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プロローグ

「これより、貴君の査定を言い渡す」


 静まり返った部屋の中、壁と床の白色が目に突き刺さる。誰もがあまり気にしない査定の言い渡しに、珍しく体をこわばらせる女神がいた。


「貴君の査定は、Dである」


 部屋にいた周りの者がざわつく、なんてこともない。女神は部屋でたった一人であった。普通であれば、たくさんの女神が流れ作業のように自らの査定を聞いていく。まさに、これは異質な光景であった。


「……D、ですか」


 その穏やかな声色に動揺している雰囲気はない。冷たかった手にはほんのり温かみが戻り、自らの予想通りである結果に、ある種安堵しているようにも見える。


「貴君には、まだチャンスが残されている。このD査定は、業務停止を意味するE査定を下すまでの猶予期間を与えるものである。己の行いを省み、必ず挽回せよ。」


 女神は軽く会釈をすると、一歩後ろに下がる。すると、背後にあった扉が開いた。振り返ると、崖っぷちに立たされた者とは思えない堂々とした足取りでその場を去ろうとした、その時。


「待て、貴君に忠告しておく」


「……何でしょうか」


 女神は振り返りもせず、その声に返答する。普段真面目な態度をとる女神にしては、無礼とも思える振る舞いである。


「貴君は普段から何を考えているのか掴みにくい。だからこそ、忠告する。これは常識であるが、自分の管轄の世界への直接干渉は絶対にするな。我々はその世界の生き物を尊重し、あくまで世界の均衡を保つ間接的な手助けをするのみである。よいな」


 はい、と小さく肯定すると、そのまま扉へと歩を進める。忠告した者がどんな表情で語りかけていたかは分からない。しかし、女神にとっては些細なことである。なぜなら、すでに覚悟は出来ていたのだから。

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