六話 幼馴染1
怒涛の入学式から二週間が経とうとしていた。落ち着き始めてはいるものの、まだどこか初々しさと騒々しさの残る教室。
そろそろ加入する部活を決める者が出てくるだろう。タイガは入学式の時には既に決めていたらしいから、あいつが早すぎるのだ。
この二週間いろいろと見てまわったが、いまいちコレといった部活は見つからなかった。さすがに高校生活で帰宅部というのもなぁ。かといって運動部はつらいだろうし、文化部で精力的に活動していないところをてきとうに選ぶか。
もちろん部活見学はムサシと仲良くまわった。決して一人だと恥ずかしいからとかで、連れ回したわけではない。
それにしてもあれだな。ムサシはお願いされたら断れないタイプだな。僕が言うのもなんだがムサシは断る勇気を持つべきだと思う。まあ、どんなことも断れないという優しさも、彼のいいところなんだけどね。
そんなことを考えていた昼休みのこと。
突然さきちゃんに呼び出された。ちなみにさきちゃんとは、我がB組の担任である小黒紗季先生のことである。入学式の日以来さきちゃん、もしくはさきちゃん先生の愛称で呼ばれている。
なにか怒られるようなことをしただろうか。校則違反になるようなことはしていないと思うんだけどな。とは言いつつも、実のところ、何用で呼び出されたかは目星が立っている。
「あぁ、誠士郎ちゃん。分かってるとは思うけど天音ちゃんのことくれぐれもよろしくね。はい、これプリント。彼女、入学式の日に鼻血出していたじゃない?それからもうすぐ二週間が経つけど、一度も学校に来ていないのよ。体調も心配だったから、お隣のお家の誠士郎ちゃんがいて紗季先生助かっちゃった。」
「えー、こういうのは担任であるさきちゃんが行くべきところでしょ。」
「そうしたいのも山々なんだけどね、今は新年度で手が回らないくらい忙しくて、天音ちゃんのお家に訪問する時間がとれないのよ。」
「まあそれもそうですよねー。仕方ないか、分かりました帰ったら寄ってみます。その代わり、内申点あげてくださいよー、さきちゃん。」
「行ってくれるのね。ありがとう。でも、内申点はあげられないよ。今後の頑張り次第だね。あと、さきちゃんはやめなさい。」
じゃあよろしくねー、とよろしくされてしまったが正直に言うと行きたくない。でも、さきちゃんも困ってたしな。さきちゃんの言うことを聞いてあげるとするか…。
■■■
そうして時刻は夕方。通りの家々からは晩ごはんの匂いが漂い、公園で遊ぶ小学生もぼちぼち帰る頃。とはいっても最近の子どもが公園で遊ぶ姿はほとんど見ない。今はネットゲームがほとんどだ。成長期に外で遊ばないとは、今の子どもたちの老後が心配だ。
そうこうしているうちにたどり着いたのは我が近藤家の邸宅である一軒家。のとなりに位置する小浮気家の門前だ。
一応チャイムを鳴らし、反応がないのを確認すると玄関の中へ入る。
玄関を入ってすぐの階段を登ったさきにその女の部屋はある。
扉の前まで歩み寄ると、一応ノックをした。ラッキースケベ的なあれを防止するためだ。
世の男子が夢見てやまないその展開も、扉の奥の存在のラッキースケベであるというだけで興奮など皆無である。99.99%興奮しない自信がある。日本の刑事裁判の有罪率は99.9%であるから、無罪を主張する弁護士も匙を投げることだろう。
扉のノックは良心からくるものであったが、無情にも部屋のヌシからの反応はない。そこまで確認すると部屋の扉を開ける。
そこにいたのは・・・
「うっひょーーーーー!そこでまさかの攻守交代!すぐさま壁ダァーーーーン!あ〜〜尊すぎる。こんなに幸せでいいでござんすか!これは尊死するに決まってる!今日がウチの命日になりまっせ!デュフ、デュフフ、デュフフフフフフフ。」
目を血走らせ、目の下にくっきりと隈をつくり、BL漫画を描く変態女であった。
そう、この変態こそ我が家の隣に住む幼馴染、小浮気天音その人である。




