表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

◆エッセイ◆

この目蓋が下りるまで愛して。

作者: ナユタ



 初めてキミを見た時はあんまり暴君だったから、


 名前をつける直前までずっと【上様(仮)】だった。


 確か子供だから最終的に【若様】にしたんだったね。


 でも今やキミは【じいや】で、今朝方【仏様】になった。


 我が家は代々動物は外で飼う決まりだったから、年に数回しか家には上げられなかったのに、キミはずっと家に上げてもらったことを憶えていたね。


 家族の声を聞くのが好きだったから、ちゃんと小屋があるのにいつもリビングの近くにある床下にいたよね。


 家族旅行に行く時は、キミをちゃんと冷暖房設備のペットホテルに預けたのに、二日もすればお店の人から「ストレスでお腹を壊してます!」って悲痛な声の電話を受け取ったよ。


 どんだけ家族が好きなんだ。


 愛が重いよ。


 でもキミは気性のせいでペットショップでも売れ残っていたから、考えてみたら怖かったのかもしれないね。


 ああ、そういえばキミは脚が生まれつき悪かったから、散歩で一緒に走ったこともなかったなぁ。


 そのくせ凄い執念で、家族がゴミを捨てに出てくる裏口の高い石の階段を上ってきたよね。ドアを開けるたびにその背中にドアが当たるから、こっちは結構気を使ったんだよ?


 夕方になると毎日近くの学校のチャイムに合わせていつも遠吠えしたけど、キミは驚くくらい咆哮音痴だった。


 真っ黒などんぐり眼のキミが、私を見るたびに笑ってくれるから。


 自信が持てない自分でも生きてて良いんだと思えたよ。


 長いようで短かった十五年。


 十七歳の頃からの付き合いだった。


 痩せてうっすら開いた目蓋が閉じるまで掌で温めてあげるから、安心してゆっくりおやすみ。


 その舌がもう手の甲を舐めてくれることはないけど、我慢するよ。


 仕事休みに逝ってくれてありがとう。


 最後まで何て出来た奴なんだ。


 おやすみ、


 おやすみ、


 愛してる。


 だからどうか、良い旅を。






 追伸・兄貴がキミに買い溜めた高級缶詰めどうするんだって泣いてるよ。

    時々は、夢で良いから食べに来て。

咆哮音痴=鳴き声が短くて咽せてるみたいで音痴(へた)だったんですねσ(´ω`)

     これは造語なので、誤字ではありません。

     だけど気にかけて下さった読者様、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 文章が上手く、感情移入しやすいです。 [一言] 泣けた。 ええ話や。 ありがとう。
[一言] うちの犬も、鳴いてるのかむせてるのかどっちだ?? って吠え声です。 そして、旅行でペットホテルに置いてくと、 2、3日なのにハゲができちゃう(>_<) すごい親近感^_^ いつまでも元…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ