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君と歩いた、ぼくらの怪談 第1部  作者: tempp
第5章 俺の日常と梅雨の幽霊

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俺とアイちゃん

俺が聞いた化け物の殺し屋のうわさ。


その殺し屋は、1日の間だけなんでも言うことを聞いてくれて、誰でも殺してくれる。

普通の殺し屋みたいに金を払わなくていいし、証拠も残さない。

連絡方法は、街BBSでスレッドを見つけてメールを飛ばす。

待ち合わせ場所を決めると殺し屋が現れる。


俺はマサヒコさんがいなくなる前の日に、マールムの長崎のやつ、死んでくんないかな、っていってたのを聞いた。こいつを消せば、マサヒコさんは戻ってくんのかな。

なんとなく、そう思った。俺はバカだから。


俺は必死で街BBSを探した。

バカな俺がどんなにマサヒコさんを探しても見つからなかったから。

他に思いつかなかったし、他にどうしていいかわかんなかったから。藁にも縋る思いというやつだ。

そしてその朝、寝起きに布団の中で街BBSをめくっていると、スレッドはあっさり見つかった。



あなたのお願いかなえまーす♡


1 名前: アンリ♪ 投稿日: 06/10(月) 16:57:56 ID:kgaw93Tw


あなたのお願い、できる範囲で何でもかなえるよ!

お願いある人は内容を書いて、メールちょうだい♪


時間は平日は放課後から23時くらいまで

お休みの日は朝から23時くらいまでです

場所は23時に新谷坂に帰ってこられる範囲でよろしく♪



これ……なのか?

なんか思ってたのとだいぶん違ぇな。

でも、これっていう予感がするな。マサヒコさんが導いてくれてんのかもしんねぇ。


俺はスレの1のアドレスに「願いがあるから連絡したい」とだけメールした。

打ち込んで送信してすぐに携帯が鳴ってビビる。

登録されていない電話番号。

なんだ? と思って出ると、わたしはアンリだよ、連絡ありがとう、という女の声が聞こえた。


ちょっとまて、なんなんだ? お前誰だ?

アンリ? そういえば今のスレのスレ主はアンリって書いてたな。でも電話番号なんて送ってないぞ?

混乱しながら話すと、アンリは今日なら願いが聞けると言った。

俺は半信半疑の小さな声で返事を返す。


「願いを聞くスレのやつか? 実は殺したい奴がいる」


「わかった! じゃあそこでまってて♪」


そういって、電話は唐突に切れた。

そこ? そこってどこだ? ここか? ここは俺の部屋だぞ? 意味がわかんねぇ。

混乱してるとピンポンと玄関から音がする。ドアを開けると、ザァザァと降る雨の中で、見たこともねぇ女が2人立っていた。

誰だこいつら?

ニヤ高の制服着た女と、制服の女に傘を差し掛けてる三つ編みで眼鏡かけた、細くてダサい女。

部屋でも間違えたのかと思ってたら制服の女が突然俺に話しかけた。


「連絡ありがと♪ それでそのマールムの長崎って人を殺せばいいのね?」


さっきの電話と同じ声!?

ちょっとまて、電話切れてからまだ3分も経ってない。お前らどっからきた? それにメールでもさっきの電話でも場所は言ってねえ。どうやってこいつら、ここに来た。

それに俺は電話でも殺したい奴がいる、としか言ってねぇ。『マールムの長崎』なんて名前、どっから出た?

本当に、化け物の殺し屋なのか?


「化け物ってひどい! それにお願い聞いてくれるのはこっちのアイちゃんだよっ。ぷんぷん」


「おはようございます。よろしくお願いしますね」


わけのわからねぇことをしゃべる制服の女の後ろから、地味な女が顔を出した。

こいつが殺し屋? ざけんな。こんなしょぼい女なら弱ぇ俺でも倒せらぁ。マールムの長崎ってやつは1回だけチラっとだけ見たことがある。パッと見でもタイさんと同じくらいでかい。敵うわけねぇ。


「アイちゃんは強いから大丈夫だよ?」


それよりこっちの制服の女、なんで俺がひとこともしゃべってねぇのに考えてることがわかるんだ? 意味がわからねぇ。得体が知れねぇ。


「もう! とにかくいこ? 学校遅刻しちゃうじゃない」


制服の女はくるっと振り向いてすたすたと歩き出した。仕方なく靴を履いてついてく。傘をさして鍵をかけた時には女どもはさっさと先に進んでいた。あわてて走って追いかける。どこにいこうってんだ?


「その長崎という人はどんな人なんですか?」


地味な女が後を歩く俺を振り返りながら話しかけてくる。


「よくわかんねぇ、でも、多分、死んだほうがいいんだ」


「そうなんですか。わからなくてもそんなことがあるんですね」


理由は聞かねぇのか……?

わけのわからねぇ奴らだな。


5分ほど歩いて、小綺麗なマンションにたどり着く。

エレベーターを3階まで上がって304号室の前。


「アイちゃん、ドア開けて?」


「わかりました」


地味な女がドアノブに手をかけると、カチリ、という音がしてドアが開いた。

なんだ? 鍵かけてねえのか? 無用心だな。

……開けた瞬間から酒臭ぇ。


酒瓶やら服やらが散らかった室内に、2人の女は靴を脱いで上がり込む。

そして、奥の部屋で半裸の長崎がいびきをかいて寝てた。なんだこれ、何がどうなってやがんだ? ここは長崎の部屋なのか? なんで?


地味な女が進み出て長崎の頭の上に手を置くと、女の手がぶわっと広がって長崎の頭を包んで、そのまま長崎の全身に広がっていった。

なんだこれ? 夢でも見てんのか? 餃子の皮につつんでるみたいだな。

皮の表面がぼこぼこ動く。

しばらくすると皮が縮んで、何もなくなった。何も。空っぽの、布団があるだけ。

あれ、長崎のやつはどこにいった?


???


「長崎は殺しましたが、これでいいでしようか」


長崎を殺した? 長崎はどこにいったんだ?

何いってる?


「アイちゃん、だしたげて」


地味な女は再び餃子の皮を布団に広げて、皮を閉じたときには、布団の上にすげぇ苦しそうな顔をした長崎が現れた。


ヒッ 死 死んでる!?


「死んでるよ?」


制服の女が変な顔、不思議そうな顔で俺をみる。


「体はこのまま残しておいたほうがいいでしようか」


俺はギョッとして地味な女を見る。

女、死体、女、死体、女、この死体は、この女から、出てき、た。


ほっ 本当にッ!?

こ こいつが、長崎を……殺ったっていうのか???

こいつが化け物の殺し屋ッ!!?


「もうー、さっきからそういってるのにー」


俺も……殺される?


「なんでみんな殺されるとかいうかな。アイちゃんはみんなのお願いを叶えてあげてるのにね?」


「あなたは今日の依頼者さんです。他にも何かお願いがあれば言ってください。もし、殺されたいならお手伝いします」


「ねェッ! 願いなんてもうねぇよ! 死にたくねぇ!」


「そうですか」


地味な化け物は、特に残念そうでも嬉しそうでもなくそう言った。


「あっそろそろ遅刻しちゃう! じゃあまたねっ!」


制服の化け物はそう言って走って部屋から出て行った。

地味な化け物も部屋から出ていこうとする。

俺、俺はッ どっどうしたらいいッ!?


「まっ待てっ! も、もしもう一度お前に会いたい場合は、どどど、どうしたら、いいんだ?」


俺にはこれ、どうしていいかわかんねぇ。

長崎が死んで、死んで?

マサヒコさんは見つかるの、か?


「私は今日は新谷坂町を散歩しています。何かお願いができたら、声をかけてください。あ、そうだ、アンリさん急いでいたから説明していませんでしたが、お願いは今日の23時までに新谷坂町に戻れる範囲のものでお願いします。それでは失礼します」


地味なほうの化け物も部屋を出て行った。

初めて入った部屋の中には俺と、長崎の死体。

これ、どうしたら、いいんだ?

わかんねぇ、全然わかんねぇよ。

マサヒコさん、俺、どうしたらいいんだ?


トゥルートゥットゥットゥー


突然音楽が鳴り響く。マサヒコさんが好きだった曲。

マサヒコさんが呼んでんのかな。

急いで音の出所を探すと長崎の尻ポケットに入っていた携帯だった。

取り出したときにはちょうど電話は切れたところだったが、ぎりぎりで電話を取ったせいか、そのまま携帯の中身を見れた。

なんとなく気になって、SNSを開く。

知らない名前が続く中で、長崎からマサヒコさんにあてたメッセージが1通だけあった。


『てめぇマサヒコふざけんなよ、んなことなら組織にばらすぞ』


他の履歴はなかった。うちの組織とマールムはもめてるから、万一のために消したのかもしれない。

俺もマサヒコさんにやばいメールは残すなってさんざん言われたからな。

やっぱり……マサヒコさんがいなくなったのはマールムがなんかしたのかな。

他に思い浮かばねぇ。

組織にばらすってそういうことだよな?

そうに違いねぇ。

……そうだよな!?

やっぱりマサヒコさんがいないのはマールムのせいだよな? やっぱり。

そんなら許せねぇ、許せねぇよ。

畜生、マールムッ、よくもマサヒコさんを!

マールムッ、ぜってぇぶっ潰してやる。

でも、長崎は殺した。それからどうしたらいいんだ? わかんねぇ。


っと、それにこの長崎の死体、どうしたらいいんだ?

ほっといていいのか? わかんねえ。

とりあえず、長崎の死体を蹴飛ばした。

動かねぇ、やっぱり、死んでる、んだよな……?

死体見るの、初めてだ。死んでんのかな。

うーん、俺頭わりぃしな、どうしたらいいんだ?

そういえばタイの兄貴は困ったら何でも言えっていってたよな。

俺、珍しくさえてるかな。


俺は携帯を取り出して、タイの兄貴に電話した。

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