第1話 言い伝え
初心者で初連載です。
矛盾や誤字脱字があるかもしれません。
よろしくお願いします!
空には雲ひとつなく太陽が照り輝き、灼熱の日差しが肌を焼く。
この開けた田舎の村では、空に唯一無二として存在する太陽の光を遮るものは何もない。
あるとすれば、村の中心に位置する広場の中央に堂々と天高く聳える御神木だけだ。樹高30メートル、根周り30メートルもあり、見るものの目を圧倒する大きさである。
広場には噴水があり、子ども達が水遊びをしたり、鬼ごっこをしたりしてわあわあと騒いでいる。村の御神木の木陰で涼みつつ子ども達を見守る親の姿も見られる。
「冷たくておいしいアイスキャンディー! アイスキャンディーはいかがー!」と、丸みのある優しい声が聞こえる。氷菓を売っているのは恰幅の良い笑顔の素敵なおばさんだ。
その他に、ジュース屋、駄菓子屋、果物屋、八百屋、雑貨屋などが軒を連ねる。
この中央広場が村で一番賑わいのある場所であり子ども達の遊び場であり大人達の憩いの場である。あとは広場を中心として取り囲むように、民家や畑、牛や鶏といった家畜小屋が点在しているだけである。
さて、このように特別に変わったところもない平凡で平和な村であるが、日が暮れると昼間の広場の喧騒が嘘のように跡形も無く消えさり、辺りは静けさに包まれる。
人々は皆家の中で隠れるように過ごし、村で見られるのは松明に今にも消えそうに揺らめく炎のみ。民家からは人声は漏れ聞こえず、村には人影さえ見えない。
この村には、夜になると鬼が出て人を攫ってしまうので決して家から出てはいけないと言い伝えられているのだ。
「ねぇねぇ、ママ、パパ。どうして夜に外に出ちゃいけないの? どうして騒いじゃダメなの? ずっとこそこそして過ごすなんてやだよ……」と、男の子が囁く。
「それはね、とっても怖いこわあい鬼がやってきて、連れて行かれて食べられちゃうからなの」
「そうだぞ、それは怖いこわあい鬼さ。人間の倍ほど大きくて、全身真っ黒で、闇に紛れて近付いてくるんだ。音をたてると見つかってしまうから、夜は騒いじゃダメなんだよ」
「うん、わかったよ……ママ、パパ。もう寝るね、おやすみなさい……」
それから数時間後、皆が寝静まったのを確認してからこっそりと布団から抜け出す。
ママとパパはダメって言ったけど、ちょっと様子を見てくるぐらいいいよね。大丈夫、ちょっと見るだけだよ。ほんとにいるんだったら、真っ黒で大きな体なのかちょっと玄関から覗くだけ。すぐにドアを閉めたら大丈夫だよ。うん、大丈夫! と僕はこっそり玄関のドアを顔を出せるくらいに開けて、外を覗く。
静寂。その夜は風の音も無く無音。夏なのに虫の音さえ聞こえない。本当に全くの無音。
耳に届くのは、ドク……ドク……ドク……自分の心臓の鼓動だ。今自分がここにいる、生きているという証。それ以外の音は何も聞こえない。
この村の中に今自分1人しかいないのかと錯覚してしまいそうになる。
ぶるっ……寒気がする。
皆、いるよね……? 僕1人ぼっちじゃないよね……? と、後ろを振り返ったその時。
ひた……ひた……ひた……聞こえるはずのない微かな足音が耳に届く。
え……?と思ったその瞬間、僕の意識はそこで途絶えた。