第一話
どこまでも続いていそうな綺麗な海、陸には草木が生い茂る山。とても荒野が周りにあるとは思えない。そんな所にあるのが、貿易都市アルフォード。数年前まではただの港だったが、近くにある鉱山からは、良質の鉄が取れることがわかったため、ここ数年で目覚しい発展を遂げた。
街の港には、毎日船が出入りし、商店街はいつでもにぎわっている。
しかし、それだけではない。
この街が急成長しているのは、この街を縄張りにしているギャングやマフィアの恩恵が在ればこそだ。港での不正な武器の密売。違法な薬物の販売。これが街の進化を加速させている。
しかし、それを裁く者もいるのだ。正規連邦軍{ジャッジフォース}この世界で幅広く活動している軍で、圧倒的な戦力で敵対勢力を押さえつける、市民には心強い味方だ。
だが、この不正で進化を遂げている街では正規軍の力は弱く、ほとんどの犯罪は見過ごされている。そんな街で暮らす市民は、例え目の前で犯罪が起きても見てみぬ振りをする。
関われば自分が死ぬ。だから見ていない振りをする。この街ではそれが常識だ。
それゆえに、一度常識が崩れたとき、この街に逃げ場など無い。
常に人で賑わう商店街。アルフォードでは別に珍しくない。
いつもと変わらない日常、その日常にすこし変化がある。商店街の裏路地から銃声が聞こえるからだ。裏路地には20歳くらいの青年が荒い息をついて走っている。
「なんで、なんでこんなことに!」
青年は右肩を押さえながらうめいた。青年の右肩からは真っ赤な血が流れ出ている。
「いたぞ!」
「くそ!」
青年の背後には6人くらいの黒いスーツを着た男達が追ってくる。男達の手には拳銃が握られていた。
「逃がすな!確実に殺せ!」
男達のリーダーらしき男が、指示をだすと、男達は拳銃を発砲した。
「っ痛!」
男達の放った弾のどれかが、青年の足を貫いた。
青年はその場に崩れ落ちた。
「ぐっ!」
足の痛みをこらえるのに精一杯な青年に、あざ笑うように、男達は近づいてくる。
逃げなければ殺される!その思いが青年を動かした。青年は足を引きずりながら、
近くの木箱の陰に転がり込んだ。その時、もうすでに、青年の視界はぼやけていた。
出血がひどいせいだろうか?どのみちもう動けない・・・
「なんで、なんでこんなことに!」
今から10分前、商店街にある店で働いている青年、ロイ・ハードンは買出しに出かけた。
その日、商店街はとても混雑していて、ロイは仕方なく、裏路地を使ったわけだが、
運悪く、ギャングの密売現場を見てしまい、追われるはめになった。
「裏路地なんか使わなきゃ良かった」
ロイはそうつぶやいたが、もう遅い。男達は目の前に来ていた。
「運がなかったと思いな」
男の一人がつぶやくと、拳銃をロイに向けた。殺される!そう思ったとき、目の前の男が横に吹き飛んだ。
「・・え?」
ロイは目を疑った。突然、壁が割れて、装甲車がつっこんできたのだ!