第12話 警護される身分
「あっ、いけね。俺、これから取り立てに行かないといけないんだった」
「取り立て? 売った宝石の料金の?」
「そうそう。もう二年も滞納しているんだ。今日こそは払ってもらわないと。そろそろふかしたじゃがいもも飽きたからな!」
そんな取り立てに行く割には明るい表情だな、とは思ったが言わないことにした。
「姉さんも出掛けるんだろ? 今日はリリアの家に行くって」
「ああ……そうだったわね」
あの素敵なドレスを作ってくれたリリアの元へ行き、王宮舞踏会での様子を話さなければならないのだった。
リリアはそれを楽しみにしていると言っていた。すっぽかすわけにはいかない。
「じゃあ、準備するから途中まで馬車に乗せてってくれる?」
「ああ、いいよ」
そう軽く応じてくれたニールを残して自室へと赴き、すぐに支度を調えて玄関へと下りてきた。
「ベリンダ殿、もしかしてお出掛けされますか?」
騎士団長のカーティスがベリンダを待ち構えていた。
「ええ、少し友人のところまで」
「お供いたしましょう」
「ええっと……結構です」
「そうはいきません。我々はベリンダ殿の警護を申しつけられて参ったのです」
子爵の令嬢ふぜいが、普段は王族を護っている王国騎士団に護ってもらうようなこと畏れ多すぎるのだが。
「ただ近所の友達の家に遊びに行くだけですが」
「それでも、です。近所だからと安心はできない」
そうしてヒューバートはベリンダの前に跪いた。
「私はアンディ王子からあなた様をお守りするように申しつかりました。王子の命令は絶対です」
「ええ、そうでしょうね」
「それに私はあなたの身が本当に心配なのです。あなたはまだ年若いお嬢さんだ。王子というものがこの国にとってどんな存在なのか分かってらっしゃらないかもしれない」
「分かっている……つもりだけれど」
見た目通りの年ではないし、この国の事情についてはかなり知っているはずだ。
「いいえ、分かってらっしゃらないようだ。この国には王族を神の一族のように考え、傷つけるのはもちろん、不遜な態度に出たというだけで脅迫状を書いたり、夜襲をかけたり、するような攻撃的な一派がいるのです。そんな一派に睨まれた大変なことになる」
「え……そんなまさか……?」
バッドエンドを望んでいる身ではあるが、殺されてしまうのは御免被りたい。
「去年、会議の席にて畏れ多くも国王陛下に『もう王制を取っているような時代ではない、あなたの時代ではないのだ』と暴言を吐いたとある貴族が、なぞの黒装束の集団に襲われて攫われた挙げ句に殺されたしまった事件はご存じですか?」
「あ……ああ、そんなこともあったような」
「ああ、不安にさせたならば申し訳ありませんが、そのような状況もあることを重々承知していただきたいのです」
「そうなのね」
バッドエンドへ向かうのも命がけということだろうか。
「私は、そんな者達からあなた様をお守りしたいのです」
「え……」
「あなた様のような無邪気な娘が傷つかずに済むように、たとえこの身を挺してもお守りしたい。そのために、私は騎士になったのです」
思わずキュンとしそうになってしまった。
ヒューバートのこともそうなのだが、ベリンダ……の中の者は仕事熱心な人に弱いのだ。




