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ボーイ・ミーツ・ボーイ  作者: ピリカピリララ
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十二話 勉強会1


「だ〜か〜らぁ〜。括弧の中をXプラス数字もしくはXマイナス数字にして二乗の形にする必要があるんだってばー。」


「あーーー!もう!わかんねぇー!」


「なんでわっかんないかなー。二乗の形にして、二乗で余計に増えた分を引くだけでしよ。それで平方完成は終わりでしょ。」


「なにを括弧にする必要があるのかも、二乗にするのかもわかんねぇよ!てかヘイヘイホーってなんだよ!」


「だ、か、ら!へ・い・ほ・う・か・ん・せ・い!さっきも言ったでしょ!そうしないとグラフが書けないんだけってば!」


「なんでグラフを書く必要があるんだぁー!」





 時刻は放課後。数学の問題に頭を抱える男が一人。いらいらしながら説明する女が一人。そして傍観する男が一人。状況は深刻だ。





 順を追って説明しよう。僕たちにとっては高校生活において初めてとなる定期テストが三日を目前に迫ったある日のことである。


 数日前までは野球に心を燃やしていた男タイガ、もとい打田寅吉は突如、勉強を教えてほしい、とこの僕に懇願してきた。これまでの余裕とは打って変わったその様子に僕はYESと答えざるを得なかった。


 そうして放課後に我が近藤家の僕の部屋で勉強会をする事が決まった。…決まったわけだが…。どこで噂を聞きつけたか、はたまた教室で聞いていたのか、我が家の隣に住む小浮気天音は当然の如く僕らとともにこの部屋に入ってきた。


 最初こそ「うっへぇ、思春期真っ盛りの男子が二人で勉強会など何か起こるに違いない。いや、何かないとおかしい。」とほざいていた天音であったが、タイガがあまりにも勉強ができず、イライラしてしまった。


 そうしてイライラしながら説明する女一人と、説明を理解できず頭を抱える男一人、傍観する僕が出来上がったってわけ。



 変態である天音だが、これがまた器用なのだ。勉強、運動、人間関係、どれをとっても高水準の高スペック女。そうであるがゆえタイガの勉強のできなさは自分の目を疑うほどであったようだ。でもね、みんながみんな勉強できる訳じゃないんだよ…。その人の気持ちも考えてあげてね。


 常にBLのことしか考えてないようなやつがどうしてこんなにできるやつなんだ。天は人に二物も三物も与えてしまったようだ。それにしても普段あんなにちゃらんぽらんに生きてる天音がこんなに熱心に人に物を教えるとは…。おかしなものでも食べたのかと不思議に思ってしまう。


 タイガもタイガでこれまでテスト勉強を全くせず野球と恋愛しか見えていなかったのに、一体何が起きたのか。実に不思議だ。


「タイガ。勉強を一生懸命するのはいいんだけどさ、一体なにがお前を変えたんだ?これまで野球と恋愛しか頭になかっただろ?」


「うっ。それがよぉ…。」

 



 そこで聞いたのはタイガの今日までのテスト期間の話だった。


 前にも説明したように野球に恋愛に全力を注ぐと決めたタイガはテスト期間中も学校に残って自主練をしていたらしい。


 しかしテストの四日前。つまり昨日のことだな。


 いつものようにひとり学校に残って自主練をしていたときのこと。ある人物に声をかけられたんだとか。



 それはある女生徒だった。それはタイガが恋している三年の先輩。そう、橘先輩だ。もちろんタイガは元気よく挨拶をし、磨き上げた頭を褒めてもらおうとその坊主頭を橘先輩に披露した。


 しかし先輩の反応は苦いものだった。


「部活にやる気があるのは良いことだけど…打田君、テスト勉強は大丈夫なの?あまりに成績が悪いと補習を受けなくちゃならなくなるよ。そうしたら夏の大会も出れるかどうか…。」



 タイガは唖然とした。自分が必要ないと切り捨てたものが自分のしたいことを遠ざけるかもしれないからだ。もし夏の大会に出られなければここまでの自分の努力は何だったのか、そう思ったに違いない。しかも憧れの橘先輩は加えてこんなことも言った。


「あと野球ができても頭がバカだと全然かわいくないよね。」



 つい先日褒められたタイガの坊主頭。それが"かわいい"から"かわいくない"に変わろうとしていた。


 そうしてテストの四日前にしてようやくテスト勉強をすることを決心したのだそうだ。しかし、もともと授業も真面目に受けていなかったタイガのことだ。勉強を始めてもわからないことだらけでこれっぽっちも進まなかったのだそうだ。そこで白羽の矢が立ったのが僕だったそうだ。


 頼ってくれるのは嬉しいが、僕自身テスト範囲を完璧に網羅しているわけではない。僕に物を教えられるほどの頭は搭載されてませんよ。そんなことを考えていると言い合いをしていた天音が宣言した。



「これは教えがいがありそうだわ…。テストまで今日とあと二日、ウチがみっちり鍛えてあげるから明日も明後日もこの部屋に来なさい。赤点回避くらいはさせてあげるわ…。そのレベルに達するまではこの部屋から出させないから覚悟しなさい。」




 こうしてテストまであと三日。地獄のレッスンが始まったのだった。いや、僕の部屋じゃなくて他所でやってくれよ…。




 

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