八話 パシズに着く
前話、私が寝落ちしたせいで、とても中途半端な所で終わってたと思います。
ちゃんと七話を書き切ったので、もしそちらをご覧になってない方は、そちらの方からご覧になってください。
手間をかけて申し訳ないです。
俺たち、と言うかアルディス達が魔物の剥ぎ取りを終えてからパシズに進む事約二時間、俺たちはようやくパシズの街の外壁を目視出来た。
「お〜、これがパシズの街の外壁か。めっちゃ趣あるやん。こう、なんか、とっても外壁!って感じ。」
「なんだそれ、何処もこんなもんだろ?いや、なんならここの外壁はボロっちくて汚い方だぜ?」
はぁ、これだから異世界人は。外壁がどれくらいのレア物なのかを分かってない。まぁ、異世界生まれの異世界育ちであるアルディスに下手な文句を言うのはおかしな事だが。
俺たち地球人からしたら、見るもの全てが文字通りの別世界。異世界にあるような立派な外壁はアニメや漫画とかでしか見たことがない。そう、だから外壁一つで超盛り上がれるのだ。
まぁ、地球にも昔使われていた物とかが、ヨーロッパとかにありそうだが。それでもそういうものを見にいくときは大体観光とかだ。昔使われていた物を観に行って「すげー」ってなる。
地球ですらそうなんだから、異世界で今現在使われている外壁を見てテンションが上がらない訳がない。
ほら、見てみろ俺の家族を。両親なんかもういい歳してんのに心晴に負けないくらいのはしゃぎっぷりだ。
高校生の修学旅行かよ…。
そんな俺の家族を、聖奈は「あはは、流石ハルの家族だね。」って目で見てる。
………………恥ずかしい!!
「お兄!すごい高いね!この高さだったら、中に50m級の巨○が入ってても不思議じゃないね!」
「きゃー!あなた、外壁よ!この立派な壁がパシズの街やその中にいる人を守ってるのよー!」
「かっけぇ…。アルディス君!なんて事を言うんだ!古いってことは、それだけ長い間、この外壁はパシズの街を守ってくれているんだぞ!もっと敬意を持て!それに少し古いくらいの方が味があって良いだろう!」
(…いや、古いっていうのと汚いっていうのは別だがな。古くても、いや古いからこそ外壁のことを考えたら、補修するなりして綺麗にしそうだが。そう簡単に手をつけられないんだろうか?うーん、異世界の常識がないからなんとも言えない。)
「お、おう悪かったよキヨシさん。(コソっ)おい、お前の両親大丈夫か?お前も大概だが、お前の両腕は輪をかけて酷いぞ。外壁一つでこんなに盛り上がるなんて…。あんた達本当いったい何者なんだよ。」
「あーまぁ、俺たちにも色々あんだよ。特殊な能力持ちの聖奈がいる時点で察してくれ。な、聖奈。」
「え!?…え、えぇ、まぁ」
「はぁ、まぁさっきも言ったがあんた達のことは深く聞かねぇよ。お、もうそろそろ門だ。…上の人間に目をつけられたく無かったら、下手なことを言うんじゃねぇぞ。」
「おう」
俺たちは周りに変な目で見られないように、今もまだ興奮気味の家族を宥めてから、俺たち家族とアルディスの兄弟の計11人で門の方へ向かう。
門は意外とガラガラで、誰も並んでいなかった。
「なぁアルディス、此処はいつもこんなに空いてんのか?」
「あぁ、今の時期は何か行事があるわけでもないし、街に滅多に人の出入りはない。まぁ強いて言うなら冒険者くらいだが、まだ帰ってくるには早すぎる。」
「なるほどな。」
うん。やっぱり「冒険者」という職業はあるみたいだ。
そんなことを話していると、門の前に着いた。門の前に立っていたのは、ガタイのよく、しっかりと鎧の着た男だった。その門番が、話をしていた俺たちに気づいたと同時に気怠そうに口を開く。
「ん、なんだ、お前らか。ずいぶん大人数になったな。それに、帰ってくるには時間も早い。何かあったのか?」
「あぁ、この……旅人さん達がパシズに来る途中で道に迷ってな。まぁ元々、リズとリオを連れていたから早く帰ってくる予定ではあったんだが。早く帰るついでにこの人らの道案内しながら帰ってきたって訳だ。」
「…分かった。じゃあ全員何か身分を証明できる証明書を出してくれ。」
あ〜出た出た、街に入るための第一関門。俺たちはこの世界で、身分を証明できる物を何一つ持ち合わせていない。さぁ、どう切り抜けるか。
まぁここは、頭の回転の速い親父に任せとこう。そう思って親父を見ると、「あぁ任せとけ!」と、自信ありげな表情をする。
大丈夫かなぁ。頼りにはなるが、意外とやらかす人というのは身に染みて分かっている。特に今日は酷い。まぁ何かあれば俺もさりげなくフォローするか。
「すみません。実は、旅の途中で盗みに遭いまして。身分を証明できる物を何も持っていないのです。ほら、旅人と言うには我々、少々軽装備すぎるでしょう?」
そう言って、親父は俺たちを指差す。
「あぁ…。だが、身分証明証は肌身離さず持ってるもんだ。全員が一斉に盗られるなんて考えられねぇ。」
門番は、さっきまでの気怠そうな雰囲気を解いて急に仕事モードに入った。
まぁ、流石に怪しいよな、全員が証明書を盗まれた、なんて。
「………実は家族水入らずで水浴びをしている時に盗られてしまって」
「全員でか?見張りはいなかったのか?それに、なぜその時服は盗られなかった?」
「…まさか、水浴びをしている最中に盗られるとは思ってなくて。服は替えがあったのでそれを…」
あれ?親父さん??今日なんか調子悪く無いですか???
いつもの親父なら、相手に隙を与えないほどの口撃力と論破力を持ってして、圧勝するのに…。
まぁ、とっさに考えた言い訳だろうし、少しつけば穴があるのは仕方がない。
だが、この門番はやばい。的確に穴をついて来る。まぁこれくらい出来なきゃ門番にはなれなさそうだが。
俺がどうやってフォローしようか悩んでいると、それを見かねたアルディスがフォローを入れてくれる。
「ヤスさん、大丈夫ですって。こいつらは悪いやつじゃあ無いですから。」
「む。だが…」
「怪我して痛そうにしていたリズを助けるために、わざわざ自分達の回復ポーションを使ったくらいお人好しなんだぜ?悪いことをするような奴はこんなことしねぇよ。」
「………」
アルディスは、俺たちの印象を良くしようと今日起きた出来事を大分ぼかしながら門番に伝える。これには門番も少し困った様子だ。
二人は名前も呼び合う仲のようだし、それなりに付き合いがあるのだろう。
「今度、ごちそうしますから。………もし、それでもダメと言うなら、最終手段だ。この前のこと奥さんに……。」
「だぁ!分かったって。お前ら、全員街に入ってよし!…だが、この街で変なことしたら、アルディス共々出禁にしてやるから、その辺は考えて行動しろよ。アルディスも、この街出禁になりたくなけりゃ、ちゃんと監視しとけよ」
「サンキュー、ヤスさん。そら、入ろうぜ。」
…。
アルディスがこの門番に顔がきいて良かった。もし、この場にアルディスがいなかったら、俺たちは街に入れなかっただろう。アルディス様様だ。
親父は…。ちょっと落ち込んでる…?かな?
まぁ、今日は異世界に来てまだ一日目、いやまだ数時間しか経っていない。だから、良い意味で脳内が不安定だっただろう。そんな親父を責めるのはお門違いな気がしてきた。うん。あとで慰めてあげよう。
「あぁ。悪いなアルディス、変な気遣いさせちまって。」
「あ?…いや、まぁ。あんたらには恩もあるしな。それに、もらった金の分はしっかり働くぜ。さてっと、まぁ色々あったが…。ようこそ!パシズへ。俺はあんたらを歓迎するぜ!街に入って色々やりたいことはあるんだが、取り敢えず先に宿を取っとくことをお勧めするぜ。良い宿は席が埋まるのが早いからな。あ、俺たちの家は当てにするなよ。止めてやりたいのは山々なんだが、流石に狭すぎる。」
まぁ、だろうな。こちらとしても、そこまで厚かましくなるつもりはない。最初から宿を取るつもりだった。だが俺たちは今、この世界で使える金を持っていない。だから先に行くのは魔物の素材を売れるところだ。
「あ、アルディス。先に素材を換金しないか?…持ち金を増やしておきたい。……因みに素材はどこで売れるんだ?」
俺の予想はオーソドックスに冒険者ギルドだ。
「お、そうだな。素材は…基本的には冒険者ギルドだな。まぁ他にも買ってくれるとこはあるが、その話は今度だ。冒険者ギルドが素材を買ってくれる。それだけ覚えときゃ良い。じゃ、ギルドに行くか。俺から離れるなよ。迷子になられると、流石に探すのがめんどい。」
そう言って、アルディス達は道を進んでいく。
俺たちもアルディス達から離れないようにその後を追う。
「あ〜、こんだけ人多いと、スリとかあるかもなぁ。おい、ハルアキ達。何か盗られてまずいものとか持ってるか?」
「いや?何も持って無いな。」
「そうか、じゃあ、人が多いがこのままこの道を行くぞ。」
アルディスはそう言った後に、徐にこちらに近づいてきて俺の耳元で囁いた。
「…変なやつが多いからちゃんとセイナちゃんを守ってやれよ。」
「は!?なんっ」
急でびっくりして、変な反応をしてしまった。
クソ、こいつ。完全にからかってやがる。
って言うかそれは誰情報だ!?どっから仕入れてきた!?…この短時間に俺の家族がそんなことを話すとも思えんし…。
俺がそんなことを考えていると、アルディスがさらにニヤニヤし始める。
……………。
こいつ、カマかけてやがった。クソが。あーカスカスカスカス。
「お前、顔に出過ぎだ。そんな調子だと、多分セイナちゃんも薄々…。」
更にアルディスが耳元で囁いてくる。
「う、うっせぇなぁ!余計なお世話だよ!」
…し、しまった。過剰に反応しすぎた。周囲の目が俺たちのほうに向く。
「っふ、まぁ応援するぜ。頑張れよ。」
アルディスはそう言って俺の肩を叩いた後、ニヤニヤ顔のまま先頭に行ってしまった。
チッ、完全に遊んでやがる。今度、お前の弱みを握ってからかってやる。やられたらやり返すのが俺の流儀なのだ。
というか、アルディスのせいで面倒ごとが増えた。今、周囲の注目を集めたせいで、周りの男連中は聖奈の美貌に目を奪われただろう。そいつらが、変なちょっかいをかけてくる可能性はある。
うん。変な奴らから聖奈や、手を握っているリズを守らないと。
そう思った俺は、先頭のアルディスに声をかけて道の端っこに寄ってもらった。
「おい!アルディス!店の物とか見たいから道の右側に寄ってくれ!」
俺の言葉を聞いて、意図を読み取ったのだろう。ニヤニヤしながらではあるが、ちゃんと道の右側に寄ってくれた。
うん。これで、俺が警戒する範囲が少なくなった。
俺は店側にいる聖奈に声をかける。
「聖奈、なんか面白そうなものがないか見ててくれ。」
「?えぇ、いいけど…。」
そう言って聖奈は、リズと一緒に店のものを見ながら歩く。
後ろから俺の家族が、生暖かい目で見ているのが、手に取るようにわかる。
…異世界に来てから、異常に目線を察知出来るようになった。これも能力なのだろうか?
まぁいい、とりあえず、この後の予定を決めておこう。
「なぁ親父、ギルドで換金した後どうする?」
「ん?んーーーー。特に決めてないが…。宿を無理に取る必要もないしな…。まぁ、強いて言うなら飯か。」
「あ!私、杖見に行きたい!まだ、買えないかもだけど、どれくらいの値段のものなのかも知りたいし!ね!いいでしょう?」
わお、心晴のテンション爆上げだ。
ふむ。武器か…。まぁこの世界で冒険者として生きていくには必要最低限のものだし、この世界の武器のことを知る必要がある以上、見にいく必要があるか…。母さんが作る武器は色んな意味で危険だからな。
お、親父も目がキラキラしてきた。さっきの落ち込み様は見る影もない。
「そうだな!俺も…その、ちゃんとした弓矢を持っていた方がいいだろうしな。母さんが作ったのは、ちょっと特殊すぎて…。」
まぁそうだよな。
俺たちはこの後どこに行くか家族で話し合いながらギルドに向かった。