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十九話 アルディス家の事情


 サーシャさんに弟子入りした俺は取り敢えず、今後の修行というか訓練メニューを聞いた。


「あの、サーシ……師匠、俺は何をしたらいいですか?」


「ん…そうさね…。…ま、それは明日また伝えるよ。取り敢えず今日は、庭先にいる子らと遊ぶことを修行とするさ。」


「分かりました。では、また明日こちらに伺います。」


 俺はそう言い残して、聖奈達が駆けていった庭先に向かった。

 

 

 屋敷の敷地に入った時点で庭の広さは大体把握していたが、改めて見るととても大きく、豪邸に見合うだけの広さをその庭は持っていた。


 その広い庭には小学生〜幼稚園児くらいの子供達がパッと見、十人ともう少しいた。

 そして、その中心では丁度聖奈と心晴がその子供達に質問攻めにされているところだった。


(出会って数分なのにすごい人気ぶりだな)


 俺がそんな人気者の二人をちょっと離れたところから見ていると、俺に気づいたアルディスとミオンが近づいてきた。


「よう、ハルアキ。この屋敷にお前らが入ってきた時はどうしたのかと思ったが、まさか昨日の今日で本当に遊びに来るとはな」


「まぁ、今日リズ達と遊びたいと言い出したのは、あそこに居る聖奈だがな。」


 俺達が話していると、それに気づいた子供達が寄ってるくる。


「アルディスもこっちであそぼー」

「ミオンもいる!」

「あ!新しいお兄ちゃんもいるよ!」

「みんなであそぼーよー」


 俺達は、寄ってきた子供達に手を引かれて聖奈達のいる方へ、引っ張っていかれた。

 その様子を見ていた聖奈が、近くに来た俺に先程の事を聞いてくる。


「さっきサーシャさんに呼び止められてたけど、何かあったの?」


「あー、まぁざっくり言うと…」


 俺はここで溜めて、あとは一息に言い放つ。


「俺、サーシャさんに弟子入りしたから。」




「え」

「え」


「「えぇぇええぇぇええぇぇぇぇぇえぇえ!?!?」」


 アルディスとミオンの叫び声に俺や聖奈、それに子供達もビックリしていた。


 …え?何?何かビックリする要素あった?


「サーシャさんが弟子を取っただと!?」


「ま、まぁ、俺が頼んだんだけどな」


「それでもだ!ちょっと俺、確認してくる」

 

 そう言って、アルディスは猛ダッシュでサーシャさんの所に向かっていった。

 そんなアルディスを「どうしたんだ?あいつ?」と思いながら見ていたら、横にいたミオンが説明してくれた。


「アル兄は昔からサーシャさんに剣術を教わりたいって言ってたんだけど、ずっと門前払いを食らってるんだ。…アハハ。」


 なるほど。

 自分が昔からお願いしてたのに断られていた事を、後から来た人間があっさり認められたら気も動転するか。

 まぁ、それでも俺に嫉妬して子供達の前で喧嘩になるよりは良かったか…。


「そう言うことか…。………でもその事に関しては俺達はどうこうできないな。どんな理由でサーシャさんがアルディスの弟子入りを断っているのか知らんし。それより…」


 俺達の周りでポカンとしている子供達に声をかける。


「アルディスはサーシャさんの所に行っだけど、戻ってくるまでは俺達で遊ぼう!」


 俺がそう言うと、子供達は急に元気になる。


「うん!」

「何するー?」

「さっきまではお姉ちゃん達に色んなこと聞いたから….」

「今度はお兄ちゃんね!」


「よしきた!何でも聞いてくれ」


 こうして、アルディスが戻ってくるまでの時間、俺は子供達に自己紹介をしたり、子供達の質問に答えたりして過ごした。

 その間、俺の膝の上はリズに「ハル兄の膝の上は譲らない。ガルルル」って感じで占拠されていた。…懐かれたもんだな…。

 

 しばらくそうやって過ごしていると、奥の方からタンコブをつけられたアルディスが燃え尽きた様子で戻ってくる。


「えっと…。その様子だと、アル兄は今日も弟子入りを断られたの?」


「あぁ。いい加減にしろって、拳骨も貰ったよ。はぁ……俺は端っこでお前らの様子を見てるから…」


 アルディスはそう言って、庭の端のベンチへ向かっていった。

 それを心配そうに見ていたリオはアルディスに着いていく。


(この子らの相手が終わったら、二人の事も気にかけてやろう。)

                   

「アルディスは戻って来たけど、ちょっと元気がないから少し休むって。…それで皆んなはどんな遊びが好きなんだ?」

「鬼ごっこ!」

「かくれんぼかなー」


 他の子に聞いても、鬼ごっこか隠れんぼという答えしか返ってこなかった。

 まぁ、この敷地内でできる遊びは限られてるからその二種類しか出てこないのは仕方がないのかな。…もし、他に遊びを知らないようなら、地球の遊びや遊び道具を教えてやろう。


「そうか…じゃあまずは、鬼ごっこからするか!心晴…あそこのアホっぽい顔をしているお姉ちゃんが鬼で始めるぞ!よし、逃げろ!」


「は!?誰がアホっぽい顔だ!!」


 即興の兄妹漫才をした後(俺はそう思っている)、俺は本当に鬼の様な形相をした心晴に追いかけられるのだった。

 そんな心晴からしばらく逃げていると、先に心晴のスタミナが切れた様で、息も絶え絶えの状態になった。それを面白がった、男の子が不用意に心晴に近づく。


「心晴お姉ちゃんもう疲れたの〜?(笑)」


 それを好機と見た心晴は最後の力を使って、その子にタッチして鬼を渡す。

 そして、「ちょ……つ、疲れたから、アルディスの、いる、ベンチで休む」そう言って端に行ってしまった。


 よし、これで『春明君四捨五入したら子供説』の仕返しが出来たな。


 幼馴染の「似た者兄妹」という呟きを聞かなかった事にして、俺はかけっこを楽しんだ。


 一時間ほど、子供達とタッチしたりされたりしながら駆け回っていると、皆んな疲れて来た様で、最初程の元気がなくなって来た。

 

 最初からのテンションと変わらず、ずっと元気なリズにタッチされ「タッチ!次はハル兄の鬼ね!」と言われた俺は鬼ごっこをやめる事にした。


「うがぁーお兄ちゃんの負けだー(棒)」


「やったぁ勝った!」

「イェーイ」

「疲れたぁ」

「でも楽しかったね!」


「…それで?今度は何をするの?」


 子供達ほど疲れた様子はないが、それでもちょっと息の上がっている聖奈が聞いてきた。


「休憩!皆んなも走り回って疲れたろうし、喉も渇いただろ?だから、三十分休憩にしよう。」


「「「「はーい」」」」 


 元気な返事をした子供達は皆んな、屋敷の中に戻っていった。

 俺はそれを見送って、アルディス達の休んでいる庭の端のベンチに歩いていった。


 ベンチでは、自分の膝にリオを乗せて座っているアルディスとベンチの半分以上を占領して寝っ転がっている心晴がいた。


 ベンチには座れそうに無かったので、俺はアルディスの近くの地面にドカッと座った。


 アルディスのそばに来たはいいが、なんて声をかけたらいいか分からず、しばらく俺達の間に沈黙が流れる。

 そんな俺の思いを知ってか知らずか、アルディスの方から口を開いた。


「…俺は昔から、冒険者だった両親に憧れてたんだ。俺達家族には優しく、それでいて多くの人間を守る為に剣を取る。…まぁ、両親の場合は多少、戦闘狂も入っていた様だが。それでも、自分のやりたい事を貫いていた両親に憧れていた。」


 なんか、重めの雰囲気の話だな。

 そんな事を思いつつ、俺はアルディスの話を静かに聴く。


「そんな二人のことを親失格だという人間もいるかもしれない。……二人とも俺達を置いて逝ってしまったんだから…。」


 アルディスはリオの頭を撫でながら空を見上げて続けた。


「あれは七年前、俺が十四歳の時だ。母が丁度リズとリオの二人を産んだ一ヶ月後のことだった。両親は、俺に妹達の世話を任せて魔物を狩りにいったんだ。母は『リハビリだから心配すんな。そんなことよりミオン達のことは任せたぞ』そう言って父と一緒に出かけていった。…それが、最後の言葉だった。」


「俺が、両親が死んだと知らされたのは二人が出かけていった三日後の事だった。二人の最期は、久しぶりの狩りでしくじった母を父が庇ってそのまま…ってやつだ。…だが、そんな二人の死を悲しむ時間は俺には無かった。当時はまだ妹達が幼かったからな。死んでしまった両親の代わりに長兄の俺がしっかりしないと、と思ったよ。それからは、うちの親の幼馴染だった〈メイガ亭〉の大将や〈ガル武器・防具屋〉のガルジ、ガルム兄弟。それに、二人の剣の師匠だったサーシャさんのお世話になった。」


 そうか…やけにガルムやサーシャさんがアルディス達の事を気にしていたが、アルディスの親の幼馴染と師匠だったとは。

 死んだ幼馴染や弟子の息子達を助けた俺達が、あそこまで感謝されるのも頷ける。


「皆んなの助けもあって、俺達は貧し暮らしはしてはない。けど、妹達にはもっといい暮らしをして欲しいのと、皆んなへ感謝の気持ちを返す為に、もっと稼げるようになりたいんだ。だから、サーシャさんに剣を教えてもらって強くなりたい。そして、冒険者ランクをあげて稼いで……両親のような強い冒険者になりたい。それが、俺の今の夢だ。」


 アルディスはその後、「って俺、何話してんだろうな。忘れてくれ。」そう言って笑った。


 俺達は出会って日も浅く、互いの事を殆んど知らない。家族の事情も今知ったぐらいの関係だ。

 それでも、俺はアルディスの話を聞いて、力になりたいと強く思った。

 

 しかし、俺が一体何をしてあげられるだろうか。


「…何で、サーシャさんはお前の弟子入りを断ってるんだ?」


「それは、『アルディス、お前にはまだ養っていくべき兄妹がいるんだろ!?そんな人間に剣術は教えられないね。力を付けて調子に乗ったあんたが、あっさりと死ぬ未来が私の目にはしっかりと映ってるんだよ!』だってよ。」


(ふむ。サーシャさんの言っている事も分からんではないが、何か引っかかるな…。)


 ひっかかりを覚えた俺は、サーシャさんがアルディスの弟子入りを断っているのは、本当は別の理由が有るのではないかと思って、あれこれ考えた。

 しかし、俺一人の馬鹿な頭で考えても答えが出るはずもなかった。


(まぁ、明日サーシャさんに直接聞けばいいか)


「ま、俺に任せとけって」


 俺はそんな無責任な発言をしてアルディス達の元を離れ、庭に戻ってくる。


 庭には既に、子どもが集合して次に何をして遊ぶか話していた。


「また鬼ごっこがいいなー」

「でも疲れたし、今度はかくれんぼがいいな」


 まだまだ元気の有り余っている子は鬼ごっこを、ちょっと疲れていたり他の事をして遊びたい子はかくれんぼをしたがっていた。


「じゃあ、今度はかくれんぼをしようか。庭は…隠れるところが少ないから、屋敷の中もありにしよう。」


「じゃあお兄ちゃん一緒に隠れよーよ」

「僕と一緒に探すの!」


 今度は、俺達と一緒に隠れるか、鬼になって一緒に探すかを話し合っていた。

 そんな子供達に聖奈が提案する。


「じゃあ、私が一緒に隠れるわ。お兄ちゃんは鬼で私達を探して。」


 そう言って、隠れる側の子ども達を集めて屋敷の中に入っていった。


「あ、寝てる子達も居るっぽいから、あんまり騒ぐなよー」


 聖奈は振り返り、サムズアップした。


 そして、鬼になった俺たちは外で五分程待ってから屋敷の中に入っていった。


 なんか文字数少ないから色々書いてたら、子供との遊びがメインみたいになってしまった…

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