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君と歩いた、ぼくらの怪談 第1部  作者: tempp
第5章 俺の日常と梅雨の幽霊

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梅雨の終わり

僕が起きたときには、パーティはもう始まっていた。

何故か演歌がかかっていた。


「あ、ボッチーやっとおきた、先に始めてんぜ」


パーティ会場は藤友君の部屋。僕は藤友君のベッドで寝ていた。

部屋がキラキラしたリボンで奇麗に飾り付けられている。

藤友君の部屋は何もないから、飾り付けがすごく目立つ。

最初に僕が藤友君の部屋に入ったときに驚いたけど、藤友君はミニマリストだ。藤友君の部屋には、最低限の服と教科書類と文具、パッド、最低限の調理道具、それから何冊かの本くらいしかない。本も読んだら売っているっぽい。調味料だけは結構あったけど。

だから、飾り付けられた部屋には飾りしかなくて、パーティルームみたいだ。


狭いからか、アイさんはお饅頭形態で風呂敷に包まれていた。

でも風呂敷にもリボンがたくさんまかれていた。

ぽよぽよしててかわいい。


机の上にはローストビーフとか、おいしそうなお惣菜がたくさんならんでいる。

ローストビーフは藤友君の手作りで、あとは買ってきたものらしい。

藤友君はもっといろいろ作るつもりだったんだけどな、って言っていたけど、ローストビーフ作れるだけですごすぎるよね。

それからルバーブケーキもあった。予約して買ってきてくれたみたい。

あとでお金払わなくっちゃ。


「東矢君ありがとー♪」


ケーキをとろうとしたら、坂崎さんにとられてしまった。あれ?


外は激しい雨が叩きつけるように降っていて、時折稲光もまじる。

梅雨の最後の大雨。これが上がると、アイさんは消えてしまうのか。

ふとアイさんを見ると、ナナオさんと話をしている。

あれ? なんか、違和感?

ナナオさんがアイさんをぷよぷよつっつく。

アイさんの上の方に口ができてふふふと笑っている。

ナナオさんがアイさんの上の方にできた口にポッキーを突っ込む。

アイさんはお返しにナナオさんの口に触手でポッキーを突っ込む。

二人でキャーキャー言っている。


「アイちゃん末井と仲いいよな」


「アイさんはナナオさんが好きだから。あ、でも藤友君も好きだよ?」


「そうだな」


「結局あの後どうなったの?」


「消防車来る前に逃げた。お前はアイちゃんに連れて帰ってもらった。俺は予約したケーキ受け取りにいった帰りに荷物たくさんもった末井につかまって、部屋を改造されて今。それから」


僕がキラキラした部屋をもう一度見渡していると、小さな声が聞こえた。


「お前を助けられてよかった」


藤友君が笑っているのって初めて見た気がする。

ほんとうに微かにだけど。


「それからジンっていう奴とタイっていう奴のことは気にするな。タイがうまくやるだろう、お前はかかわらないほうがいいと思う」


「ありがとう。……タツさんはやっぱり死んじゃったんだね」


「タツって奴とは親しかったのか?」


「そんなに親しいわけじゃないけど、何回か話したから悲しい」


アイさんから触手がふよふよのびて、頭をさわさわする。

慰めてくれてるのかな。


「タツさんには、必要だったみたいです。だから、東矢が気にしなくていいと思います」


「アイさん、2時間くらいの間でだいぶんかわったね」


「男子、三日会わざれば刮目して見よ、という奴です、えへへ」


「アイちゃん男子なのかよ?」


ナナオさんの突っ込みが入る。


「女子なんでしょうか?」


ボケなのかなんだかわからない返事。


その後、朝まで人生ゲームしたり、モノポリーしたり、アイさんが口を増やして謎腹話術を始めたり、それからだらだらお話したりした。

だいぶんみんな眠くなったころ、朝日がうっすらカーテンから差し込んできたのと同時に、アイさんが少しずつキラキラしてきた。


「ん、アイちゃんそろそろお別れか、なんか、寂しいな」


ナナオさんが眠そうな目をこする。


「ナナオさん、ありがとうございました。とても楽しかった。ナナオさんにあえてよかったです」


「アイちゃん、聞きたいことがある。俺の不運を持ってってくれてたよな、これ、根本的に取り除くことって無理なのか」


「ハルくんの呪いは、ハルくんに深く混ざっているから、物理的にバラバラ、というレベルではなくて粒子レベルに分解しないと分離は無理です。私はハルくんから不運が漏れだしたものを集めて運んだだけなのです」


「そっか、バラバラでも困るな」


藤友君は難しい顔をする。まあ、バラバラになるとそもそも死んじゃうもんね。


「アイさん、僕も楽しかった。ありがと」


「さっきから、東矢が薄くなるのを防ごうと思って試しているのですが、できませんでした。残念です」


うん、僕結構存在感薄いよね。知ってる。なんか切ない。


「ハルくんはお部屋も貸してもらってありがとうございました。そのお礼も兼ねて、ちょっとだけサポートプログラムを残したいと思います。いいでしょうか」


サポート?


「俺自身に干渉しないものであればかまわない。むしろありがたい」


「ではパッドに残します。役に立つかどうかはわかりません。でも、役に立つなら、アンリとナナオさんと、東矢のためにも使ってもらえると嬉しいです。こんなふうにみんなの役に立ちたいって思えるってことは、私は人になれたのでしょうか」


そう話している間に、アイさんは輝きをまして、どんどん外縁があやふやになっていった。

光の粒子がキラキラと空中に丸くとどまっている状態。

そして朝日がさっと部屋に差し込んだ瞬間、アイさんの残り香はふっと吹き飛ばされて消えてなくなった。

最後に小さく、みんな大好き、という声が聞こえた気がした。





なお、坂崎さんはずっと寝ていた。





梅雨明けの朝。実に見事にカラっと晴れた。

雲1つない鮮やかな晴天。

昨日は朝まで騒いで、ナナオさんは最後に泣いて、それでまた3人で乾杯して、いつのまにか藤友君の部屋で寝ていた。

お昼過ぎに起きた時、坂崎さんは既にいなかった。僕は寝ていたナナオさんを起こすと、ナナオさんはふぁぁと大きなあくびをして、帰って寝るといって出ていった。


藤友君は椅子に座ってパッドを開いていた。


「東矢、これだよな、サポートプログラム」


藤友君のパッドに見慣れないアイコンがあった。

プログラム名は AI と書いてある。

クリックする。


「Hallo! World!」


とだけ表示されて、お名前を入力してください、と出た。

藤友君は、「藤友晴希」と入力する。

そうすると、小さなウィンドウがポップアップされた。


「はじめまして、藤友晴希」

次章は第6章【小さいさんの贈り物】を予定しています。

ストックがだいぶん減ったので、1カ月ほど連載をお休みします。

ですので、5章までで第1部完とします。

第1部は東矢と藤友が友達になったまでEND。


次回の連載は12/15から第2部の連載を予定しています。

第2部は、1年生の終わり、運命が斜陽に入ることが見え始めたところくらいまでかな。

今後の予定は、

 外伝:叫ぶ家と憂鬱な殺人鬼(仮 館ホラー

   藤友君単独の館の呪いものです。

 6章:【小さいさんの贈り物】ゆるふわ暗黒童話回

   奇妙なものが新谷坂に蔓延。

 7章:夏休み回、冒険譚寄り回

   東矢君ソロキャン、他。

 8章:グウェイが登場するグルメ+恋愛回

   ライオ・デル・ソルで短期バイト。

 外伝:4章の『外骨格』のその後

   外骨格の探し物。

途中で短編等はアップする可能性はあります。

今後とも、お読みいただけると嬉しいです。


12/8追記:

12/16から怪談のシリーズを再開する予定だったのだけど、ちょっと間に合ってないのでクリスマスくらいまで延期するかもしれません。

外伝【さけぶ家と憂鬱な殺人鬼】は15万字を超えるので校正がまにあわなさそうです。

その変わり、というかまにあってもまにあわなくても、

12/16前後から「傍らに人無きが若し(仮」というタイトルで歴史ものの連載をする予定です。

始皇帝を暗殺しに行く荊軻の話です。

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