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1.突然だが皆は自分の人生に退屈してないかい?

俺はしてる!いやしていた!おっとすまない。第一話からこんなことを言われても、なんもわからないし、物語のジャンルすら見えてこないよな。わかるぜ。

軽く説明する。


俺が今立っている所は、ロードランナーという名前の地下都市だ。

今の時代は君たちが生きている世界の約30年後、つまり2054年6月2日


30年もすれば、世界は様変わりすると思うだろ?まあその通りなんだがな、人間以外は全部変わった。

まず、人は地下に住むことになった。どうしてかって?

第三次世界大戦がはじまって、兵器使われまくっちまって地上はもう住めないところになってしまったからだ。核爆弾だけじゃないぜ?


畑に毒を散布するミサイル、一つ入れるだけであら不思議、周辺の川が魚が住めないほどの毒性に早変わりするカプセル。ほかには...ポセイドンとか言う魚雷も使われてたな。


というわけで、今の地上はボコボコで黒い雨が降って生物が全滅してる。やばい場所になっちまったってわけだ。


だが、そこでギリギリで躱せたのが、昔の札幌の民、あいつらはこんなだだっ広い地下鉄を人間が住めるように変えていったんだ。


空気洗浄とか、食用供給用の地下農場とか、まあ色々頑張って用意してな。

今は食用問題もあんまりない。結構いい感じの都市になった!ってわけ。


だがな、社会に適応できないやつっていうのが、一定数いるんだよ。

仕方ないことだけどな、体力もない。不器用で、なんもできないやつってのがいるわけ。

だけどな、価値観っていうのは、あまり変わらないものだ。日本人特有の価値観、お前らは知っているか?


邪魔だけど自分の手は汚したくない...目に入らない場所に消えてほしい...こいつはイラつくから無視しよう。


というわけで色んな建前が積み重なって、『特別な能力を持ったやつは開拓民としてまだ整備されてない地下鉄に住処を用意しよう』ってことになったわけ、ようは捨て駒、悲しいね。


そして!今日俺はそれに選ばれちゃいましたー!!!はぁ...人生ってクソ


まあ俺が悪いよ?能力なかったし、役に立たなかったしな。俺こそやる気のある無能ってやつなんだなって薄々感じてたよ。でも自分の存在価値っていうものは、持ってないと死にたくなるだけじゃん。


「いいか、お前らにやってもらうのは、旧東豊線の開拓だ。この地下鉄はほかの地下鉄よりより深いところに線路があり、今まで沢山の人が開拓に励んだが、ことごとく敗れてきた魔の場所だ。

だが、君たちならばここを制圧できると信じている」


今俺がいる場所は、その地下鉄の前なんだが、先に説明しておこう。


ロードランナーの中心都市は、大通駅という場所にある大きな地下街、大体の人がここに住んでいる。これ覚えといて。

そして、大通は同時に、札幌にある三つの路線が交差する場所でもあるわけだ。


東西線、南北線、そして東豊線、まあ札幌民じゃないお前らはわからないと思うから、簡単に、


元々住宅街に続く道が多かったのが『東西線』、ここは今じゃ畑とか牧場とかが多い場所になっている。

始発から終点までちゃんと制圧されている安全な場所だ。人が多く住んでいる場所ともいえる。


『南北線』は出口から出たら公園が結構多い場所だ。今は始発(安生)から大通までの場所は制圧されているが、それ以降はあんまりだ。ここの線路は地上に続いてる場所があるからな。"やつら"が入り放題ってわけだ。ああ、やつらはたぶんすぐ出てくるからその時紹介する。

ここは、言ってしまえばスラム街のような場所だ。元々この開拓制度ができてから制圧された場所だから、俺みたいに終わってる奴らがわんさかいる。


そして、この『東豊線』、この線路は学園前とか札幌ドームまでの場所とか結構人が使う場所。

前は学校の登校とかで結構使われていたらしい。主な利用者は学生だな。

で、ここは始発から終点まで一切手を付けられていない。というかつけようとしたけど全員死んだが正しいな。それくらい地獄だ。


「また、質問は一切受け付けない。特別な諸君がこの場所を制圧してくれることを願っている」


「あの、一つだけお願いします。私たちが持っていける荷物はどこですか?」


気弱そうな女が、冷徹無慈悲な役所のやつらに質問をする。ああ、役所ってのはここ支配してる連中のこと、単語ばかりでごめんなぁ。この世界結構複雑だから。


「...物資などはない。現地で調達するように」


「そんな!僕たちこれから探索に行くんですよ...!武器はともかく食用すらないなんて、つらすぎます」


「私たちを殺す気ですか!せめて食用だけでも!」


ここにいる人々が騒ぎ立ててるわ。嫌になるわねー奥さん。

今ここにいる人数はざっと100人程度、探索隊の編成は年に一度行われる。


まあ、言ってしまえば、役所の人々の選別なのだ。人口を減らしてバランスをとる、鼻からそれが狙いなわけだ。


「うるせぇんだよ!」


おおっと!強面の役所の人が登場だ!腕に銃を構えているぞぉ!


「お前が取れる選択肢は一つしかねぇんだよ!さっさとこの進む!それだけなんだよ!お前らは何もできない屑だ!屑に役割を与えてやっているんだ。文句垂れてないでさっさと行け!!」


おおっと!大衆は縮こまってしまったぞ!なんてことだ!こんなバカな人の意見で縮こまるなんて!まあこんなビビりな国民性だからブラック企業がたくさんできていたのか。


「無論、何もないわけではありません。あなた方にはこれに乗ってもらいます」


最初っからいた役所の人が目で合図を送ると、奥から何かが来る音がした。

あれは、電車だ!すっげぇ初めて見た。でもあれだな。ちっちぇな!電車って連結されてるもんじゃないのか?とてもそんな風には見えないけど。と止まった。


「あなた方には、これに乗ってまず始発、栄町まで行ってもらいます。そこに前言った探検隊の物資がさほど残っていると思うのでそれで生活してください」


「ほらほらさっさと動け!」


銃を持った強面の人が銃口をこちらに向けてきた。ここにいる百人はさっさと電車に乗っていった。ああ、俺もね、ちゃんと乗ったよ?死にたくないし。


電車の中は、ふっかふかとかいえないけどそこそこいい座席が置いてあったけど、そこに座る人はあんまりいなかった。大体が、床に座り込んでる。

神様に祈ったり、ただただ終わりだ。とつぶやいていたり、いいのかお前ら、俺がたくさん使うぞ?

座席に寝っ転がっちゃうぞ?はい、寝っ転がったー!結構いい感じや!ぐおお!!なんか揺れた!!


と思ったらもう発射しちまったのか。早いねーどんだけ処分したかったんだよ。


「お前、余裕そうだな」


なんだこいつ、いきなり話しかけてきたぞ。体を起こしてー...ってイケメンじゃねぇか!青髪の!クソ、こいつ。なんでこんなところにいるんだよ!バラエティ番組出ろよ!っていかんいかん深呼吸


「...今更焦ったところで何も変わらないでしょ。今死ぬか後で死ぬか、なら俺は後者を選ぶね。残りある今を全力で楽しむんだよ」


「そう考えられるのがいかれているな」


おい!こいつ隣に座ってきたがったぞ!なんなんこいつ!


「...栄町にたどり着けると思うか?」


「十中八九無理だろうな。ここはやつらの巣になってる。どうにもならねぇよ」


「だよな」


こいつ苦笑いを浮かべていてもイケメンだなぁ。クソが


「そもそもとして、栄町に行った先駆者は電車に乗ってここに来たんだろ?多分つっかえてるよ、トンネル」


「たぶんな、ある程度進んだら栄町には徒歩で向かうことになると思う。だから今のうちにまだ使える場所奴らにこれを渡しておきたいんだ」


イケメンは俺に何かを投げて渡してきやがった。ってこれ、トランシーバーじゃねぇか。


「地下だからつかいもんにならねぇだろこんなもの」


「いや、ある程度範囲が狭くても持っておくべきだ。多分ここの大半はしぬからね。君は勘だが結構しぶとそうだ」


「あーはいはいそうかよ、一応もらっといてやる」


次はー、環状通り東ー環状通り東ー


「おい、この電車、終点で止まるんじゃないのか?まだ半分だぞ」


「どうやら、乗っ取られたみたいだね」


電車が止まり、扉があく、その瞬間だった。黒い影だ。黒い影が、入ってきた。

まるで、飲み込むように、すこしずつ黒い影が伸びていく。

やがてそれは、目が複数ある。化け物に姿を変えていった。


「さーてどうする?君は」


「決まってんだろ。逃げる!」


俺は、一目散に開いてないほうのドアのドアをこじ開け、俺たちが来た方向に全速力で逃げる。

電車からは、この世のものとは思えないほどの絶叫が響き割ったった。

そう、これがやつら。正体はわかっていないが、俺たちは闇と呼んでいる。


闇の中に潜み、人を食らう化け物、どこから発生したかすら不明で、対処法すら不明な化け物だ。


「残念だが、俺は行きたいんだよー!!」


全速力で逃げる逃げる逃げる。


もう何も気にしてる暇なんてない!後ろを振り向かずに逃げる!にげ...


「て、マジが」


逃げた先には、黒い壁が反り立っていた。俺たちが来た時にはなかったはずの黒い影、いや、これをすり抜けたから乗っ取られたのか?


黒い壁は少しずつ形を整えて、また目を生やした。姿は丸く、まるでサッカーボールに無数の目がプリントされたような奇怪な生物へと変化した。


その目が一斉に俺の方へと向くと、目は口に変化し、異様な笑顔を俺に向けた。


「ってやばいやばいやばい!!」


全力で電車の方向へ逃げる!こんな化け物、どうにかなるわけねぇだろ!ふざけんなクソが!!!

って


「クソ!」


俺を追って逃げてきた乗客のやつらが、大量のやつらに喰われていた。顔が半分無くなっているもの、原形がなくなっている者、いや、そんなことはどうでもいい。何より問題なのは、やつらはざっと30匹以上はいることだ、終わった。


「クッソが!俺は生きてぇんだよ!恥を書いても!裏切られても!食うもんがなくても生きてきたんだ!こんなところで終われるか!!!」


俺は、渾身のこぶしで、闇を殴った。


だが、いつだって現実は非情だ。


俺のこぶしは、闇に喰われて、一瞬のうちに亡くなってしまった。

この世界は、現実だ。アクション映画のように一人一人順番に襲ったり、その間待ってくれたりなんかしない。俺の悪あがきは、奴らのリンチで一瞬で決着がついた。


背中は切り込まれ、内臓は腹から出てきている。そのうちサッカーボールの野郎は、いつの間にかできていた腕で俺の体をつかみ、そして、少し眺めた後に、飲み込んだ。


俺の人生は、ここで終わった。





そう思っていたんだがな、なんということでしょう。俺の体は元通りではありませんか。

っとすまない、順序を追って説明しよう。

おれは、まるで何もなかったかのように普通に目を覚ました。線路の上でな、周りを見渡しても人はいないし、やつらもいなかった。


俺は体を起き上がらせて、ちゃんと動くかを確認した。破損していたはずの腕は元通りになり、腹は何もけがをしていなかった!いや全くの無傷!不思議だね。

うまく説明できてるかわからないが、俺も結構てんぱってる。死んだはずなんだもん。おれ


「これどうなっているんだ?」


どうにもわからない俺は、とりあえず俺が向かっていた駅で考えることにした。


環状通東駅


駅のホームのベンチに座り、俺は考え始めた。俺は食われたはずで、どうにもならない状況だったはずだ。なのになんともない。どうしてだ?


けがもない。誰かが手当てしてくれたんだろうか?だが、欠損した腕は元通りに治るはずがない。

...それに妙だ。ここまで歩いてきて、俺が目が覚めてきて一回も奴らを見ていない。


「...栄町の方向に行ったのか?」


それはあり得る。あの時、俺は栄町の方向へ逃げなかったが、他のやつらがそっちに逃げなかったわけがない。そもそも目的地はあっちだったんだ。

あっちに逃げないほうが不自然だ。


「...そうだ!あのイケメン!」


あいつは、栄町に徒歩で向かおうとしていた。あいつなら考えられる。それに、


「トランシーバー...」


今は、わからないことだらけだ。闇に喰われたはずの俺がなぜ生きているのか、なぜ闇がいないのか。

他の人は生きているのか?そもそも俺って生きているのか?


だが、それでも俺は生きたい。ならば、やるしかないだろう。


「とりあえず、栄町に行き、トランシーバーを使う。話はこれからだ」


これが、俺の物語の始まり、謎だらけだろ?それでいい。

とりあえず、俺たちは負け犬で、ここに飛ばされて、ここには闇に溶け込む化け物がいて、大通には帰れないってことだけ覚えていてくれ。

さて、始まりだ。頑張ろう。


現在位置 環状通東駅

目的地  栄町駅


栄町までの駅数、3駅

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