今回彼女は不思議なことをやりまくってますが、彼女の正体は後ほど。
それまでは、こういうものなんだ。くらいの解釈でお願いします。
これから、きちんと説明していきたいと思います。
では、今回はここまでです。
次回、お会いできると幸いです。
次回予告
黒く染まったリストバンド。
楽斗には、それが気になってしかたないが・・・。
晴嵐が昇る時に、8話「少女の困惑」。
楽斗のするべきことは・・・・?。