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1章49話『方針確定』

8月11日 午後9時頃 繋木ツナギ氏の館の庭園にて 蔭蔓カゲル


 神那カンナと話した後、一人で考えたくて庭にでた。庭が広くてどこに行くか迷いそうになったので、3番目に離れた橋の脇にある紅葉の樹の下へ駈け込んだ。というのも、何でもいいようなことで迷うと、身体からわけのわからない植物が生えてくることが今年に入ってからたまにあるからだ。


 なるほど、不気味な現象におそわれおり、この数週間、命の危険を何度も経験してきた。しかし、悲観することはない。それに見合うだけの情報を得たからだ。


 まず、黒ローブは闇魔法の魔法使いだろうこと。


 ラルタロスで呼び出されたとき、黒ローブの魔法を闇魔法と蔭蔓カゲルは指摘した。対して、黒ローブは否定しないどころか「闇魔法。ほーう。どこで知ったのかはしらないけれど、君も少しは勉強したようだね。」と返した。


 これは黒ローブが、自身が闇魔法使いであることを認めたとみてよいだろう。


 だから、黒ローブは闇魔法使いであることを仮定する。


 次に、その黒ローブが闇魔法に関する書物を集めているということ。神那カンナからの情報を信じるならば、開縁カイエンが闇魔法に関係があると判断したとある御伽話の本一冊を、黒ローブ(とその仲間)は春分の襲撃のときに開縁カイエンの書斎から盗み出したことになる。


 開縁カイエン自身は、その本から何ら得られるものはなかったようが、闇魔法使いの黒ローブが、闇魔法において何らかの価値があったため、その本を盗み出したと考えるのは極々自然なのだ。


 そして、開縁カイエンの仮説、すなわち、闇魔法は植物魔法と関連があるという主張には個人的に賛成だ。もちろん、神那カンナからの情報を信じることが前提ではある。


 というのは、闇魔法使いである黒ローブが黒色の日陰蔓ヒカゲノカズラの植物魔法を用いることは実戦で確認したからだ。黒ローブは開縁カイエンの説の一例と言える。


 さて、次は何を調べようか。


 まず、調査対象にする書物の種類に童話やその他物語をいれること。にしても、調べる場所が欲しい。どうにか、定期的に大きな書庫を調べられるようにしたい。


 カスミ繋木ツナギさんに2人の植物魔法について、思い切って聞いてみてもいい。その時、闇魔法という単語を出すべきだろうか。これについては慎重にするべきだ。


 そして、かなり色々なことを信じることにはなるが、蔭蔓カゲルはあることを予想した。


 それは、(俺、闇魔法使いなんじゃないの?)ということ。


 黒ローブは俺と瓜二つの顔を持ち、色違いだが日陰蔓ヒカゲノカズラ使いだ。であれば、黒ローブが闇魔法使いなら、蔭蔓カゲルも闇魔法使いだとしても特に驚くことはない。2人は似ているのだから。


 自分の魔法に常軌逸脱した性質があるかどうかも調べるべきだ。庭の一角を繋木ツナギ氏に貸してもらえるように交渉すればいい。


 つまり、いずれにせよ。繋木ツナギ氏と直接話すべきなのだ。


8月12日 昼前 繋木ツナギ氏仕事部屋にて 蔭蔓カゲル


 繋木ツナギ氏に色々と頼みはあったものの、翌朝向こうから呼び出された


繋木ツナギ「まず、報酬の70万wね。」


 繋木ツナギ氏は小さな金属ケースをあずさに渡した。結局、一番要となった神那カンナを少し多めにして、あとはカスミも含めた5人で分けした。


 次に、伝達帳を焼いた。


神那カンナ「これでやっと解放されるんだ。」


 神那カンナは他にも焼くものが多いようだった。


あずさ「伝達帳って燃えるのね。意外だわ・・・。」


 確かに。案外もろいですね。


繋木ツナギ「さて。これで君たちが外部に連絡を取る手段も、形式上なくなったことになるわけだ。まぁ、気が張り詰めっぱなしだっただろうから、外に買い物にでも行ってきなさい。」


神那カンナ「館の外に出られるんですか?」


 というか、危なくはないのか?


繋木ツナギ「そりゃ、この館だって何でもあるわけじゃないからね。食料や結界石も必要だろ?青年魔獣狩り隊君たちよ、外に買いに行くしかない者だってあるのさ。」


 繋木ツナギ氏は軽快な口調で言った。白銀寮や附属図書館の部隊に遭遇する可能性は度外視しているのだろう。無論、蔭蔓カゲルも仕方ないと思っている。


 というわけで、外出すること自体は頼まなくてもできそうだ。あとはどこに行くかという話だが。


神那カンナ「どの町行けるのですか?」


 此れも尋ねるまでもなかった。


繋木ツナギ「まぁ、君たちが敵に遭遇しなさそうな場所ならどこでもよいが、希望はあるかい?」


蔭蔓カゲル「できるだけ古い町がいいです。昔の資料とか残ってそうな・・・。」


 ここぞとばかりに蔭蔓カゲルは口を開いた。


繋木ツナギ「ほーう。君、歴史的建造物とか好きなタイプ?」


 繋木ツナギ氏が目を輝かせてきた。繋木ツナギ氏の部屋が骨とう品で溢れかえっている。彼は歴史的建造物とか好きなタイプなのだろう。安易に肯定しては面倒なことに巻き込まれかねない。


蔭蔓カゲル「いいえ、僕はヒカゲノカズラ科一筋です。」


 追撃を許さない返答としては中々のものだろう?


繋木ツナギ「———ん。まぁいいけど・・・。古い町か・・・。」


 繋木ツナギ氏は少し考えた後、何やらひらめいたようだ。


繋木ツナギ「そうだ。リプロスに行こう!」


将器ショウキ「リプロスってあのリプロスですか。」


 将器ショウキは目を丸くした。


繋木ツナギ「クルカロス北部にある魔獣狩りの都市。リプロスだ。」


カスミ「そういえば、元の依頼の最終目的地だったっけね。」


繋木ツナギ「なのだっ!!」


 繋木ツナギ氏は一人で盛り上がっていて楽しそうだ。カスミが冷たい視線を向けると、


「あそこなら他の魔法使いも多いから、全身を隠していてもおかしくないし、魔獣狩りに必要なものは何でもそろう。それに、ラルタロス同様歴史のある町だ。どうだろう、買い出しが必要なときはリプロスを使うようにするのは。」


と続けた。結局、条件を満たしているといえばいいものなのだが。


 リプロスは将器ショウキ蔭蔓カゲルが出会った都市だ。将器ショウキ蔭蔓カゲルも、もう一度訪れようと思っていたから都合がよく、皆すぐに合意に達した。


繋木ツナギ「それじゃあ、出発はいつにするかい?」


あずさ「明日の早朝には間に合います。」


繋木ツナギ「うむ。案内はカスミが。それと、とりあえずの衣装はコチラから貸そう。まさか、ラルタロスの魔獣狩りの格好をして行くわけにもいかないよねぇ。それじゃあ、違法入国者諸君、朝の魔獣市を楽しんできたまえ!!」


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