2話「異能の力」
給食時間から約3時間後の放課後。
鬼紅雷正弥は帰途についていた。
歩きなれた道・・・
特に変わらない日常・・・
家に帰れば、鬼紅雷財閥の後継ぎになるために勉強の毎日だ。
親と家庭に縛られる。それだけのこと。
生活環境には満足しているが。
窮屈で、退屈だった。
少し気分を変えたくなった。
いつもと違う道を歩いてみよう。なにかが変わるかもしてない。
そう思って、俺はいつもより1本前の曲がり角を曲がって路地裏に入っていった。
薄暗い
でも、いつも家にいるよりも自由だった。
いつもと少しだけ違う日常。ほんの少しだけ・・。
でも俺は楽しかった。
もう少し遠回りをしてみよう・・・。
俺は薄暗い道を何本か通って家へ向かった。
違う日常を求めて・・・
何本か目の路地裏。
俺は後ろから声をかけられた。
「おい」
男の声だ。
「なんですか?」
振りむくのも面倒なので前を向いたまま答える。
その時体が急に前のめりになり、俺は地面に倒れた。いや・・倒された。
「な・・なにをす」
声を出す暇もなかった。
俺は数人の男に囲まれていた。
「おい、そこのお前・・・鬼紅雷財閥の人間だな?」
「!・・・なぜ知っている?」
なるべく冷静に答える。
すると、相手は俺を嘲笑うような笑みを浮かべた
「そんなのどうでもいいだろ?。こっちが言いたいのは・・・」
少し間が空くと、嘲笑うような笑みは悪質な笑みに変わった。
「お前・・鬼紅雷財閥の人間っていうことは金持ってるんだろ?。ちょいとよこせ」
鬼紅雷財閥はたしかに有名だ。金にも不自由はしていない。
しかし、こんな奴に渡すわけにはいかなかった。
「金は持ってない。他を当たれ」
俺はそれだけ言って、ここを離れようとした。
しかし、それで許す連中では無かった。
案の定、俺はここから逃げられず逆に追い詰められる。
・・・もうそろそろやばいな。
相手の腕が目の前で振り上げられる。・・・ど、どうする俺!?
冷静な表情を保てず、俺は目をつむった。
すると体に激痛が・・・・・走らない!?
ゆっくり目を開けると、そこには見覚えのある後ろ姿があった。
特徴のある白銀の髪。後ろ姿でも完璧に判別ができる。
こいつは俺のクラスメイトだ。
すると、そいつはこっちに振り向いた。
俺は見事に地面にはりついてた。間抜けだ。
そんな俺を少し見て、あいつは顔の向きをもとに戻す。
俺の方を見た時に見えた、翳を宿した漆黒の瞳。
その目には光が灯っていなかった。
まるで、生気を失ってしまっているような・・・。いや、生気なんて元から無かったのかもしれない。
そう・・・こいつには人間らしさが欠けている。
こんなことをいうのは、おかしいのかもしれない。
でも、それしか例えが見つからなかった。今も昔も。
生気を失ったその目は、今は俺ではなくあの男達に向いていた。
「なんだよお前?じゃますんなっつーの」
男が何か喚いている。
俺なら少し身を引いていたかもしれない。
しかしあいつ――――天鐘寺恢霧は微動だにしなかった。
すると、天鐘寺は何かに動かされるような手つきで、ゆっくりと右手を挙げた。
その瞬間――――
空間が真っ二つに割れた気がした。
視界が真っ二つに割れる。
見えていた男達が真っ二つに割れる。
10秒ほどの意味不明な空間分離が終わると、全てがもとに戻っていた。
男達は完全に俺達を恐れていた。
「お・・・覚えてろ!」
どこかの漫画のような捨て台詞を吐きどこかへ行ってしまった。
・・・・助かった。
このままだったらどうだっただろうか。
まぁ天鐘寺には礼を言っておく。
「ありがとよ・・」
こういうことは柄じゃない。だけど今回は本当に礼を言いたかった。
すると天鐘寺はもう一度こっちに振り向いた。
生気の灯らない目が見える。
それにあいつは恢霧じゃなくて、皆無なんじゃないかってくらいに表情が浮かばない。
簡単にいう無表情だ。それもただものじゃない・・・。
今回もせっかく俺が礼を言ったというのに(珍しく)。あいつは表情をまったく変えなかった。
まぁいつものことだが。
ただ今回は気になることがある。
10秒ほど起こった空間分離。その中心はどう見ても天鐘寺だ。
あいつが右手を挙げたから・・・。
俺はあいつに少し聞いてみる。
「なぁ・・・あの空間分離。やったのお前か?」
すると天鐘寺は、表情を全く変えず目をそらした。
答えないつもりなのだろう。
「いや・・・そのかなりきになっ!?」
気が付くと天鐘寺は消えていた。
跡形もなく。
いくら人間らしく無かったって、それは天鐘寺の性格だ。
こいつが、こんな人間離れした力を使うはずがない。
嘘だと思いたかった。いやこれは嘘だ夢だ。
第一おかしいだろ!?。こんなことがあるなんて・・・。
ははっ・・夢だよな。うん、夢。ちょっと疲れてただけ。
明日あいつに確認しよう。そうだそうしたら分かる。
俺は、不安なまま帰途に再びついた。
蒲沢公英子です。
2話更新いたしました。
これから、数話の間は新キャラさんが結構でてくるはずです。
多いですねやはり・・・
今回の恢霧もかなり活躍する予定です。
彼も物語のカギなので。
まぁ無事に2話までいきました(もう安心してるのか
これからもがんばります。
ではまた3話で!