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一、静かなる捕食者(6)

 スキップが黙って見てろと言うので、俺もバルバドもエルエスも静かにして彼の作業を見つめていた。

 通路に四人の足音だけが響く。

 壁に振りかけられた粉が、柔らかな光を発していた。

 まるでヒカリゴケのようだ。

 その名の通りに光を発する苔のことだけど、発光蛇草と違うのは摘んでしまうと光を失ってしまうこと。だからヒカリゴケは、道具としてどうこうできるものではないんだ。

 そんなことを考えていると、

(あれ?)

 なんだろう……目の錯覚かな?

 横を見てみるとバルバドとエルエスも俺と同じような顔をしていた。

 揃ってスキップに視線を注ぐ。

「どうやら俺の見間違いじゃないみてーだな。もっかいやるぜ? よく見てろよ」

 俺たちの表情を確認したスキップが、一掴みした粉をもう一度壁の辺りに振りかける。

 するとどうか。

「いま、一瞬だけど消えたみたいに見えたわ」

「どういうことなんだ?」

 二人の言うように、ほんの瞬きの間だったけど、スキップの撒いた粉が空中で消えて、そしてまたすぐに現れたのだ。

「普通に歩いてたら気付かないくらいの一瞬だったろ。やっぱりな、俺が思った通りだぜ!」

 得意満面の笑みを浮かべてスキップが言った。

「つまりだな。重要なのは、通路同士をリンクさせている魔法と視覚効果で向こう側の通路が見えるようにしているのと、二つの魔法が完全に一体になってないってことさ。だから、物体がテレポートする瞬間とその見え方に、僅かながらもタイムラグが発生しているって寸法よ」

 説明を要求する俺たち三人に、彼は饒舌に語った。

「どこまで行っても同じような風景だしな。それも歩きながらで気がつけるほどのラグがあるわけでもねぇ。今みたいに全員でじっくり観察してないとこいつを見つけるのは、たやすいことじゃねぇよな」

「ううむ、お手柄だスキップ」

 バルバドが手放しで褒めると、彼は親指を突き立ててにっこり笑った。

「ちょっとそこで馬になってくれや、ジギーちゃん」

「んん?」

 すぐに壁へ印をつけて、その周辺をくまなく調べていたスキップだったが、急に振り向いて俺に言った。

「だからよ、天井の辺りも調べてみんだよ。魔法の媒体が見つからねーと、でぃすぷぇるマジックができねぇんだからさ」

 ああ、なるほど。

 早速床に膝をついた俺の背にスキップが足をかける。

「あった! あったぜエルエス。これじゃねーか?」

 ややして俺の背中から降りたスキップがエルエスを促す。

「どれ? ……ちょっとごめんねジギー」

 遠慮がちに彼女が上に乗る。

 ……うわっ、軽い。

 スキップも身軽なほうだけど、エルエスはさらに輪をかけて重さというものがまるでない。

(ちょっと言いすぎかもしれないけど、羽みたいな軽さだなぁ)

 場違いな感動に浸っていた俺は、馬上の声で我に返った。


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