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六話 聖奈の在り方


 俺が戦闘を終え、親父たちの元へ戻っていると親父たちの方が騒がしいことに気づく。何か言い争っている様子では無いが、気になるので早足で戻る。


「ふぅ、ただいま。いやぁ何とか勝てtグフッ」


「お兄!大丈夫だった!?怪我とかしてない!?」


「ハル!よかったぁ、無事で。もし怪我してるんなら見せて、私が治してあげるから。」


 皆の元へ戻ったと同時に、心晴からタックルを受けてしまう。その後ろからは、聖奈が心配そうな顔をしながら近づいてきて、怪我をしたかどうかを聞かれた。


「いや、体のほうは何ともないよ。なんなら、今一番ダメージを受けた。」


 そう言うと二人は安堵した表情を浮かべた。そしてその後、俺は親父達の様子が気になるのでそちらへ向かった。


「どうしたんだ?何かトラブルか?」


「お、春明戻ったか。いやぁそれがなぁ…」


「だ、誰か!回復薬を持ってねぇか!どんなのでも良い!相場の3倍!いや、言い値を払うから…だから…誰か回復薬を…。」


 さっき魔物から逃げていたときに、先頭を走っていた男が必死な様子で俺たちに頼み込む。


「回復薬はだれも持って無いなぁ。ってかどうしたんだ?」


「それがなぁ。彼が背負っている妹さんが大怪我をしてるらしくてよぉ。」


「っ!大変じゃ無いか!回復薬は無いが、ここには聖奈が居るんだ!なんで治してやらない!」


「いや、何度か説明したんだが『こんな所に神官が居るわけがない』『回復薬を貰えれば、後はこちらで治せるから』って聞かなくてなぁ。どうしたもんかと悩んでたんだ。」


「はぁ…。おい親父、あんた頭が良いことが取り柄だろ?全く…。なぁ、あんた。妹の傷はどれくらいなんだ?」


「……背中をあの狼どもに噛みちぎられた…。結構な深傷だ……ここに回復薬が無いんならこいつはもう…。」


 そう言って、男は涙を流す。周りにいる子供たちも同じように泣いている。

 背中にいる妹さんはとても苦しそうにしていた。


(小さな子が苦しそうにしている姿は見ていられないな…。)


 そう思った俺は聖奈を呼ぶ。


「聖奈、こっちに来てくれ。」


「…うん。」


 近づいてきた聖奈に俺は耳打ちする。


「何か、深傷を一瞬で治癒できる様な回復魔法はあるか?」


「ええ、あるけど…。」


「何か魔法を発動する条件とかは?」


「一応視界に治癒する対象をいれれば、後は詠唱を唱えるだけなんだけど…。何故かあの人、私を警戒して妹さんを視界に入れさせてくれないの。」


「なるほど。じゃあ俺があの男に後ろを向かせるから、聖奈は彼の妹が視界に映ったら治癒してやってくれ。」


 俺はそう言って、男の方に歩いていく。


「あ!!回復薬が一本だけ鞄の中に有った!!」


「!!本当か!!それをくれ!いくらでも払う!」


「あぁ!すぐ使ってやった方がいいだろう!お前、あっち向け!俺が回復薬を妹の背中にかけてやる。」


「そ、それもそうだな!頼む!!」


 そう言って男は向こうを向いた。…え?チョロくね?さっきまでの警戒は何だったんだ…。男が向こうを向いている間に、聖奈が小声で詠唱する。五秒くらい経つと、聖奈の手から綺麗な光の粒が出てきて、妹さんを包んだ。次の瞬間、目を背けたくなるような痛々しい背中の傷が徐々に塞がっていった。…すげぇな回復魔法。


「…ん、んむぅ。あれ?お、お兄ちゃん?」


「リズ!!大丈夫か!?痛くないか!?」


「うん!なんかわからないけどとっても元気なの!!」


「そ、そうか…。降ろしてもいいか?」


「いいよ!」


 そう言って、男は背中におんぶしていた妹を降ろし、妹の背中の傷を確認した。


「こ、これは!?あんなに酷かった背中の傷が全部塞がっている!?!?おい、あんた!一体どんな回復薬を使ったんだ!」


 男が詰め寄ってくる。すると、近くにいた高校生くらいの女の子が後ろからその男の頭を叩いた。ん?この子、さっき小さな子と一緒に転けていた子じゃないか?


「(ガン)アル兄、まずは感謝をするのが先でしょう!!ふぅ、はじめまして。私の名前はミオンと言います。今回は、貴重な回復薬を私たちの妹のために使ってくれてありがとうございました。そ、それと…先程は私を助けてくれてありがとうございました。心の底から感謝します。…ほら、みんなも。」


 ミオンがそういうと、ミオンの後ろから3人の子供が出てきた。


「は、はじめまして。わたしの名前はマオって言います。リズを助けてくれて、ありがとうございまふ。」


 中学生くらいの女の子が出てきて感謝をしてくれたが、噛んだのが恥ずかしかった様でまた、ミオンの後ろに隠れてしまう。次に出てきたのは小学校高学年くらいの男の子だ。


「どうも…はじめまして、俺はクウガって言います…。…今回は有り難うございました。」


 少しぶっきらぼうだ。まぁこれくらいの男の子は難しい時期に突入しかけて居るだろうから、気にしていない。むしろ、俺にもこんな時期があったなぁ、なんて考えていた。すると、次は小学校入りたてくらいのそっくりな女の子が二人出てくる。


「はじめましてなの!わたしの名前はリズって言うの!お兄さん!わたしを助けてくれてありがとう!!」


 リズが元気いっぱいに挨拶と感謝を伝えてくれる。すると、その横でリズの服の裾を持ちながら、もじもじしている女の子が口を開く。


「は、はじめまして……。リオっていいます……。リズを助けてくれて、ありがとう。あ…あと、さっき魔物に襲われたとき、わたしたちを助けてくれて、ありがとう。」


 それを伝え終わると、リオはピューっとミオンの後ろに隠れてしまった。…人見知りさんなのかな?

 後半二人の挨拶にほっこりして居ると、アル兄と呼ばれていた男が口を開いた。


「あー、俺の名はアルディス。一応こいつらの兄だ。そして今回のこと、誠に感謝する!リズのことはもちろん、あんた達がいなかったら俺たちは今頃、あの狼どもに喰われていた。感謝してもしきれねぇ。」


 そう言って、アルディスはその場にドカッとあぐらで座り頭を下げた。


「そして、これは大恩あるあんた達に頼むことじゃねぇのは分かってるが言わせてくれ!リズの傷が一瞬で塞がる様な回復薬だ。相当な値段するに違いない。だが、言い値を払うと言ったのは俺だ!こいつらは関係ない。…金は俺がなんとか稼ぐ。もし、足りない様なら俺を奴隷商人に売ればいい。責任は全て俺が負う。だから、こいつらのには何もしないでくれ!俺がこんなことを言える立場にないのは分かってる。それでも、こいつらにこれ辛い思いはさせたくないんだ。頼む!」

 

 アルディスはそう言いながら、地面に頭を擦り付けた。


(いや、俺たちは別に対価を求めてはないんだけどな。)


 俺はそれを伝えようと思って口を開こうとしたら、リズがアルディスの横に座った。そして、正座をする。


「アル兄はこう言ってるけど、回復薬が必要になったのはわたしのせいなの。だ、だがら…。」


 さっきまであんなに元気だったのに、リズは俺の方を上目遣いで見ながら泣き出してしまった。それを見たアルディスやリズの兄弟が揃って土下座をしようとする。


「ストップ!!土下座なんかするな!いいか、お前ら。まず最初にはっきりさせとくが、俺はお前達から対価をもらうことを望んでいない。わかりやすく言うと、金は要らない。だがら、お前達が無理に働く必要はないし、奴隷になんかなる必要もない。オッケー?」


「し、しかし…」


「はぁ…。ほら、聖奈からも何か言ってやれよ。」


「わかったわ。…私はね、皆を癒すために神様にお祈りしてこの治癒魔法をもらったの。だがら、皆の傷を癒すことに関しては対価を要求しません。ここで対価を要求してしまったら、神様に嘘をついたことになってしまって、能力を取り上げられかねないからね。」


「治癒魔法を貰ったって…。しかし…リズの傷を痕を残すことなく治す魔法を使える神官様がこんなところにいるわけが…」


「アル兄、私さっき見ちゃったんだけど…。アル兄が後ろを向いた時、あのお兄さんが回復薬を取り出していないとこを。そして、その後にお姉さんの手から光の玉が飛んできてリズを包んだところを。……見ちゃった。」


「!?マオ、それは本当か!?」


「うん。多分。」


 アルディスは振り返って他の兄弟にも確認する。すると、兄弟全員からマオと同じような返事が返ってきた。


「………。そうか…。あんたがリズを治してくれたのか。改めて感謝をする、ありがとう。…でもよぉ、なら尚更納得いかねぇ。あんたら神官は何をするにしても金を取る。……何を企んでやがる。」


 おいおい、こっちは妹の傷を治してやったってのにずいぶん警戒するじゃねぇか。どうやってアルディスの警戒をとこうか考えていると、横にいた親父が何かを閃いたようで口を開く。


「まぁそうだな。こっちの素性を明かしてねぇんだ、警戒するにもわかる。だがら俺たちも自己紹介といこうじゃねぇか。俺は、遠藤清。一応、一家の大黒柱をやっている。得意なのは戦略を考えることと弓術だ。はい次」


「は〜い。私は遠藤優実。清さんの妻で、この子達のお母さんをしてます。得意なことは…家事で〜す。」


「母さんの次は私ね。私は、遠藤心晴。魔法を使えるわ……多分。」


 ん?心晴がしゅんとしている。何かあったんだろうか。…まぁいいや。次は俺が自己紹介するか。


「俺は、遠藤春明。このパーティーの唯一の前衛だ。…よろしく。じゃ、最後は聖奈だな。


「ん。私は、佐々木聖奈。治癒魔法を使えます。よろしくお願いします。…あと、皆勘違いしているようだけど、私は神官じゃあないわ。」


「神官じゃねぇだと…。まぁ確かに俺たちの知ってる神官の奴らとは少し…いやだいぶ違うみたいだな。」


 アルディスが少し気になることを言ったので質問してみる。


「なぁ、お前の口ぶりから察するに神官ってのは治癒魔法を使える人たちのことで合ってるか?」


「あ?んなこともしらねぇのかよ。あぁそうだ。それで合ってる。」


「いや悪いな、俺常識ないんだ。…それで普通の神官はどんな奴らなんだ?さっきのお前の言葉からはあまりいい印象を受けないが…。」


「本当に常識がないんだな…。まぁいい。そうだなぁ、少なくとも俺たちの知ってる神官はこんな少人数で街の外には出ないし、何より自分たちのした施しに対して対価を要求する。もっと言えばべらぼうに高い金を要求してくる。特に、今回みたいな高等治癒魔法なんか使った日には金貨の二つ上の白金貨が動きかねん。」


 この世界の貨幣価値が分からないからなんとも言えないが。金貨の二つ上だ、相当な金額なのだろう。


「そうなのか?普通は無償でするもんが施しだとは思うが…。」


「まぁな。だが、人を癒す力を持つのは治癒魔法を使える者達だけだ。そいつらは治癒魔法を使えるってだけで特別だ、身分も生まれも関係ない、偉かろうと貧しかろうと…な。そんな奴らをお偉いさんは神殿で囲って唯一の〈人を癒す力を持つ組織〉を作り上げ、莫大な利益を上げているってわけだ。神官なんて呼んでいるが、まぁそんなもんだ。………だからよ、こんなところに聖奈さんみたいな人がいるのが俺は不思議でたまらないんだ。」


 このアルディスの話を聞いた俺は、何が引っかかるものを感じた。

 しばらく考えて、その引っ掛かりにたどり着いた。


(……待てよ?…………まずいな。今の話を整理すると、大きな権力を持つ人間が神殿に治癒魔法を使える人たちを集めている。平民でも()()()()だ。つまり、そいつは王家級の権力を持っているか、王家そのものが関わっているかだ。もしそいつらに聖奈の能力、そして聖奈の『対価を求めず人を癒す』という目標を知られてみろ、自分たちにとって邪魔者のになる聖奈を絶対に逃しはしないだろう。国家権力を駆使してでも聖奈を捕まえて聖女なんかに祀りあげ、裏で利益を得る為に聖奈を使い潰すに違いない。そしてもし、聖奈がそれを拒むようなら、最悪暗殺されかねない、よくて指名手配だ。)


 …今のは俺の妄想だ。こうなるとは言い切れない。だが、こうなる確率は高いと思う。

 俺は聖奈に楽しい思い出を作ってほしくて異世界にやってきたのだ。こんなつまらなくて辛い思いをするような事に聖奈を巻き込ませてなるものか。


 俺は、そこまで考えて家族の方をみる。心晴を除く三人つまり、親父、母さん、聖奈は皆渋い顔をしていた。恐らく同じ事を考えているんだろう。心晴は心晴で、別のことで悩んでいるようだが。


「そ、うか…。なぁ、アルディス今日のことは誰にも…」


「ふんッ。心配すんなや!俺たちは命の恩人を売るような真似は絶対しないぜ!だがら安心してくれ。さ、こんな話はもうお終いにしよう。変な空気になっちまう。」


「そうだな。」


 俺はそう言いながら親父に目配せをする。


(俺たちが今後平穏に暮らしたいことを考えると、このことは絶対に家族全員で話し合う必要がある。)


 すると、親父は大きく頷いた。

 よし、まぁあと先のことを考えても仕方がない。家族を守るって事になんの変わりもないんだしな。あと、俺たちにはいざとなったら地球に戻るというチート的な逃げ方が出来るんだし、なんの心配もないだろう。


「さ、さっさと街に行こうぜ初めて行く異世かじゃない!初めて訪れる街には毎回ワクワクするなー。」


「お兄さんたち街に行くの?それってパシズ?」


「あぁ、えーとミオンさんだったかな。あぁそうだ、俺たちはとりあえず今日はその街を目指している。」


「あ、じゃあ私たちが案内するよ!私たちの住んでる街だから詳しく案内できるよ!それと呼び捨てでいいよ。お兄さんの方が年上っぽいし。」


「お、そうか。じゃあお願いするよ。皆!出発するよー!」


 俺は皆に出発の号令を出すのだった。


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