1話「晴嵐の昇る街」
「ほにゃ!!」
僕は目を覚ました。
いつもどうりの晴れた朝だった。
家からよく見える山から立ちのぼる晴嵐が今日もよく見える。
「変な夢・・・みちゃった」
夢・・・・
1人の少女が自分に語りかける夢。
あれはなんだったんだろう。
(・・・楽斗・・・腕輪をなくさないで)
楽斗は自分のことだ。僕の名前は林堂楽斗だから。
腕輪・・・?
机の上に置いてあった、何年か前の母親からの誕生日プレゼント。
透き通るような青色の腕輪・・・??
「こ・・これ腕輪・・かなぁ?」
僕は戸惑った。
それは、腕輪というよりはリストバンドに近いものだったから。
でも、僕の持ち物に腕につけるアクセサリーはこれしかない。
「たぶん、これだよね?」
見えない誰かに問いかける。
当然返事はないが。
「楽斗!起きてるの!?遅刻するわよ!」
下から母親の声がする・・・・ん?遅刻?
僕は部屋の時計を見て、そして青ざめた。
「時間があああああぁぁぁぁぁぁ!!やばい!まじでえええぇぇぇ!」
昨日の夢のせいで遅刻寸前だ。なんであんな夢をみたのだろう・・・
腕輪?を手にはめて下におりる。自分で着けているのが一番安全だろう。
「楽斗!朝ごはんは?」
母の少しいらだった声がする。
「むぅ・・・食べれないよ」
腹減った。給食まで待つか・・・
母親が何か言いたげだったが、僕は玄関へ走る。
「いってきまぁーす!」
僕はダッシュで学校に向かった。
僕は晴嵐中学の2年だ。
晴嵐中学は、僕の家からもよく見える晴嵐から名前をとっている。
歴史はあるが、最近建て替え工事があったらしく校舎は新しい。
ってそんなこと言っている場合じゃない!
僕は全力で走った。
「まにあったぁ・・・ぜぇぜぇ」
息切れが激しい。死ぬかと思った。
チャイムの1分前。最強にギリギリだ。
クラスメイトの目線が痛い。ちょっ皆やめて!
すぐにチャイムが鳴りHRが始まった。
担任の話を適当に聞き流しながら昨日の夢について考える。
あの少女は最後に
(私を忘れないで)
といった
忘れる?。忘れるもなにも僕はその少女を知らない。
知らない人に“忘れるな”と言われても無理な話だ。
でもよくよく考えると、どこか懐かしいような気もしてきた。
じゃぁどこで?僕はその声をどこで聞いた?
考えれば考えるほどわからない。
僕には考えることは向いてないのかもしれない。
成績も下から数えた方が断然速いし。
その時、僕の頭に珍しく知恵が浮かんだ。
・・!もしかしたら、もう1回寝れば夢の続きがみれるかも?
こういうのはよくある話だ。
もう一回寝ればあの少女を思い出せるかも。
僕は些細な期待を覚えた。
今はHRも終わって、1時限目。教科は国語。
眠たい・・・よし寝てみよう!
寝て夢の続きを見よう!
僕は睡魔というものに負け、そのまま眠りにおちた。
「おい!起きろ!」
ん・・誰?。僕の名前を呼ぶのは・・。
「お前何時間寝てると思うんだ。早く起きろ!!」
や・・やめてよぉ。今気持ちよく寝てるのに・・・
「チッ・・早く起きろ!!!」
その瞬間、僕の体に激痛が走った。
「痛・・なにすんだよぉ・・・」
僕の体に激痛を(肘ぐらい?)を入れた人間を見上げる。
「なにってなんだ。お前何時間寝てると思ってんだ!!」
そいつはきつい目で僕を睨んでいた。
いや、そいつの目は“ゴーグルかっ!”っていうぐらい分厚いレンズの向こうで、こっちからはよく見えない。
こいつは生まれつきの、かなりのド近眼なのだ。
しかし、そいつの目はレンズ越しでも、睨んでいることがわかった。そうとう怒ってるよね・・。
「あ・・あの。怒ってるよねぇ・・」
僕はおびえながら聞いた。
「・・・はぁ?。いや・・お前そりゃ1時限目から4時限目まで、ずっと寝てた人間に怒ってないはずがねぇだろ」
少しあきれたようにそいつは言った。
「・・・へ?4時限目?・・今いつ?」
僕の率直な疑問を投げかけた。
するとそいつは、本当に僕にあきれたようで
「給食時間だ」とだけ告げた。
・・・・!給食!!早く食べたいなぁ。
僕がニヨニヨしているのが分かったのか、そいつ――――鬼紅雷正弥はもう脱力状態だ。
「お前は本当に馬鹿だな」
鬼紅雷はボソッとそう言った。
馬・・馬鹿じゃないよ!今日寝たのには理由が・・・。あ、夢の続き見れなかった。
肝心の夢の続きを見ないまま、僕は爆睡してたわけか・・・
「今、今日はちょっと眠たかっただけぇ!!・・。明日からはきちんとするからさ!ねぇ!」
僕はなるべくニコニコ笑顔で言った。
「毎日聞いてるぞ。その台詞」
一掃された。
「ねぇ・・なんで鬼紅雷はそんなに毎日授業できるの?」
こいつが授業中に寝てるところを見たことがない。
しかも、学年トップ付近キープというかなりのエリートだ。
ついでに言うと、そのド近眼眼鏡の下はなかなかのイケメンらしいとか・・。
「は?授業を受けなかったらなにしに学校にくるんだ?。給食食いにか?」
若干図星をつかれて痛い。
「はぁ・・もう明日からはきちんとしろよな」
そう言って鬼紅雷は自分の席へ帰っていった。
あ、忘れてた。ちなみにこいつは鬼紅雷財閥とかいうすごい企業の後継者で、家は豪邸。
おいおい文句のつけようがないじゃないか・・・。
僕があいつに勝っているのは視力ぐらいだな。幼稚園の頃から。
まぁ一応幼馴染なんだけど・・・
そんなことを考えながら、僕は本日初の食事にありついた。
僕は鬼紅雷と話していて、夢のことを忘れていた。
しかし、それは忘れてはいけないことだった・・・。
こんにちは。蒲沢 公英子(タンザワポポコ)といいます。
「小説家になろう」のサイト様では初投稿の小説になります。まだまだ未熟者ですが、アドバイスなどがあると助かります。
~晴嵐について~
晴嵐という戦闘機が実在します。しかし、この話にでてくる晴嵐とは関係がありません。不愉快な気分をされた方にはお詫び申し上げます。すいません。ここでいう晴嵐は、晴れた日に立ちのぼる山気のことです。