02 擬似孤島型永久重力戦艦-SKY-
ーーーーーー
廃人ゲーマーズ(7)
ーーーーーー
英雄<と、ここまで説明した通り【-SKY-】は複数人で協力しなきゃ攻略できない。誰か付き添ってくれる奴はいないか?
聖女<絶対にいや、キモい、死ね
魔術師<聖女ちゃん辛辣すぎない!?
魔術師<ごめんだけど、ちょっと別ゲーで忙しいから、気が向いたらねー
軍師<忙しいからパス
竜騎士<今はちょっとゴタゴタしてるので無理だなぁ。本当にすまない。
狂戦士<あ?アカンな、お断りや、オレに頼み事するときはわかるよなぁ?
ーーーーー
「薄情な奴らめ……」
空の下、今日も快晴、浮島の上で悪態をつく。天然パーマに目の下の隈が特徴的なこの男。ソラシドである。
「あっ!ソラシドさん!おかえりなさい!」
そんな男の元に甲高い声で駆け寄ってくる、一つ結びの茶髪の子。名をツルギ。
彼らはこの、【-SKY-】と呼ばれるMMOにおいて、フレンドプレイヤー同士。つまり攻略においての仲間である。
さて、このソラシド、先程は確かこういった。もう一度伝説を集結させると。
「どうでしたか?お仲間さんは集まりそうで……」
「聞かないでくれ」
「あっ」
集結は……できましたか?
ほとんどの奴からお断りされた。ソラシドの心境を明確に表す言葉があるとすれば、不服の二文字が一番あっている。
「いや、確かにあれよ?元より純粋な仲間って関係ではないんだけどさ?」
確かに彼らは【オリオン】においては各々が自分の陣営を持つようなプレイヤーたち。
ちょっと集まって話すだけで、他のプレイヤーや部下から"首脳会談"なんて揶揄されるくらいの関係だ。
仲間というには、きな臭すぎるといえばそれはそう。
でも、しかし、だ。
「仮にもサービス終了まで苦楽を共にしてきた同胞の頼みだぜ?ああも簡単に断るなんてさぁ!特に聖女!嫌うのはまだいいとして暴言が酷い!よくないって!」
「……うーん。でもソラシドさんぶっきらぼうだから、わからないこともないかも」
「は?俺が悪いんか?」
「そういうとこですよぉ、言葉尻がちょっと怖いっ!怒ってるって思われちゃいますよ?」
「マジ?そんなに?……怒ってるように見える?」
「うん、うん、見えます!」
2回頷かれる。ソラシドは自分を鑑みて、確かに言われるとそんな感じがして、若干落ち込む。
「参ったなぁ、1人しか賛同してくれないとなると、俺も堪えるぜ……」
「気持ち切り替えていきましょ……って、え?1人?えっ!?1人いたんですか!?」
ツルギは驚いた。てっきり仲間の全員に断られたと思ったからだ。
だが実際は違うようで、ソラシドは言った。
「ああ1人だけ。ただそいつはまあ、なんというか、クセ強強えっていうか」
そう語る彼は、苦い顔をしながら遠くを見つめていた。
ーーーーー
狙撃手
ーーーーー
狙撃手<グルチャみたぞwwwwwwブッフォwwwwwスカイやるンゴwwwwwwシド氏の仲間1号はオイラやねwwww
英雄<お、おう、助かる
狙撃手<今準備汁wwwwまたれよwwww
ーーーーー
「まあ、こんな調子の奴だ……」
カメラ機能でチャットの画面共有をする。その画、痛い。あまりにも痛い。痛すぎると目を伏せる。しかしツルギの反応は意外にそうでもない。
「なんか面白そうな人じゃないですか!よかったですね!1人でもいれば心強いですよ!!」
「お前は、なんというか、うん」
「ピュアっでしょう私?」
「ピュアっていうより"雑"だよな」
「なんですか"雑"ってぇ!!」
ムキーーっと地団駄する。やめろ地盤崩れたらどうするんだと、頭を叩く。
頭をさすりながらツルギは聞く。
「でも、実際ソラシドさんの知り合いってことはゲームがうまいんですよね?」
対してこう答えた。食い気味に。
「上手いなんてもんじゃない。遠距離武器使わせたらアレの右に出るやつはいない」
「ほぇぇ……ソラシドさんとどっちが強いですか?」
「俺」
「ぶふふっ」
「何笑ってんだ?お?お?」
実際、ソラシドと、その狙撃手は、銃に限定した撃ち合いだとほぼ確実に前者が負ける。戦いの場がFPSならもっての外。
事前準備ありきのなんでもありなMMOにおけるプレイヤーvsプレイヤーでなら6:4、用意ドンで白兵戦なら9:1。どちらかと言うと得意なことが違う実力者同士といったところ。
「それじゃあ会いにいくぜ」
「はい!」
ソラシドの号令にツルギは元気よく敬礼しついていく……。
「ところで会うってどうやってですか??」
◆◆◆◆
小さな島。その名を【擬似孤島型永久重力戦艦-SKY-】という。
読めばすぐにわかることだが、これは島の形をした空中戦艦であることを指し示している。
プレイヤーはその力で当たりの島を引き寄せる重力パワーを持つように、この島自体も重力を利用して移動でき、これを利用しない手はないだろう。
ソラシドとツルギは島の上にちょこんと生えている円形の取り舵の前に立つ。
ーーーーー
「浮島で空を自由に移動する」
【擬似孤島型永久重力戦艦-SKY-】には【操縦モードシステム】が搭載されています。
ステータスウィンドウから起動して、快適な空の旅を!
ーーーーー
「この島を船みたいに動かしていける。これで会いにいく」
「本当ですか!?」
「うん」
ソラシドは【操縦モードシステム】なるものを起動した。すると取り舵が動き出し、瞬く間に周囲に精密機器が再構築される。鉄塊がうねりをあげ、台座が出現する。
ソラシドが台座に乗ると、周囲に四角いウィンドウが幾つも展開された。それは島内部で稼働しているいろんな状況 (よくわからない)十字マス目と周期的にレーダーが反応する超アバウトな外の状況 (よくわからない)。
総じて雰囲気でしかよくわからないものが並んでいるがまあ、なんとかなるだろうと、達観する。
「ここにX Y Zって書いてあるだろ」
そう言われて、ツルギが顔を覗き込む。ウィンドウの一つを見ると確かに書いてある。
「なんですか?これ。横に数字が書かれてます」
「これは軸。現在の座標を表すらしい」
Xは+7.25981、Yは-0.00015、Zは-4.11213と記されている。
「なんか急に頭痛くなってきました……数字は難しいですよぅ」
ツルギは頭を抱える。ソラシドはまあ確かになぁと言った様子で共感する。
「この空の中心から、東に70歩、南に40歩、で高くも低くもない水平な場所にいるって言えばわかるか?」
「ちょっとわかるかも」
ソラシドも今はゲームモードの脳みそな為、そんなに難しい話をする気力はない。ので手短に説明する。
「その狙撃手ってやつから座標を教えてもらった。そいつは空の中心から東に30、北に50、上に40くらいの場所にいるらしい」
「東、北、上……上以外わかりません!!」
「言うと思った。もう指差した方が早いよな、あそこらへんに向かう」
「ほう!」
ソラシドは今立っている取舵の台座から見て、左斜め上の空を指す。そこをずーーーっと真っ直ぐに言った先にその狙撃手は待っているのだ。
「まあ操縦すんの俺だし。お前は頭空っぽにして敵がいないか見張りでもしてればいいよ」
「そうしときます……私身の程は弁えるタイプなので」
「自分で言うな、疑わしいぞ」
舵を握る。
「それじゃあ出発するぞー、シートベルトしたかぁ?」
「はーい!!」
YO!HO!始まる空の旅!目指すはソラシドの仲間となるその人の元へ!
いつも浮島を引っ張る時に使うような念を、今度は舵にこめる。
「うっわあ!!めっちゃ揺れてます!!」
今にも崩落してしまいそうなほどの地震。「ソラシドさぁん!めっちゃ揺れてます!崩れまぁす!!」と外からキャンキャン発狂する声が聞こえてくる。
だが、その心配は杞憂のようで。島は数秒すると体勢が安定し始め、すーーーっと平行線に巡航を始める。
「ソラシドさん凄い!動いてますよ!!どう言う仕組みなんですか!?」
「ほぼ超能力だよこれ。感覚はクソでっけえセグウェイに乗ってる気分」
己と一心同体の、孤島であり船、船であり孤島。それが【-SKY-】いま、この2人分が結合されたやや大ぶりな島はソラシドの身体の一部となって動いている。
「ツルギ、見張り役はしても、くれぐれも死ぬなよ、島が半壊するからね」
「はい!大丈夫です!細心の注意を払ってますので!」
その注意力、あんまり信用にならないな、とソラシドは思った。
ただ日中は敵が出ることはないので、せめて足を滑らせて落ちるとかいう間抜けな死に方だけはやめてくれよと、切に願うのだった……。
ソラシド本人?いやいや島の中央地にいるし、変に動かなければ地盤崩落も起きまい。死ぬことはないだろうと、落ち着いて船を操る。
ところで思い出してほしいのが、この島の形をした戦艦は、何を動力として稼働しているだろうか。
石炭?核燃料?それとも魔法の力?違う、違う。どれも違う。
正解はプレイヤーの生命エネルギー。
即ち島に対し動きを要求すればするほど、吸い取られるエネルギーは多く、そうしてアレ・・がやってくる。
「ツルギツルギツルギ!!やばいぃぃ!!」
「ど、どうしたんですかソラシドさん!!」
島の外を見張っていたツルギ、青褪めた顔で取り舵から手を離しているソラシドの姿が。
「────空腹で死ぬ!!」
「あっ!!」
その瞬間、ソラシドの胸から伸びる光は一気に真っ黒に変色し、その場で倒れ、身体がポリゴンとなって消失した。
「ソ、ソラシドさんが死んだぁ!!!」
7デス目。死因その2:餓死。




