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四、閃く攻防戦(10)

「ッルモベョブニ グロカワゲンゲギホルモグセベニ

 イウ、ヨエカズチギクンケレスザ

 ユゴグヘベシユァラゴグヒズユ

 イウベホホオグヲエミゲベグドガチドガヒザユグンセレハ

 ギベセベゴヤモドラン!」


 エルエス以外では決してその意味を理解することのできない呪文が、彼女の口から紡がれた。

 床に散らばった宝玉の欠片が、カタカタと振動する。古の呪文によって、まるで千年の眠りから、たった今目覚めたかのように!

「うおっ?!」

 宙にゆらめき浮かんだ欠片たちが、スキップの眼前で輪の形を成す。

 小さな石ころのようだったそれらが、うすらぼやけたかと思うと、次には見たこともない文字へと変容していった。

(あれは古代文字なのか?)

 スキップが探し当てた天井に描かれていた不可解な文字、俺たちに警告を送った数行の文章。無限通路で目にしたものに似ている気がする。

 不思議な光景だった。

 彼女のワンドの先にあった宝玉が、今はその姿を消し、ロングソード一本分ほどの距離を置いたスキップの前にて、古の文字となって浮かんでいる。

「その輪の中を通ったものには、魔力が加えられるの……」

 息も絶え絶えなエルエス。肩を大きく上下させてスキップに告げる。

「任せときな」

 彼女の言葉を受けてスキップ。

 彼が鋭い眼差しを向けるは、落雷を放つ目玉モンスター。

 いつもは軽口を吐き出す彼が、言葉少なに返すのは決意の証。これ以上、エルエスに負担をかけぬべく、ボウガンに矢をセットする。

 三条の光が轟きを上げて床を叩いた。

「しゃらくせぇッ!」

 バルバドと俺は、攻撃を中断して落雷をかわした。その間に、スキップが電撃の隙間を縫うように駆け抜ける!

 目玉モンスターを攻撃の射程圏に捉えた彼は、ボウガンの先を上空に向けた。

 シャ、シャッ!

 連続して撃ち出される二本の矢。

 エルエスが生み出した、魔法の輪の中心を貫通して、空気をも裂く勢いの矢が目玉モンスターに向かって疾駆する。

 忙しなく飛び回る目玉たちの一体が、またも雷を落とそうと黒目の先を下に向けた時、

 ズバァッ!

 射出された二本のうち、一本が目玉モンスターの芯を捉えた。

 パリパリッ、と貫かれた体(目玉?)の周りを、筋の細い雷が二、三、今にも消え入りそうに虚空を彷徨った──。

 ドオオォン!

「やった!」

「見事だぞ、スキップ」

 矢に貫かれた目玉が空中で爆発した。

 俺は思わず拳を振り上げて、歓喜の声を上げた。

 まるで弓を専門に扱うレンジャー顔負けの腕前だ。いくらボウガンが誰にでも使いやすく作られているといっても、動き回る標的を一度で仕留めるなんて、容易くできることじゃない。

 だけど、彼の射撃の実力に舌を巻くバルバドの賛辞にも取り合わず、スキップはボウガンへ新たな矢をつがえる。

「次々にいくぜ!」

「よし、俺たちもだ!」

 こうなると頼もしいのはスキップだけではない。

 落雷の脅威が、彼の一射ごとに取り除かれることで、俺やバルバドも黒龍に集中して攻撃することができる。

「ジギー、やつの眼を狙え! 来いッ!」

 スキップが発射する魔法の矢が、目玉モンスターの三体目を貫通した時だった。

 バルバドがアウフ・ドラゴロスの顎の下辺りにて、両手を組んで中腰になった。


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