03 ゾンビアタックで新天地へ
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【擬似孤島型永久重力戦艦-SKY-】へようこそ
ここは島の地下室です。まずはハシゴから登って外の状況を確認しましょう
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「何度目の朝だろう」
ソラシドは壁をつたい、ハシゴを登る。
「悪いツルギ。無事だった?」
「はい、なんとか!突然島の半分が崩落したので流石にびっくりしちゃいましたけど」
ソラシドは失態をしてしまい反省する。
そうだ、仲間に会うよりも先に解決しなければならない死活問題が存在していた、と思いなおす。
「食料なんとかしないと……」
「そうですね。私はまだ全然平気みたいですけど。これがいつお腹空くかわからないですし」
「取り敢えずアイツには連絡した。食料確保先にするから待つように」
「なんて言ってました?」
「『首キリンにして待ってるwwww』だと」
と、言うわけで先に食べ物探しとなるのだが。
「でもソラシドさん。周囲にこれと言って食べ物見当たらないですよ?」
数時間前、ゲーム内時間で言うと昨日はリンゴの実った浮島を偶然にも発見したソラシドだったが、今はどこをみても、雲、雲、雲でそれらしきものが一つとして見当たらない。と。
「ふっふっふっ。見当たらないかぁ、じゃあ遠くまで行って探さなくちゃな」
「はい……ってそれじゃダメですよ!!」
「なんで?」
「なんでって、島を動かしたらまた空腹で死んじゃうんですよ!!」
ツルギの意見は、食べ物を探すためにお腹を空かせながら島を動かして死んでいたら本末転倒もいいところだ、と言いたいらしい。
しかし、しかしだ。考えてみて欲しい。それは"死なない状態"を維持する場合の話でしかないと。そして"死にたくない"から言える意見だと。
「たしかに死んだらレベルとか広げた島とか無くなるから悲しいよな」
「そうですよ」
「でも今の俺ってさ、空腹で死んだところでデメリットほぼないんだよね。生まれたてホヤホヤの無一文だし」
「そうです、ねぇ」
おや。おやおや?と、ここらへんから流石のツルギも気がつき始める。
ツルギは、今一夜を乗り越えそれなりの土地と手持ちとレベル経験値が貯まっている。これを失いたくはないので、"死にたくない"。しかし目の前にいるソラシドは?死んだところで最初っから何も持っていない。
むしろ"死んでもいいから"生きる手段が欲しい
「ってなわけで『命のリレー!ゾンビアタック食べ物島探し!』はーじまーるよー!!」
どんどんぱふぱふ。無限に死にながら、死に物狂いで船旅を延々と繰り返し、どこかに隠れてる食料を無理矢理探し当てるゴリ押し作戦の始まりだ。
「ツルギ。ちょっと島のドッキングは一旦切り離す。そこで待っててくれ」
「あっ、はいっ!!」
◆◆◆◆
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【擬似孤島型永久重力戦艦-SKY-】へようこそ
ここは島の地下室です。まずはハシゴから登って外の状況を確認しましょう
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「ふっふっふっ……」
もう見慣れた地下室。見飽きた地下室。冗談抜きで親の顔より見た地下室。
ソラシドは再び壁を渡る。その動きはもはや最適化され、2秒もかからない。
ハシゴを登ると外の世界。季節感は春のような心地よい陽気と涼しい風が吹く。
「ソラシドさん、28回目です」
「もう数える必要はない、これが最後だ」
「それさっき聞きましたよ?」
ツルギはもう、若干呆れている。ソラシドは目を瞑ったまま腕を組んでる。
「あれ?もしかして本当に見つけたんですか!?」
「ふっふっふっ」
ソラシドは片目だけ開けて、にんまりと、腕の間からピースサインを覗かせる。
「本当ですか!」
「ああ!ああ!ついに見つけたよ!特大サイズの大当たりってやつをよぉ!!」
「やったやったぁ!!」
そこで盆踊りを始めるのがソラシドで、ピースピースと子供のようにぴょんぴょん弾むのがツルギだ。
苦節28回。真っ直ぐ飛んだら慣性に置いてけぼりにされて落下したり(2敗)
上昇して探し探したが陽の光が眩しすぎて見つけられず 餓死したり(3敗)
Gがかかって島ごと崩壊したり(1敗)
東と西をシャトルランし過ぎて船酔いしながら餓死したり(8敗)
島だけ急降下し、取り残された後そのまま落下して地表に叩きつけられて圧死(1敗)
リスポーンの壁移動を忘れそのまま落下死(2敗)
とまあまだまだ沢山死亡例はあるがもうそれらは思い出話。
2人は意気揚々と島の取り舵の方へと向かい、即座に操縦モードへと切り替える。
「いざいざ孤島へレッツゴー!!」
「おーきーどーきー!!」
2人は島を降下させていく。下へ下へ。雲の壁を突き抜けて、下へ下へ。
◆◆◆◆
「わぁっ」
「鬼のようにでっけえ島だなあ」
ツルギ、ソラシド、列島上陸。
2人が降下した先にあったのは目測ではその全貌が見えないほどに大きな陸地。もちろんその下にもまだまだ空が広がっているが、「大地」と言ってしまっても差し支えない。
霧があり、湿度も高い、気温も低く、されど深い緑が生い茂る。怪しげな森林地帯へと舞い降りたのだ。
「いやはや、関心してる場合じゃねえ。さっさと食料を回収して帰投する」
「はい、私も今回ばかりは空腹になってしまいました!」
ソラシドもツルギもこの島へと移動する間に、エネルギーを使った。すると当然すぐに空腹へと移行して、一定時間ごとにダメージを受け続けてしまう。
ここは緑がいっぱい。食べ物と思わしき物はたくさんあるので高速【採取】タイム。
「あっ!キノコ!」
そこの木の根本。真っ白で傘を刺したおチビちゃんが生えている。鍋にしたらうまそう、なんて考えつつも、ソラシドは素手で掴んで引っこ抜く。
「いただきます!」
そして摂取する。別に口に運ぶ必要はないのだが、勢い余ってそのまま齧ってしまっていた。雰囲気と勢いはときに人を狂わす。
「うおおお空腹解消!!」
ソラシドが舞い踊るように喜ぶ様。ツルギはそれを見ながら自分もキノコを引き抜き。【採取】して────。
「やめときなさい」
「へっ?」
キノコを採ろうとした瞬間、ツルギは後ろから、何者かに手を掴まれた。
はっと振り返るとそこには……褐色の肌に白いローブに身を包んだ、可愛らしい少女が立っていた。
少女は釣り上がった短めの眉毛をぴくりと動かしながら、吐き捨てるように、警告を続ける。
「そのキノコ、毒がある。食べたら死ぬ。だからやめときなさい」と。
「毒あるんですか!」と驚きの声を上げる。それを聞いてツルギはキノコを諦めるが、同時にある人物を思い出す。そう、さっき思い切りキノコを食した奴がそこにいるのを。
「ソラシドさん!!まずいです!!このキノコ毒がある……みたい……」
いつもの調子なら「やべえ!!嘘だろ!?」といった風な口調で、慌てふためきながらも解決策を考える。それがソラシドらしい反応だ。ツルギはそう思っている。
だがソラシドの表情は、今回に限っては、慌てる様子も無く、何か考えているわけでもなく。ただ一つ、今目の前にいる謎の少女に向かって、何か威嚇するような、野生動物が警戒するような、そんな眼をむけていた。
「おい、なんでお前がここにいる?」
「それはこっちのセリフなんですけど。なんでアンタがここにいるわけ?」
いがみ合う2人。間に挟まれたツルギは「へっ?へっ?」と困惑しながら首を左右に振る。
「今日は囲い不在か?」
「だったらなに」
「そいつの、ツルギの手を離しな。俺にぶっ倒されたくなければ」
「その態度、大嫌い。死ね、ソラシド」
────【かつて伝説を率いた英雄】は思わぬ形で再開を果たす。今は亡き彼の地、彼女とソラシドはいわば水と油。決して相入れない存在。
その名は。
「【絶世の大聖女】観音イル」




