第29話 新たなルート
ランドルフはなにやらずっと悩んでいる様子だった。
そういえば彼の存在も不思議そのものである。
そもそもしゃべるイタチである。
このまま転生を繰り返すにしても、彼が側にいてくれれば安心であるし、いい話し相手にも相談相手にもなってくれるのでとても心強くはあるのだが。
「……もしかして、セシリーの記憶を引き継いだままで君がベリンダに転生したことで、世界になにか変化が起きているのかもしれない」
「よく分からないけれど、それってヒューバート様のルートができたってこと?」
「あり得る」
「えぇー、それは喜んでいいんだか、悲しんでいいんだか分からないわ……」
ベリンダはがっくりと肩を落とした。
自分がベリンダに転生したときと同じくらいの落胆だ。
(だって、これだけ転生を繰り返しているのよ? もしかして次はまたセシリーに転生して、ベリンダとヒューバート様が結ばれるところを見ていなくてはならないかもしれない。そんなの嫌だわっ!)
彼には色恋沙汰とは無縁な孤高の人であってほしい。
眉間に皺を寄せて、この国の行く末について考えていてほしい。自分はそれを見て、憧れているだけでいいのだ。
「まあ、あくまでも可能性の話だがな」
「そうね。そうじゃないことを願うわ」
そういいつつもとても悪い予感を感じていたベリンダの元に、珍客がやって来た。
「ちょっとベリンダちゃん!」
不意にベリンダの母がノックもなしに部屋に入ってきた。ランドルフはするんと物陰に姿を隠したので、彼の存在は気付かれずに済んだようだ。
「具合が悪いっていうから、母さん心配で。さあ、ネギを焼いたからこれを首に巻いて!」
「ネギを焼いた? 意味が分からないんだけど」
「こうすると風邪が治るのよ。さあさあ、早く寝間着に着替えて。ネギ巻いて寝ていなさいね」
そう言われ、さっさと服を脱がされて寝間着を着せられ、首にネギを巻かれた。
(ネギくさい……)
まさか『さっき具合が悪いと言ったが、あれは嘘だ』とは言えず、仕方なくベッドに横になった。
「ひと眠りして起きた頃までに晩ご飯用意しておくから! さっきね、クリフさんが来てくれてとっても大きな玉子をくれたの! ご家族でどうぞって」
(玉子……?)
なぜ玉子、と思うのだが、玉子は高級品でなかなか庶民の手に入らない。
ベリンダがつれないならばまずはその母親から、とでも考えたのだろうか。フラグが立ちまくりで頭が痛い。
「玉子を使っておじやを作るから。今日はごちそうよ!」
(おじやがごちそう……)
ベリンダの母はとても楽しそうに部屋を出て行ってしまった。
ベリンダになってよかったと思うのは、この家庭の温かさである。とてもほうっとできる。
だからそんな家庭の娘をバッドエンドに導くのは、と思ってしまうのだが、それはまた別の話である。
(とにかく……私にできることはフラグを折りまくることよね。ヒューバート様とは……また会ってお話しできればいいな)
そうして目を瞑ると、特に具合が悪くもない上にネギ臭いというのに、自然に眠りの中へと落ちていってしまった。




