6話「黒き能力」
「これを見てほしいんだ」
僕はリストバンドを風紋達に見せた。
「これは・・・リストバンド?」
風紋が疑問形の声をかける。
「普通じゃねえか」
「でも、綺麗な青色だねぇ」
辰彦や白雪も自分の意見を述べる。
「実は僕、最近変な夢を見るんだ」
「変な・・・夢・・?」
自分の夢を話すのは結構勇気がいることだ。
ましてや、あんな変な夢の事を話すなんて・・・。
でも、言わないと。
話さないと、なにも解決しそうでは無かった。
・・・言おう。うん。
「実はね・・・夢で女の子が話しかけてくるんだ・・・」
それから僕は順を追って話した。
「・・・へぇ。うん、分かった」
風紋は少し歯切れの悪い返事を返してくる。
「それでね・・・このリストバンドはね・・・」
僕の説明が分かりにくいことぐらい知っている。
きちんと伝わってるかな?。
少女がリストバンドが大事なものと言ったとこまで説明すると、急に後ろから声が聞こえた。
「おい、林堂。お前どこ行ってたんだ?」
ふえ・・?誰?。すごい威圧的な声が聞こえた。
僕が後ろに振り向くと、見覚えのある顔があった。
「あ・・・何?鬼紅雷?」
後ろにいたのは、やはり鬼紅雷だった。
「何?ってお前。次は移動教室だ。鍵が閉めれんだろ」
え・・?あ、そうだ。荷物を教室から出さないと。
「ごめん!。すぐとってくる」
すると、鬼紅雷は少し溜息をつくと、親指で後ろを指差した。
「荷物ならこいつが持ってきている、礼を言っておけ」
自分は滅多にお礼なんて言わないくせに・・・。
そんなことを思っていると、1人の人が僕の方に来た。
持ってきてくれたのは誰だろう・・・?。
「あ!天鐘寺?持ってきてくれたんだ。ありがとう」
荷物を丁寧に渡される。
しかし、天鐘寺は見事なまでの無表情だ。
ちょっと怖いかな・・・?。
「ん?鬼紅雷じゃんか」
辰彦が急に声を挙げた。あれ?知り合いなのかな?。
「お、竜宮か。久しいな」
やっぱり知り合いみたいだ。いつ知りあったんだろう?。
「おい、楽斗。お前鬼紅雷とも知り合いか?」
「それはこっちの台詞だ。林堂、竜宮と知り合いだったのか?」
2人に一緒に聞かれて戸惑った。
どう答えればいいの・・?。
「い、一応鬼紅雷とも辰彦とも知り合いだよ!!」
適当に答えるしかないと思った。
すると、2人はそれで納得したらしい。
「ねぇ。鬼紅雷と辰彦はどういう関係なの?」
気になるので聞いてみる。
「あぁ。鬼紅雷とは去年クラスが一緒でな。いろいろ気があったんだ」
「あぁ・・そうだったな」
すると辰彦は白雪を、鬼紅雷は僕を一瞬見た。なんでだろう。
「まぁ・・・厄介な友人抱えてるもの同士な」
厄介な友人・・・?。
僕と白雪の事?。
聞こうと思ったが2人は話をそらしていた。
「おい、竜宮。なにを話していたんだ?」
鬼紅雷は話が気になるようだ。
「あぁ、楽斗の夢の話だ」
「はぁ?」
普通に言われたーーー!。
僕はしょうがなく、最初から説明した。
興味なく馬鹿にされると思ったが、鬼紅雷は意外にも話をちゃんと聞いてくれた。
「で、これがその例のリストバンドだってさ」
竜宮が僕のリストバンドを指差す。
すると鬼紅雷は急に話を切り替えた。
「なぁ竜宮、お前の横に居る奴ら、俺は知らない奴なんだが」
「え・・?あぁ。暁と白雪のこと?。あれ、お前知らなかったんだ」
なにか趣旨が変わったきがする。
たしかにこの場に居る人で、全員の名前知ってるの僕だけだよね。
「鬼紅雷、俺もお前の後ろの奴知らないけど・・・?」
「あぁ天鐘寺だ。」
・・・・他人の紹介?。
「あぁ!もう面倒だ。全員の名前言え!」
そのあと3分くらい自己紹介タイムになった。
「ねぇ・・・そろそろ本題にいかない?」
風紋の控えめな声が聞こえる。
確かにそうだ。こんなことしてる暇はない。
「ってことでさ、風紋、これわかる?」
リストバンドをもう一度見せる。
少女が聞いてほしいと言った相手は風紋だ。
6人いるが一応最初に聞いときたい。
「俺はパス。全然わからん」
聞いても無いのに辰彦が反応した。
「僕も分かんないよぉ」
白雪も知らないようだ。
リストバンドを全員にもう1度見せる。
その時、天鐘寺が少し眉を動かした。
なにかを思い出したように。
しかし、その微妙な動きは誰も気付かなかったようだ。
しばらく唸っていたが、ついに僕は観念した。
「う~ん・・・皆分かんないか・・・」
少しがっかりした。難しいか・・・。
「ごめんね林堂君」
「ううん、いいよ白雪」
謝ってくれなくてもいいのに・・・。
「なぁもういいだろ。そろそろチャイム鳴るし、行くぞ林堂」
鬼紅雷が催促してくる。
「うん、分かった。みんなありがとう」
しょうがない・・・またの機会にしよう。
全員が自分の行動に入ろうとした時、声が聞こえた。
「・・・待って!林堂」
「風紋?どうしたの?」
風紋がストップをかけてきた。
「なにか分かったのか、暁?」
辰彦もこっちに振り返る。
他の3人もこっちを向いていた。
「林堂、そのリストバンドちょっと貸してもらっていい?」
「え?あ、うんいいよ」
僕は風紋にリストバンドを渡そうとする。
その時思い出した。
少女の言っていた言葉。
(彼にリストバンドを触らせないで)
後半は推測だけど、本当だったらまずい・・・。
なにが起きるかわかんないし。
「あ、やっぱ駄目!」
早口で言ってみる。
しかし、風紋の手はもうリストバンドに触れていた。
「え・・・?駄目?・・―――っっ!・・」
一瞬呻き声が聞こえた。その時。
風紋の体が床に崩れ落ちた。
「え・・ええぇ!!風紋!?大丈夫!?」
「おい!大丈夫か!?」
崩れ落ちた風紋は完全に気を失っているようだ。
「だ・・誰か保健室!!」
白雪の悲痛な叫びが聞こえる。
「おい竜宮!。俺が頭の方支えるから、お前は足の方支えてやれ。保健室に連れていくぞ!」
「了解!鬼紅雷」
鬼紅雷と辰彦が保健室に走っていった。
なにがあったか分からない。
もしかして、少女が触らせないでと言った理由はこれ?。
僕はその場に立ち尽くしていた。
これがリストバンドの力?。
その時僕はもう一度リストバンドを見た。
綺麗な青色のリストバンドは・・・。
黒く、闇の色に染まっていた。
こんにちは、蒲沢公英子です。
5、6話はほぼ同時進行でやっていったので、同日更新になりました。
それにしても、ここから彼らはそれぞれのピンチに直面していきます。
6人がついに集合。ここからもっとドタバタしていく予定です。
最近、更新の暇ができたので、少し早くなっていくと思います。
では今回はここまでです。
次回お会いできると幸いです。
次回予告
この騒ぎを見ている人間が1人いた。
その人間は探し物をしているらしいが・・・。
晴嵐が昇る時に、7話「探し物」。
探し物の正体とは・・・?。