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第52話 悪役令嬢バッドエンドを回避するには

「あぁ~、もう一体どうしたらいいのよ? このままだとセシリーは来週には外国行きの船に乗せられてしまうわよ!」


 ベリンダはクッションを掴み、このやりきれない思いをぶつけるようにベッドに叩きつけていた。


「そう言われてもな……。まあ、なるようになったとしか」


 まったくランドルフの言うとおりなのだが、それでも納得いかない。

 花冠の女王に選ばれた者は、今日の昼に広場で発表された。

 ベリンダはそれをリリアに誘われて聞きに行ったのだが、結果が衝撃的過ぎてそのままふらふらと帰ってきてしまったのだ。

 そうして自室に閉じこもって、ランドルフを呼び出して話していた。

 この衝撃を分かち合うのがこの白いイタチ型の妖精しかいなかったのだ。


「まさかセシリーも、私も花冠の女王に選ばれずに、同率で三人も女王が選ばれるなんて思ってもいなかったわ」


 その三人のうちのひとりはセシリーの取り巻きのひとりの娘で、もうひとりはあまり知らない貴族の娘で、もうひとりは角の花屋の娘さんだった。


「ああ……あの三人に負けたなんて。まだベリンダひとりに負けたときの方がマシだったわ。二位以下は発表されなかったから、二位であった可能性はあったのだから。でも今回は、少なくとも四位以下になってしまったわけで」


「今は自分がベリンダなのに、ややこしい言い方だな」


「そんなことはどうでもいいわ。ああ……セシリーが今頃両親からどんな罵りの言葉を受けているかと考えると、気の毒で泣きたい気持ちになるわ」


 あんな名前も知らない町娘に負けるなんて、というそしりが、今度はまさか友人であるはずの娘と、覚えが薄い伯爵の娘と、町娘に負けたなんて、になるのだ。


「そんなことより、アンディ王子はその三人のうちの誰を選ぶんだろうな? それはそれで修羅場だろうな」


「ええ、ちょっと見物かもしれない……ではなくて! 今はセシリーのことで、それどころじゃないのよ! ああっ!」


 ベリンダはベッドのごろんと横になって、頭からまくらをかぶって、うぅぅっと呻きながら足をバタバタと動かした。

 そのとき、ドンドンドンっ! と扉が慌ただしくノックされて、ベリンダが応じるより前に扉の外から声がした。


「ベリンダ大変だ! 花冠が戻ってきた!」


「え? どういうこと?」


 父親の声に飛び起きて扉の向こうに話しかける。


「花冠の女王が三人になっただろう? だから三日後の授与式までに冠についている宝石を三等分にして、冠を三つつくってくれるようにと注文が来たんだ」


 そういえばすっかり忘れていた。

 ベリンダの父は花冠の女王がいただく冠を作ったのだが、うっかり偽物の方を納品してしまったのだ。それをすり替えてくれ、と言われていたのだった。


「よかったわね。でも三日後なんて、それはそれで大変なスケジュールだけど」


「私が偽証罪に問われるよりもずっとましだ! それでは、忙しいからこれで行くなっ」


 一方的に言って行ってしまった。

 すっかり忘れていたこととはいえ、解決してよかった。これでコーベット家が路頭に迷うことはなさそうだ。


「それにしても、君は花冠の女王に選ばれずに残念じゃなかったのか? せっかくヒロインになったというのに」


 ランドルフの言葉に、ふと一度くらいはその経験をしてもよかったかな、と思うが、いやいや、今はセシリーのことだ。


「私はいいのよ。それよりセシリーのことよ。一体どうしたら……」


 そうしてもやもやするばかりで、手立てなどなにも思い浮かばなかった。

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