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黒鬼  作者: けいた
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第2話 黒鬼、そして食事

 僕が目覚めた時辺りは真っ暗だった。

 夜? いや、正確には今の時刻はわからない。わかるのは、ここがどこで自分が今どこにいるのかわからない、ということだけだ。

 しばらくすると暗闇に目が慣れて辺りの様子がちょっとだけわかってきた。

 僕は今檻に入れられている。立ち上がって手を上げればかろうじて届くくらいの高さで、広さは自分の身長より少し大きいくらいかの四角い檻だ。出口には当然ながら南京錠がついている。

 鍵はどこかな……?と思ってキョロキョロと辺りを見回すが薄暗がりの中ではよく見えない。

 どうやらここがどこかの室内で、部屋の真ん中に僕が閉じ込められている檻が置いてあるということがわかった。

 檻と僕以外には何もない。あるのかもしれないけど暗いからよく見えない。

 というかなんで僕はこんなところに? 確か昨日、親の寝てる隙に鬼を見るために玄関から外を覗いて……それで怖くなってママとパパの寝ている寝室の方を振り返って……それで……それで? 思い出せない。と自問自答しながら考える。

 ガチャッ。と、後方からどこかのドアの開く音が聞こえた。音の聞こえた方向を振り返る。何者かが近付いてる。

 ひた……ひた……ひた……

 ……思い出した! 昨日この音を聞いたんだ。その後から今までの記憶がない。つまり僕はこいつに連れ去られた? こいつが鬼なのか……? と再び心の中で自問自答しながら何者かが近付いてくるのを見開いた目で凝視する。

 僕はこいつにこいつに喰われるのか……?ひきつった表情で考える。まだ死にたくない……


 そいつは檻のすぐ前までやってきた。そして気付く。鬼には見えないことに。

 そいつは黒いフード付きのマントを身に付けている。そのフードは首から口元までをも隠せる変わったマントだ。そういう訳だから顔が全くわからない。唯一顔で見えている目は海のように透き通って青い。身長も僕より少し高いくらいで、聞いていたように人間の倍ほどもある巨体で全身真っ黒という訳でもない。足は見える。裸足でその場に立ち、普通に人間っぽい足をしている。

 「私が怖いか?」そいつは問いかけたきた。

 「こ、怖くなんか……」

 「ふん、その割には声が震えているじゃないか」と、僕の恐怖に負けてしまった第一声を嘲笑う。

 「別にあんたを取って食おうとはしちゃいないよ」

 「じゃあなんで僕をここに連れてきたんだよ!」

 恐怖がピークを迎えたのと同時に、鬼とは対照的な見た目による安堵も押し寄せ、恐怖と安堵が怒りに変わる。

 「何がしたいんだよ! 何が目的なんだよ!! 僕を食べるためじゃないんだろ? じゃあいったいなんだっていうんだよ!」と、恐怖と安堵と怒りといろんな感情が入り交じり、泣き叫ぶ。

 何者かが切なげな目で僕を見つめ、室内には僕の泣き声だけが流れる。やがて僕が落ち着いたのを見て何者かが言った。

 「生贄を探していたんだよ。そうしたらあんたを見つけた。でも子どもじゃないか。だから殺さずに連れ帰ってきたんだよ。ふふ、子どもはまだ純粋だからね」

 「生贄……? 言っている意味がわからないよ! もし僕が大人だったら殺して食べてたのか?」

 「それはどうだろう。大人は理不尽だ。まあとにかく昨夜見つけたのはあんただけさ。殺さずに連れ帰ってきたんだ。ふん、逆に感謝してほしいぐらいだ。ところであんた、いくつだ?」と何者かが聞いてきた。

 「……」

 沈黙するが、青い目でじっとこちらを見つめ続けられる。なぜか怖くなくむしろ優しいとさえ言える何者かの視線と、沈黙に耐えきれずに僕は答える。

 「今年で12……」

 「ほう、まあ悪いようにはしないよ。私があんたをこれから育ててやるよ」

 「……は?」

 「育ててやるって言ったんだ。理不尽で傲慢でクズな大人に変わってな。あんたは恵まれてるよ。私に育ててもらえるんだ。純粋なままのあんたで、大人にしてやる。私はこの腐りきった世界を変えたいんだ。私が! 私の手で! この世界を! 理想の世界に導いてやるよ!」

 「意味がわかんないよ。僕はママとパパが好きだし家に帰りたい。それにお前なんかと一緒にはいたくない。」

 「いや、しばらくはここにいてもらうよ。殺さずに生かしてやってるんだ。言うことは聞いてもらうよ。ふふ、なあに、すぐに私と過ごすことに慣れるさ!」

 「……!」再び苛立ちを覚える。

 「だいたいお前は何者なんだよ! 鬼かと思ったけど、体格は僕と変わらないし、やっぱりあれはただの言い伝えで、お前はただの悪い人間なんだろ?」

 「さあどうだろうねぇ? とにかくあんたはここで私に育てられるんだ。いずれ教えてやるさ」

 「クソ……自己中なやつだな……」と僕は独り言のように呟いた。


 それからしばらくお互いに言葉はなく、

 ぐぅぅぅ……こんな時なのにお腹が……会話の終了を告げる僕の腹の音だけが室内に響きわたった。


 「ふふ、腹が減ったか。よし、ご飯にしよう。食堂に案内する。ついてくるがいい」と何者かが言い、僕のいる檻の南京錠を外した。


 そして、鬼なのか人間なのか未だにはっきりしないまま、僕はそいつに導かれるままに食堂に辿り着く。

 とりあえずご飯を食べてから解決策を考えよう……お腹減ったし……と僕は考え、まずは元気が出るようにお腹いっぱい食事をすることに決めた。

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