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ハブとマングースの戦いを眺める夜会

作者: 糸魚樋

振り切れた女を見たいみたいなコメント見た気がするので思い切った女にしてみました。


「公爵令嬢ハバネラ・ゴーグアク!貴様の謀略、虐め、暴言その他諸々の悪逆は目に余る!ここで婚約破棄させてもらうぞ!」


 ハバネラと呼ばれたスレンダーで華やかな美しさを持った美女は怒りを含んだ瞳で婚約者の王太子を睨んだ。


「婚約破棄ですって!?ふざけていますの?殿下が王太子であるのは我が家の支援あってこそ!そんなことすれば落ち目ですわよこの可愛い子ちゃん!」

「ええい黙れ!その可愛い子ちゃんなどと馬鹿にした呼び方も癪に障る!新しい後ろ盾はこの聖女ププリナ・ハーラグを支える聖教会が担う!」


 その言葉と共に王太子の近くにいた清楚な雰囲気を抱えた美女が王太子の横に並んだ。

 その清楚な雰囲気に反して男と一部女の目は彼女の豊かな胸に目を釘付けにされる。

 余りにもたわわであった。

 豊穣の加護がそこに詰まっていると言えば全ての人間が納得するレベルのたわわであった。


「く、やはり貴方が入れ知恵しましたのね!この腹黒狂信者!その身体で殿下を篭絡させるなんて貴方こそ聖女の肩書きを放り捨てなさいな!」

「ふふふ、お下品な思考ですわ。王太子のような子犬さんは身体を使う必要すらありませんでしたわ。」

「子犬!?」

「どちらにせよ、貴方のやってきた悪事は暴いてやりましたわ。もうデカい顔などさせませんのでとっとと領地なり修道院なりに引っ込みなさい」

「人の可愛い子ちゃんを誘惑する聖女の風上にも置けぬ女が偉そうに!」


 そこでハバネラは周囲を見渡し、自分の味方が少なく追い詰められていることを悟り歯噛みした。


「……そう、周到にやったのね。確かに私はここでおしまいのようですわ……私、本気で殿下を愛していましたけど、愛し方を間違えてしまったのね……」


 しおらしく自分の身体を抱きしめるハバネラの姿は悪だと分かっていても手を差し伸ばしたくなるほどに魅惑的だった。

 そして俯かせた顔を上げれば、そこには歴戦の戦士の如き覇気と殺意を抱いた女傑が立っていた。

 周囲の男たちはうっかり伸ばしかけた手を全力で下ろした。


「いいですわ。私は敗者!受け入れましょう!但し死なばもろとも!貴方にも傷を負わせてあげますわ!!」


 ハバネラはドレスから隠されていたナイフを取り出し、周囲から悲鳴が上がり警戒心に包まれた。

 そしてナイフの先は彼女の美しい滑らかな首に吸い込まれ、全員が沈黙した。

 ハバネラの周囲に赤い血が広がり彼女がその場に倒れ、ナイフが血によって押し出されるように床に落ちた瞬間、声を思い出したように悲鳴が上がった。

 会場があっという間にパニックになった瞬間、ププリナがパァンと音を立てて手を叩いた。


「皆様落ち着いて!騎士の方は混乱した方たちを落ち着かせてあげてくださいな!」


 それと同時に倒れたハバネラがすっくと立ち上がった。それを見たご令嬢たちはキャパオーバーでパタパタと気絶していった。


「……聖女の力は本物ですわね。忌々しい女!」


 ナイフが吸い込まれた先は全て塞がり血が止まっている。


「愚かな真似は止めてくださいな。ここで貴方に死なれたら私の聖女としての経歴に傷が付いてしまう」

「ふん!国よりも教会を優先する狂信者が!教会の力を上げる為に送られたハニートラップ要員のくせに!」

「それを防げぬ貴方が悪いのですわ!この国は我が教会の操り人形!傀儡国となるのです!」

「「「えっ!?」」」


 そこまでを喋って慌ててププリナは口を塞いだ。

 ハバネラはニヤニヤと笑う。

 周囲の聖女を見る目はさきほどから一変していた。


「アハハハ!今さら気付くとは遅すぎますわ!私の血を盛大に使った呪術による自白術!貴方ももうおしまいですわよ!!」

「く、貴方が王太子に近付く女に掛ける常套手段の呪術を忘れるとは……この土壇場で使ってくる胆力は悔しいが認めざるを得ませんわ……」

「ふふふ、貴方に褒められると鳥肌が立ちますわね」

「……お互い後が無いということですか……ならば、最後は……」


 聖女と令嬢はお互いに向けて歩を進めていく。

 始めは歩く速度、最後はドレスとは思えぬ速度で。


「「インファイトですわああぁ!!」」


 強烈なブローが互いに打ち合わされ、その音は岩を打ち合わせたような重低音を響かせ、目にも止まらぬ死闘が開始した。

 その打ち合う姿は一種の芸術ですらあった。



 王太子はそれを茫然と見つめ、その肩を弟の第二王子が叩いた。


「……その、兄さん、申し訳ないが継承権は僕が貰うよ……ここまで問題だらけだとその、ちょっと、庇えないというか……」

「うん……これは……ムリ」

「その、隠居くらいにはなんとか出来ると思うし、……あの、元気出して……」

「うん……」


 小さくなって女怖いと呟きだした兄を必死に慰める弟とその周囲の令息たちを見ながら国王は「二人共に仲良く優しい子たちだ……」と少し目尻に浮かんだ涙を拭いて、周囲の兵に令嬢と聖女、及びにその関係者全員の拘束を開始するように告げた。


 一応、その国はその後も続いたが、聖女と令嬢のインファイトは過去の戒めとして銅像という形で残され後世に伝えられた。


糸魚はこの作品のジャンルがわからないまま投稿しています。

そして前作の連載希望や色々な感想ありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
ジャンルはコメディで良いのではないかと思いましたwwwwwww すごい振り切れた勢いが右ストレートなお話だったwwwwwwwwww
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