二、胸に鎮魂歌を(3)
ふむふむ、じゃあその方法って?
「どうやってテレポーテーション魔法を消すポイントを見つけたの?」
「そいつは見てのお楽しみだぜ」
そこで話は終わりとばかりに、スキップはきびすを返した。
俺たちは顔を見合わせて肩をすくめる。
彼の回答にエルエスは不満げに頬をふくらませていた。まるでおやつを食べる寸前で取り上げられたみたいだ。
俺たち三人は、いまいち釈然としないものを感じながらもスキップに続く。
それでも文句が出ないのは、彼の仕事ぶりに定評があるから。
ポイントCを抜けてポイントAまで行く手前の通路3で、俺たちは今度またポイントCへと戻ることになった。
無限通路に入ってからずっと俺たちは道なりに進んできたわけだが、迷いなしに逆を行くところを見る限り、やはりスキップにはなにかしら考えがあるようだ。
しばし歩いてポイントCへと到着。
天井を仰ぐと、変わらず古代文字が見えるか見えないかくらいの大きさで描かれている。
「でぃすぷぇるマジックをここで頼むわ」
スキップがエルエスに言った。
彼女は頷いて呪文を唱え始める。
「ほんとに大丈夫なんだよな、スキップ?」
「ほぼ間違いねぇ」
何も見えない虚空を見つめてスキップ。
ここまで来たからには彼を信じよう。
決心し、エルエスの魔法を待つ。
彼女は両の手の平を天井へ向けてかざすと、
「ディスペル!」
力強く言い放つ。
パシュン──。
気の抜けるような音が一つ。
見ると、天井にあったはずの、テレポーテーション魔法の効果を持っているであろう古代文字が、跡形もなく消えていた。
「やはりエルエスの言うように、視覚効果の魔法は別にあるようだな」
確かにそのようだ。
俺たちの目の前にある通路にはなんらの変化も見受けられない。
彼女が消したのはテレポーテーション魔法だけだったということが、これで証明されたわけだ。
「百聞は一見に如かず。とにかく行ってみようぜ」
「そうしましょう」
「よし」
「これで間違ってたら笑い話にもならんな」
互いに見つめ合い、俺たちは魔法のあったであろうポイントを通り抜けた。
次に聞こえたスキップの声。
俺はしばらく彼のその戸惑いと驚愕に満ちた顔を忘れることはできないだろう。
「そ、そそ、そんなバカなッ! うそだろう?! おいおい、誰か冗談だと言ってくれよッ!」
その時の彼は、まるで自分が断崖絶壁の、どう転んでも登ることのできなさそうな崖の真下にいるかのような錯覚に陥っただろう。
エルエスがディスペルマジックを施したポイントを通り抜けて、景色は一変した。ただ、それが決して良いとは言えない景色だったのだけど。
「スキップが読み違えるのでは……お手上げだな」
バルバドがうなった。
目の前に現れたのは、壁。
「俺たちは閉じ込められたってこと?」
スキップの考えの半分は当たっていた。
つまり──俺たちが直面している状況は、テレポーテーション魔法を消したら閉じ込められてしまうパターンの方だったのだ。