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一、静かなる捕食者(1)

 足音だけがやけに響く。

 思えばこの塔は全域を通して、どこが光源とも知れぬ明かりが塔内を照らしている。

 松明が必要ないのは、特にモンスターとの戦闘においては助かる。

 エルエスの「ライティング」の魔法を使えばどうってことはないけど、少しでも魔法力を節約しておいたほうがいいし、魔法の効果はいずれ消えてしまう。

 明りが消えた瞬間に襲われでもしたら、目もあてられない。

 もちろんエルエスならライティングの魔法が突然消えてしまうような、そんな初歩的なミスなどしないだろうけど。

 ともあれ、俺たちはじっとしていても仕方がないと、一本道の通路を進むことにした。

 先頭はもちろんシーフのスキップ。

 続いてファイターの俺とウィザードのエルエス、今度のしんがりはバルバドだ。

 ただ淡々と歩みを進めるだけの直線的な通路。

 スキップは壁に仕掛けがないか、罠の類なども丹念に調べている。よくある罠でいえば、いきなり壁から矢が発射されるということもあるからだ。

 また、彼は床の石畳の切れ目にも注視していた。

 もし落とし穴などが仕掛けられていた場合、運が悪ければパーティー全滅ということもありうる。

 俺たちはしばらく無言で、罠を調べるシーフの後ろをぞろぞろと歩いた。

 さて、ここらへんでパーティーメンバーの紹介でもしておこう。

「きりがねぇよ。そもそも、この道はどこにも繋がってねぇんじゃねーの? ああ、罠はないぜ。現状を打開できそうな仕掛けもねぇけどな」

 振り返ったスキップが鼻を指先でこすりながら言った。

 彼はシーフのスキップ。

 二十二歳、冒険者レベルは十三。

 黒髪黒目で、身長は成人男子の平均よりも少し低いくらい。

 俺の知らない、以前の冒険で負傷したらしい左目を隠すようにして眼帯をしている。

 口が達者で、仕事のない時は大抵、酒場で働いている女の子にちょっかいを出したりしているらしい。

 ただ、酒が三度の飯よりも大好きと豪語する彼だけど、ギャンブルには絶対に手を出さない。彼曰く、「ありゃぁ割りに合わねーよ。俺ならもっと効率よく金を稼ぐね」との事。

 身体にフィットした鎖帷子は、動きやすく軽量な上になかなか頑丈そうだ。

 腰にはウエストポシェットを装備。盗賊七つ道具でも詰まっているのだろう。

 ぱっと見にはわからないが、足音を消すシーフ専用の足袋をブーツの下に履いている。これは盗賊ギルドの仕事をある程度こなすともらえる代物だそうな。

 スキップは俺たちパーティーを危険から守るため、この塔に入ってからかなりの活躍をみせてくれた。

 階段のところで突然現れたガイコツ剣士の罠などは、ここまでの疲労がたまっていた故のミスといってもいい。基本的には頼りになる男だ。

「ウィザードとしての見解も聞かせてもらおうじゃないの」

「あっ、あたし?!」

 いきなり指名が入ったエルエスは少しうろたえる。

 だけども、そこはそれ熟練の冒険者というべきか、ボーっと歩いているように見えてもしっかりと辺りの魔力を探っていたようだ。


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