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『O-286. 萩-マラトンの戦い劇(主役は小早川ミルティ)』  作者: 誘凪追々(いざなぎおいおい)
幕の二:O-284. 二年目の停滞
31/115

2-③ 訓練兵たち:その1(地図あり)



挿絵(By みてみん)


<O-283年><夏><山口-アテナイ市のミルティアデス邸にて>

<ミルティアデス(小早川隆景)の妻ヘゲシピュレ(問田大方)の父親であるオロロス(最上義光)王が、お忍びで陸奥-トラキア地方から山口-アテナイ市へやって来る。>


    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「キー! 何ゆえ、そのように公職にもつかず、毎日毎日ブラブラプラプラとしておられるのですかー、あなたはー!(ガチャーン!)」

    主役-ミルティアデス(小早川隆景)

「止めよ! 皿を割るでない! 仕方なかろう、公職はなろうと思ってなれるものでもないのだ。ここでは選挙や抽選でたまたま当たるものなのだからな。」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「キー! そんな言い訳、聞きたくない! わたくしは無職の男の嫁になった訳では無いのだからー!(ガチャーン!)」

    主役-ミルティアデス(小早川隆景)

「だから、皿に罪は無いと、何度言えば!」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「キー! でしたら、あなたのその頭を、割って差し上げてよろしいので!?」

    主役-ミルティアデス(小早川隆景)

「殺すというのか! この我が輩を!」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「だから、あなたの身代わりを殺しているんでしょう! キー!(ガチャーン!)」


    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「・・・、ずいぶん騒がしい家だべな。おい、声さかけれ。」

    王の家来

「へぇ。(スー)、もすもーす! ミルティアデス殿とヘゲシピュレ様さ会いに来たー! 誰か出て来ねかー?」


    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「誰だ、こげな時に? ・・・はっ、おとさん? なして、こげな所さ?」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「おらぁ、お忍びでよ、おめぇらに会いに来たんだ。」


<O-283年><夏><山口-アテナイ市の集広場アゴラにて>


    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「おとさん、ここが集広場アゴラだ。ここが山口-アテナイの心臓と言われとる場所だ。市民総出の民会は、ここで開催されんだ。だいたい十日ごとに一回だ。」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「そうだべか、普段は色んな店が立ち並んでんだな。色んな人が居て、色んな物があって、ずいぶん賑やかだ。」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「んだ。でもな、倭-ギリシャ人は奥さんや娘っ子が出歩くのを嫌うべからな。買い物も男か奴隷の仕事なんだ。おらもミルティアデス殿の奥さんだもんで、あんま出歩くなて言われてんだ。」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「おお、野原さ駆け回るんが好きだったおめが、そげな窮屈な暮らし耐えれるんけ?」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「耐えられるも何も、耐えるしかねえべさ。」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「すまねぇなヘゲシピュレ。とんでもねぇとこに嫁がせてしもうてよ。」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「んなことねぇよ、だいじょぶだ、おとさん。お国言葉で話せる相手も居るしな。」

    騎兵長

「いえいえ、オレはなんもなんも。」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「おお、岩木-ドロンコイ族の長か。おめもこげなとこで満足しとるんか?」

    騎兵長

「オロロスさん、オレは満足しとるよ。ミルティアデスさんのすぐ側におれんだから。それで十分だ。」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「嘘こくでねぇぞ? おめんとこの連中、津軽半島-ケルソネソスから逃れて来て、おらぁんとこに匿ってやってんだが、どいつもこいつも、おめぇの帰りを待ってんだぞ。」

    騎兵長

「心の底から、ありがてぇと思とるよ、オロロスさん。岩木-ドロンコイ族は、あんたのお陰で生き延びてよ。ほんにありがてぇと思とるよ。」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「だけんど、このままじゃいずれ滅ぶべ? おめも族長なら、きちーんと面倒さ見れ。」

    騎兵長

「オロロスさん、オレらまだ津軽半島-ケルソネソスを諦めてねんだ。いずれ取り返してやると思てんだ。そのためにゃ、ここで耐えて、山口-アテナイ軍を外へ引っ張り出さねばならねんだ。」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「したっけ、ペルシャ人は強ぇぞ? あいつら本気でここまで攻め込むつもりだべ。おらぁたち陸奥-トラキア人も、その遠征さ加われって脅されてんだぞ? おらぁも息子や兵士どもさ差し出したんだぞ。おめぇらと戦場で会うのはご免だべ? ヘゲシピュレ、おめぇも早く帰って来い。滅びる国さ居たら、おめぇも無事では済まねぇもの。」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「おとさん・・・。」 

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「言いたかねんだども、おめぇの夫はよ、この国でなんか重要な役職でも任されてんのけ? なんもやってねぇべ? 男はなぁ、きつい仕事さ任されてこそ、良い男なんだぞ。おめぇの夫はきっと、この国の連中から軽く観られてんだ。」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「それは、そうかもしれねっけど、・・・。」 

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「嫁っ子一人幸せにできねぇ男は、悪い男だべ? 家来どもの面倒もろくに見てやれねんだろ? やっぱり、倭-ギリシャ人の男は駄目だな。おらぁたちには合わねんだ。しかも、もう六十歳を超えてんだべか? おとさんより年上だぞ? おめぇはまだ若ぇでねか、三十四歳だったけか?」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「三十三歳だ。」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「だべさ、女盛りの年だべさ。まだまだやりたい盛りだべ?」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「だっ!」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「おめぇさえその気なら、陸奥-トラキア人の良い男をあてがうべ。あっちの男は良いぞ? ここに居る騎兵長なんかも、良い相手だべ? どうだ?」

    騎兵長

「オ、オロロスさん、なっ、なにを!?」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「なあ、おらぁが娘よ。おめぇの夫はもう駄目だ。ペルシャ軍は、必ずここまでやって来るべ。おめぇの夫も、この山口-アテナイも、もう終りだ。先はねぇ。悪い事はいわねぇから、帰って来い。おらぁはな、愛しの娘を、連れ去りに来たんだ。」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「おとさん、でも、おらは・・・」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「孫のキモンやエルピニケも連れて来い。」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「でも、」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「負けさ混んでる男のもとじゃ、教育にも悪いべさ。」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「おら、」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「おらぁの娘がそんなでは、オロロス王の名も泣くべ? だいたい、」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「もう、黙ってけろ!・・・おとさん、すまねけど、おらはもう少し、あの人と共に頑張ろうと思うんだ。あの人の妻になってしまったのも、何かの大事な縁りだべ。逃れがたい立派な縁りだべ。そこから尻尾巻いて逃げ出すんは、おとさんの娘の、オロロス王の娘の、大切な誇りを傷つけることだ!」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「・・・ヘゲシピュレ、おめぇ、自分を偽ってねか?」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「偽ってね。」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「・・・神さまに誓ってか?」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「んだ。」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「・・・ご先祖さまに誓ってか?」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「んだ。」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「・・・、はぁ~、解った。おめぇがそこまで言うなら、おどさん、もう何も言わねぇ。んだども、気が変わったなら、いつでも故郷くにさ帰って来い。誰もおめぇのこと責める奴なんていねんだから。おかさんも待ってんだからな。」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「おかさん、・・・もう、んなこと言われたら、おら、・・・おら、・・・」

    物売り

「よぉよぉよぉ、あんたらよぉ! さっきから訳解らん言葉で延々しゃべってくれてるけどよぉ、買わねぇんならどっかよそ行ってくんねぇかなぁ、異民族さんよぉ? おたくら、陸奥-トラキアのもんかい?」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「こっこの無礼者! しがない商人風情が!」

    物売り

「ああ? 女が喧嘩売ろうってのかい? おいおいおい、商いの邪魔するってんならよぉ、こっちも仲間を呼ぶぜ? それとも裁判で争うか?」

    騎兵長

「奥方、オロロス王はお忍びで来られている。騒ぎになっては不味い。ここは立ち去りましょう。」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「くっ、こんな商人にまで舐められるとは、情けなや。おどさん、許してけろ。すまねえ。」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「ん? どうしたんだ?」


    長女-エルピニケ(容光院)

「あっ、キモン、お祖父ちゃんたち居た! やっぱり集広場アゴラだったね。」

    次男-キモン(小早川秀包)

「ほんとだ。おーい、お祖父さーん!」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「ん? おー、キモーン、エルピニケー! おめぇらよくここが解ったな?」

    長女-エルピニケ(容光院)

「もう、お祖父ちゃん、こっちに来んなら来るて言っといてもらわねば。なんも用意できねんだもの。」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「すまんすまん、ちと事情があってな、おらぁお忍びで来てんだ。」

    次男-キモン(小早川秀包)

「お祖父さん、ここの観光なら、おらぁが案内すっから。何でも聞いてけろ? こっちに見えんのが二の丸のアレオパゴス、左手に見えんのが本丸のアクロポリスだ。」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「おお、キモン、おめぇらの顔さ急に見たくなってな。二人とも大きくなったべな、元気そうで何よりだ。」

    長女-エルピニケ(容光院)

「お祖父ちゃんこそ、変わりなくて何よりだ。」

    物売り

「おいおいおい、お前らよぉ! だ・か・らー! ひとの店ん前で、訳わからん言葉でしゃべってんなって、そう言ってんだろ!」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「なんだぁ? おめぇこそ訳わからん言葉で、なに怒ってんだ!? んなら、この店ごと畳んでやるべか?」

    騎兵長

「オロロスさん! お忍びってこと忘れんように! 騒ぎはまずいべ?」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「んだどもよぉ!」

    次男-キモン(小早川秀包)

「ねぇ、店の人! ここではお酒を売ってんのかい? だったら今宵は宴をするんだ。適当に見繕って家まで大量に運んでくれないか? 大切なお客が来てるんだ。明日も明後日も頼むかもしれないぞ?」

    物売り

「おお、あんさんはもしかして小早川ピライオス家の坊ちゃんですかい? それならそうと早く言って下さいよ、こんなお得意様相手に喧嘩してる場合じゃねぇ! えぇ、上物の葡萄酒をなんぼでもご用意させていただきますんで! ヘヘヘ」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「おお、凄ぇな、おらぁの孫は魔法使いみてぇだ! たった一言で、怒った奴を笑顔にしちまったべ!」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「おとさん、大げさだ。キモンはただ『酒を買うべ』て言っただけだ。」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「そんなら、なおさらびっくりだ! 『酒を買うべ』て言っただけで、こげな悪ぃ男を手下にしちまったべさ! やっぱり、おらぁの孫は天才だ! でかしたべ、ヘゲシピュレ! 良い孫を産んだ!」

    次男-キモン(小早川秀包)

「ヘヘヘ、ほら酒だ酒だ、もっと酒持って来い! ってね。」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「こら、キモン! おどさんのは冗談半分だからな、真に受けるでねぇぞ?」

    次男-キモン(小早川秀包)

「ヘヘヘ、ねぇ、お祖父さん、どんくらいこっちさ居られるんだ?」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「おらぁお忍びで来てるべからな、もう明日には帰るつもりなんだ。ペルシャ人の目もうるせぇしな。だから酒代は置いてくから、後はおめぇらだけで楽しんでくれ。」

    次男-キモン(小早川秀包)

「えぇー! そんな早く?」

    後妻の父-オロロス王(最上義光)

「あぁ、キモンもエルピニケも、そしてヘゲシピュレもな、またおらぁのとこに帰って来てけろ。おらぁ、いつでも待ってっから。祖母さんもみんな、大歓迎してっから。」



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