閑話 神界での出来事
ちょい短めです。
〜天界の端〜
春明達が下界へ降りたあと、女神は呟いた。
「あ、常識くらいは全員に教えてやっても良かったかの。…まぁよい、もう既にあやつらを降ろしてしもうたしの。後は皆で力を合わせ、上手くやるじゃろうて。」
なんて言っていると、この空間に入るための門に、足音と声が近づいてくる。
神界の端に建てられた建物の廊下を1組の男女が歩いていた。少し先を、金髪の美女が背筋を伸ばして歩き、その少し後ろを赤髪の少年が頭の後ろに手を組みダルそうに歩いていた。
「はぁ〜あ、まじ久しぶりの会議で疲れたっすね〜。最近、下界が平和だからって、会議をしなくなって早100年。でも、だからといって会議をしないわけにもいかない。神ってやつも面倒くせーですねー。」
「まぁ、会議にも色々意味がありますからね。特に、今回は多くの神々と久しぶりに再開出来て、とても有意義な時間を過ごすことが出来ました。……しかし主神様にも困ったものです。いきなり我々を招集したと思えば、『久しぶりじゃの!後は、お主らで好きにやれ!ふむ、3〜4日は休暇とする、存分に語り合うが良いぞ!』なんて言って何処かに行ってしまうのですから。」
「ははっ、声真似似てますね。これなら、主神になり変われるんじゃないスカ?」
「ふ、不敬ですよ!それに普段はあんなのでも、一応神の中の王なのです!様をつけなさい!…はぁ貴方が変な事をしたら、主人の私が罰せられるんですからね。」
「へいへい、すんませんでした。でもキネディア様、最近下界が平和になったせいで、我々の仕事もめっきり減ってしまったじゃ無いですか。…俺たちこれからどうなるんですかね。」
「…平和になったせいって…貴方、最近たるんできてるんじゃない?ちょっと説教するからついてきなさい。」
そう言ってキネディアは目の前にあった門を開ける。すると
「なんだか面白そうな話をしておるな、わしも混ぜてくれんか?」
目の前に、すごいだらしない格好で主神が寝そべっていた。
「「ぶふぅぅぅぅぅ」」
「ティ、ティネアス様。な、何故このような神界の端に。私達に何か御用でしょうか。」
「いやなに、お主らにちと息抜きをさせてやろうと思うて集めたは良いが、途中でわしがおる意味は無いと気づいての。久しぶりに、誰もおらん神界を散歩しておったんじゃ。」
「そうでしたか。でも何故この空間に?ここには異界からの転生者、転移者が一度集められる場所です。ここ最近、その数は減っておりますが、危険な場所です。万が一、御身に何かございましたら…。」
「ん?あぁ、気にせんで良い。転移者に会ったのは久方ぶりじゃったが、とても良い奴らじゃったぞ。」
「!?て、転移者がここにいたんですか??な、何故…。」
「わしは、この神界を作った本人じゃから神界内での出来事ならなんでも把握できる。散歩をしながらお主らの話、…まぁ悩みや愚痴などを聞いておったら、ここの空間に未知の反応があっての。来てみたら、5人ほど転移者が居ったので、相手をしておったんじゃ。」
「転移者が……?転生者ではなく?…最近、下界は平和と聞きます。どこかの国が、勇者召喚をする話などここ100年は聞いていません。…転生者の間違いでは?転生者なら、年に2〜3人は来ますし…。」
「…いや、あやつらは5人とも肉体を保ったままで居った。それに、あやつらの言動から察するに家族で転移してきたのじゃろう。…まぁ怪しさはあるが、皆優しい心の持ち主じゃったし、心配なかろう。」
「それでも!」
「まぁ待て、…それにの、皆は最近平和になった、とよく言うが、真の平和には程遠い。…確かにここ100年間で戦争は殆ど無かった。だが、それだけじゃ。戦争はないが、差別や貧困など、難しい問題はまだ多く残っておる。この難しい問題を先の5人が一つでも減らしてくれる事を願って、送り出したんじゃ。……それに最近、引っかかることもあるしの…。」
「そ、そうですか…そうですね!なんだか私も目が覚めた気がします。この問題をどうしたらいいか今度、他の神とも話してみることにします!ところで、ティネアス様がそれ程期待している5人、余程優秀なのですね。他の世界では、名高い英雄だったのでは?」
「いや、魔力を全く持っておらん、吹けば飛ぶような者どもであったぞ?」
「は!?あ、、いえ、で、ではとても頭の良い…」
「う〜む、1人見所のある奴がおったが他は普通か、ちょっと上くらいじゃったの。」
「え…………………。ま、ま、ま、まさか!!」
キネディアは考える。吹けば飛ぶような者達の集まり、頭脳も飛び抜けて良いわけではない。そのような者達が、魑魅魍魎が跋扈し、色んな国や権力者が理不尽な権力を振り回す世界で生きていけるのか。…いや生きていけるわけがない。と、なると導き出される答えは一つ。
「あ、もしかしてティネアス様直々にスキルや能力を授けました?」
後ろにいた赤髪の少年、ギルディスが気づいたように尋ねる。
「うむ、如何にも。久しぶりの事じゃったから加減がわからんで…」
「ちょおおおおおおっとおおおおおお!!!なぁにやっちゃってくれてんですかあああああああ!!!」
私は、目の前にいるのが主神、と言う事を完全に忘れてティネアス様に詰め寄る。
「ティネアス様が昔能力を授けていた頃と今とじゃ人間の強さは全然違うんです!!!昔ですら能力の調整が下手くそだった貴方様が、同じ感覚で能力を授けたら化け物が出来ちゃうじゃ無いですか!!!!世界のバランスを乱すつもりなんですか!!!ほんと、どう言うつもりなんですかぁぁぁぁぁ!!!一体どんな能力を授けたのか教えてください!!」
「お、落ち着けキネディア。お主が怒ったところを初めてみるぞ…結構こわいんじゃが。」
「あ、す、すみません。んんっ、それで、5人に一体どんな能力をお授けになったのか教えて頂けますか?」
「うむ、まずは…」
私は、ティネアス様から5人の能力を聞いて体の力が抜けた。そしてその場に座り込むようにして言う。
「は、はは、それって昔大活躍した〈五大英雄〉、「軍神マルガス」、「賢母シシリー 」、「大魔導師ダビ」、「初代聖女ユウミ」、「初代勇者ウェイド」と同じような能力じゃないですか…。しかもティネアス様が直々に授けた時点で、私が授けるより3倍は効果が…」
「安心せよ、わしもそこまで阿呆ではない。わしは今までの失敗から学び、5人の能力にレベルを設けることで力を出しにくくしておる。…まぁ最大レベルまで上がってしもうたらその時はその時じゃ。」
「(そ、そんな無責任な…)そ、そうですか。」
そう言って立ち上がる。そして後ろにいるギルディスと目を合わせて、同時に言う。
「「それでは私(僕)は仕事があるのでこれで失礼します。」」
「まぁ待て、逃げようとしても無駄じゃぞ。さて、廊下で話していた愉快な話ををわしの前でもしてくれんか。」
その後、ティネアス様からのお叱りはなかったが、下界の様子を直接見てくるという謎の仕事を増やされた。