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異世界神の黒き花嫁  作者: 未鳴 漣
幕 間
32/153

「悪逆の正当性 2/7」

 月はもうすぐ西の空に沈もうとしていた。


 朝までかかってジョンに様々な言葉を教えたナナシは、すっかり彼に情が移ってしまっていた。


「なあ、ジョン。キミの手の炎、それは何なんだ? 手品か? それとも魔法……なのか?」


「なあ、じょん……」


 ジョンはナナシがどれだけ長い話を一息で言おうとも、一言一句違わずに返してくる。自分の名前や一人称をすぐに覚えたことと言い、この少年は記憶力が良いというだけでは足りない才能を持っているようだった。きちんとした教育を受けていたら、さぞ優秀に育ったことだろう。


 それだけに、ナナシは彼がこんなにも劣悪な環境に置かれていることに腹を立てていた。それはもう、業腹である。


「いわゆるネグレクトってやつか。子どもを育てる気はないけど殺すのも気が引けるから、飼ってるって……?」


 ナナシは小屋の窓から庭を覗き、その先にある屋敷を睨みつける。ここに来たとき、一部屋だけ灯っていた明かりは既に消えてしまっている。


「自分は柔らかいベッドでオネンネとはね。最低だな」


 ナナシはジョンの境遇に対してまるで自分のことのように怒っていた。


 自分がその仕打ちを受けたかのように相手を憎んでいた。


 今すぐ屋敷に乗り込んでいって、汚れ一つない綺麗な体で寝ている館の主に馬乗りになって、喉仏を押しつぶしながら首を締めてやりたい。そしてナナシはもがき苦しむその男(・・・)の顔を見下ろして、勝ち誇ったように笑ってやるのだ。


「ななしー。ななー」


 ナナシはジョンの呼びかけで我に返り、窓から離れた。


「どうした?」


「ななしー。て、てーて。あう」


 ジョンは動作で自分の意思を伝えようとする。彼は自分の手をナナシの前にずいと差し出し、拳を握って力を込めた風にし、開いた手の平の上に赤々と燃える炎を生み出す。


 少年は炎の出し方を教えているつもりらしい。しかし、あいにくとナナシにそんな芸当はできない。


「あのな、僕は魔法使いじゃないの。だからジョンみたいなことはできないの」


「なな、まほう、つ。かいじゃな、い……の」


 言いながらも、もう一度、もう一度と炎を燃やして見せるジョンに、ナナシはどうやって分かってもらおうかと考える。


「ハァ、魔法ね。魔法かぁ……」


 ナナシは試しに、ジョンと同じような仕草をして手を開いてみる。もちろん、そこに炎はない。その事実に少しガッカリした顔をして、ナナシは両手を放り出した。


「ちぇ。どうせ夢なら僕にも魔法を使わせてくれたっていいじゃないか」


「ゆめ? ななし、ゆめ。みてる?」


「そ。魔法が使えるなんて、夢以外にないだろ。あれ? でも、さっき自分で頬をつねったよな……? 夢は痛みで覚めるもんだと思ってたけど、違うのか」


「ななし、ここ。ゆめ」


「まぁね。その割にクソッタレな世界観みたいだけど、これは僕の経験が影響してるのかも。うへぇ、最悪……」


 夢の中でくらい、理想の世界に生きたいものだとナナシは思う。だが、夢を現実の再体験だとすれば、平穏な表の顔の裏で暴力につきまとわれる人生を送ってきたナナシが見るものとしては、当然の幻想なのかもしれない。


「ななし、は。ゆめ?」


 ジョンはナナシを指さし、首を傾げた。


 ナナシはその指先を見つめ、思う。


 ならばこの少年も夢の中の幻──過去の自分を投影した登場人物に過ぎないのか?


 ナナシはジョンを抱き上げ、年の割に軽すぎる体重を腕に感じる。息をするたびに膨らみ、縮む胸。肉付きの薄い体から伝わってくる心音。


 これらも全て夢だと?


 喧嘩の末に遠のいた意識。それを取り戻して目を開けてみれば見知らぬ土地に放り出されていた。ならばこれは夢と言うよりはむしろ──、


「クッ、ハハ! まぁ頭もぶつけたし、死んじゃった可能性もあるか。そしたらここは地獄かな? ありえる~」


「じ、じじ、じご。く~?」


「ん? 待てよ……地獄でひどい扱いを受けていたってことは、ジョンはつまり天使か!?」


「ぼく、てんし? てん……し、って。なぁに?」


「神様の使いのこと。宗教的な定義はよく分からんけど、まぁ僕にとっては『いい奴』の代名詞みたいなもんだな」


「いい、やつ?」


「優しくて、あったかい。ずっと一緒にいたくなるような奴のことだよ」


「あった、かい」


 ジョンはナナシの腕の中でもう一度、手の中に炎を作り出した。


「そうそう。こういう、ちっちゃくて小さい明かりが胸にポッと灯る感じだよ、いい奴ってのは」


「ななし、も。いいやつ。する」


 少年が手を差し出して、ナナシに同じ行動を促す。


「いやいや。僕は魔法とか使えないんだって」


「できる。する」


「うーん……」


 ナナシは仕方なく、しかし小さな期待を抱きながら、再度ジョンの真似をして拳を握った。間接が白くなって腕がプルプルと震えるほど力を込め、そっと開く。


 当然のことながら、そこに炎はない。


「残念。やっぱり僕には魔法とか使えないみたいだ」


 ナナシが何もできない手をブラブラとさせる。それを突然、ジョンが掴んで観察し始めた。彼は手のしわの一本一本を丹念に調べ、やがて手首から上腕、肩を通り過ぎて胸の前に視線を移動させていった。


「ジョン? どうした?」


「むむぅ~!」


 ジョンは戸惑うナナシをよそに、彼の胸──ちょうど心臓のある辺りに手を置いて軽く押した。


 不思議なことに、その小さな手はシャツどころか皮膚を通り抜けて、体の中に入ってくる。といっても、実際にジョンの手がナナシの胸に穴をあけたわけではない。目には見えない温かな「何か」が、心臓をやんわりと撫でたのだった。


 全身に血液を送るその臓器は、温められた血を吐き出して大小の血管を巡った。ナナシの体温が瞬時に上昇する。その熱は頭にも及び、頭蓋骨という鍋の中でナナシの記憶を煮詰めた。


「……ッ、なん、だ。これ……!?」


 今この場で感じるはずのない感覚が、ナナシの頭の中にふつふつとわき上がる。


 底から浮かび上がった気泡がパチンと割れる。


 それは飢えであり、


 乾きであり、


 痛みであった。


 悲しみはなく、


 喜びはなく、


 疑問もなく。


「あ……が、ぁ」


 ナナシは腹が減って、喉が渇いて、鞭で打たれた背中が痛かった。


 何も分からないし、主張もできない彼は悲鳴を堪えて耐えるしかなかった。


 声を上げれば余計にひどく打たれることだけは分かっていた。


 痛いのは嫌だ。だから小屋の扉に近づいてはいけない。


 小屋のとビラ。そこに立つ黒い影がばらまく干からびた人参がごちそうだった。


 その恐ろしい影が去った後、泥水の上澄みを舐めて乾きをしのいだ。


 よどんだ泥水に映り込んだのは、白髪に金の目を持つ少年だった。


「う、あ……あぁ」


 雨が降れば屋根から漏れてくる滴を瓶に溜めた。


 ネズミはおいしい。


 口の中で虫が動くとびっくりする。


 お腹がぐるぐると回って口から何かを吐いたこともあった。


「嘘だ……、嘘だろ……!? こんな、こんなの……!!」


 ナナシの頭の中に入り込んだ「誰か」の記憶は、想像していた以上にひどいものだった。


 暴力に晒され、ろくな食事も与えられず。


 人格もまともに形成されないまま、感覚で身につけた魔法を本能で使って、これまで生きてきた。


「こんなの、あんまりだ!」


 少年の境遇を、まさしく我が事のように思いやったナナシの胸では、一つの感情が沸騰していた。いくつもの泡が浮かんでは弾け、器を壊さんばかりに煮え立っていく。


「ブッ殺してやる……!!」


 野太く吠え、ナナシは泣く。


 その涙をジョンが拭い取って、彼の額に自分の額をくっつける。


「ななし。なく、ない。なくな、いで」


 ジョンは彼の胸に置いていた手を動かし、肩から手の方へと遡っていった。その間、ナナシにはやはりジョンの手が体の内部を動いているような感覚があって、それは血管を伝って手の平へと行き着いた。


「ななしー。も、いかい」


「だ、だから……僕にはできないって」


「おねがい。ね?」


 ジョンはナナシに手を握らせ、力を込める。


 ナナシは仕方なく、先ほどと同じ様にダメもとで炎を出そうと試みた。


 目を閉じ、心臓から手に向かって温かな血の流れを感じる。一点に集まったそれの温度はどんどんと上昇していき、ナナシの手の平の上で渦を巻き始める。だがその熱はあくまで心地よいもので、ナナシの皮膚を焼くようなことはなかった。


 血潮の渦はいつしか霧のように揺らめき始め──。


「ななしー! ほら! ほらっ!!」


 ジョンの歓声を聞いてナナシが目を開くと、そこには白い炎が煌々と燃えていた。


「これ、魔法……?」


「まほう! これ、まほーう!」


「──ってか、ジョン! 言葉が分かるのか!?」


「ぼく、ななしのまりょく、いじった。あたまいって、きた、した。わかる」


 ジョンはナナシと自分の額の間で人差し指を行ったり来たりさせてそう言った。それは頭の中を互いに共有したという仕草だった。ジョンはナナシの記憶を──そこにある知識を余すことなく見たのだった。


「すっげぇ! やっぱお前って天才なんじゃないの?」


「ぼく、てんさい? やたー」


 他人の知識を見たくらいで、すぐに言葉がしゃべれるようになるものか。ナナシはジョンを抱え上げて笑った。その目に涙はもうない。


「なくの。ないないした?」


「したした」


「なな、わらう」


「そう、笑ってんの。これ嬉しいって感情な」


「うれしい、わらう。たのしい。よろこび!」


 ジョンは鏡のようにナナシと同じ表情を浮かべた。


 ナナシは親が幼子をあやすように少年を高く高く掲げ……十歳ほどになる子どもがこれほど軽々と持ち上げられる現実を改めて思い知る。


「ああ、そっか。これ、本当に夢じゃないんだな……」


 ジョンの記憶を見てしまった以上、ナナシは彼のことをこの世ならざる者とは思えなくなっていた。


 ジョンの存在をリアルに受け止めたナナシは彼を地面に下ろし、屋敷の方を見て声に悔しさを滲ませる。


「あの家の奴、さぞかし美味い飯をたらふく食ってんだろうなァ」


「おいしい、ごはん。ぼく、たべたい!」


「だよな。僕もジョンにはちゃんと美味しい物を知ってほしい。だから──」


 ナナシは野生の動物から人間らしくなった少年を、もっときちんと人間にしてあげたかった。子どもに畜生みたいな生き方をさせて平気な「人もどき」ではなく、誰に頼らずとも一人で立って歩くことができて、自分のやりたいこと、なりたいものを追い求められるような。


 当たり前の人間に。


「……っ」


 胸につかえる感情を堪えて唸るナナシの頭を、ジョンがそっと撫でる。


「ななし、ぼく、おなじ。つらい。つらかった」


 ナナシと同じく相手の記憶を見たジョンは、彼の生い立ちをよく知っていた。


「そうさ。辛かったんだ。とっても」


「いま、へいき?」


「ああ、平気だよ。もう解放されたから」


「へいき。ななしげんき」


「そういうこと。だから今度は、お前を解放しないと」


「ぼく?」


「そう。こうして出会ったのも何かの縁だからな。次はお前の番だよ」


 晴れ晴れとして笑い、ナナシは少年のために立ち上がった。近づいてはいけないと記憶に刻まれている扉の方へ近づいていって、ダメだと言っておびえるジョンに、危険がないことを教える。今こそ、このゴミ溜めから抜け出す時だ。


 だが、扉を押し開けようとした彼の手は寸前で止まった。


 ナナシの耳には小屋に近づいてくる足音が聞こえていた。彼は扉の隙間から外の様子をうかがう。薄暗い景色の中、こちらに向かってくる人影──白いエプロンに黒いロングスカート。まさにメイドらしい格好のそれを敵と判断したナナシは、小屋の中で武器を探した。


 ナナシの姿がジョンの視界から消えると同時に、メイドが朝日を背負って小屋に入ってきた。彼女はかごを持っていて、そこには芽の生えた小さなジャガイモが二つと、葉物の芯がいくつか入っていた。


「朝食の時間ですわ」


 女は真っ赤な唇をつり上げ、卑しい笑みを浮かべて言う。それに対し、ジョンは反射的に鳴った腹を押さえて声を上げた。


「ごはん! たべる、たべる」


「食べる……? 今日はよくしゃべりますわね?」


 生きていれば、動かなくとも腹は減る。


 食べられるときに、食べなければいけない。


 そう記憶に刻みつけられているジョンは食べ物につられて、メイドのところまで走っていった。彼は女の足元にちょこんと座り、かごの中身が与えられるのを待つ。


 メイドはにっこりと笑うと、入り口の棚に引っかけてあった乗馬鞭を手にとってジョンに振り下ろした。


「この餓鬼! 私に近づくな!」


「ぎゃんっ!?」


「何度言ったら分かるのかしら!? 犬でも一度きつく言えば理解しますのに、この子ときたら本当に頭の悪い……」


「ううー、うー!!」


「これで御館様の子どもだなんて信じられない! でも、あの方も相当キてますものね……蛙の子は蛙と言いますし、似たもの親子ですわね!!」


 ヒステリックに叫ぶ間にも、メイドはジョンに鞭を振り下ろした。


 鞭は彼の腕に、顔に、足に……麻袋から出ている箇所をくまなく打ち、その皮膚を裂いた。


 メイドは恍惚の笑みを浮かべて鞭を振る。


「ああ……ホンット可愛らしい子。私の大切なお人形さん。たくさん愛してさしあげますわ!」


「ななしー! ななぁーっ!!」


 ジョンが悲鳴を上げる。


「悪い。手頃な獲物を探してたら遅れた」


 剣呑な目つきのナナシは先端がトの字になっている火かき棒を振りかぶり、メイドの後頭部めがけて振り下ろした。まさか第三者がいると思っていなかったメイドは突然の襲撃に対処できず、一撃を食らって泥の中に倒れた。


 一度の攻撃では、威力の弱いそれ。


 ナナシは何度も、何度もメイドの頭を殴りつけた。


 鉤部分が女の頭皮に穴をあけ、頭蓋骨に刺さる。うずくまって震えだしたメイドの手から乗馬鞭を奪い取り、その体を仰向けに転がす。赤い口の中には地面の泥が詰まっていた。


 嘲笑を浮かべたナナシは、あらん限りの力で女の顔に鞭を打ち込んだ。


 頬の皮膚が裂け、鮮血が飛び散る。


「ひぎ……ッ!?」


 悲鳴を上げる口を打ち。


 涙を流す目玉を打ち。


 息をする鼻を豚のように潰し。


 それでも逃げ出そうとする手足を棒で刺し。


 ナナシは執拗なまでにメイドを打ち据えて、打ち据えて、刺して、打って、打って、刺して、刺して、刺した。


 何度も腕を上下に振って打ち、そうかと思えば柔らかい肉を刺す。


 それは「あの部屋」で──床に転がっていたペンでケダモノの目を突き刺した光景を呼び起こした。


 水風船をプチッと割る感触……使う道具が変わってもその感触は変わらない。ナナシはその事実を思い出した。


「ハハハ、ハ!! ついにやったぞ……僕が、僕が勝ったんだ! 僕の勝ちだ! ざまあみろ!! バァーーーカ!!!!」


 ペン先はきっと、眼球を破ってその奥へと達した。どうせならその奥にある脳味噌もかき回してやりたかった。そうするまえに意識を失ってしまったのは痛恨の極みである。


 とはいえ、やることは()ったのだ。


 ナナシは一つ明らかになった記憶に満面の笑みを浮かべた。


 メイド服を着たぼろ切れは息をしていなかった。


「ハァ、ハァ……、アハハ……はぁ……。僕の愛はどぉだった? メイドさん」


 体中に返り血を浴びたナナシは一仕事終えたように爽やかな吐息を漏らすと、小屋の隅で痛みに耐えていたジョンを振り返った。


「ジョン、遅れて本当に悪かった。痛かったよな」


「うん。いたい。ち、でた」


「あとでちゃんと手当してやるからな。でもその前に……」


 ナナシは手に持っていた鞭をジョンに握らせると、自分の頬にその先端を向けた。


「お前がされたのと同じ分だけ、僕をぶって」


「ぶつ? ななし、なんで?」


「僕はジョン一人に痛い思いをさせた自分が許せないんだ」


「……」


 ジョンはナナシと鞭を交互に見て、首を左右に振った。


「やだ」


「だめだ。それじゃあお前ばっかりが痛い目にあったことに……」


「ぼく、いたかった。ななしも、いたい。それやだ」


「ジョン……」


「いたい、きらい。おなかすく、きらい。さむい、きらい」


 ジョンはナナシに鞭を突き返した。


「ななしは、すき。すきがいたいの、ぼくきらい」


「ジョンは……それでいいのか?」


「いいの。よっ」


 ジョンは血の滲んだ顔であどけない笑顔を浮かべ、そう言い切る。健気な少年に涙腺を刺激されたナナシは滝のように涙を溢れさせた。ボロボロと流れ落ちるそれはジョンの頬に降り注いで、傷にピリッと染みた。


「ジョンは優しいな」


「ななしが、やさしいから。だよ」


 ナナシの記憶を得て感情を開花させたジョンは、彼の人格こそが今の自分を形作ったのだと微笑む。


 少年の屈託のない表情が愛しい。


 ナナシはジョンを胸に引き寄せた。そのまま抱き上げ、彼らは小屋を──劣悪な過去に別れを告げる。


 これからは新しい人生を生きるのだ。


「さよなら。おに、さん」


 ジョンが小屋の中に置いてきたメイドにそう声をかける。それを聞いたナナシは、あれだけ酷いことをされたというのに何て礼儀正しい子だろうと感心した。


「お別れの挨拶ができて偉いぞ、ジョン。それにしても、鬼かぁ。言い得て妙だな」


「いいえてみょう」


「地獄だもんな、ここ」


 年端も行かぬ子どもにこんな仕打ちを許す世界は、まさしくそれである。


「じごく。こわいところ!」


「そうそう。だから僕とジョンでこの地獄を少しでも楽しく、住みやすくしていこうぜ! オーケィ?」


「おーけーぃ!!」


 二人はキャーと楽しげな奇声を上げて庭を突っ切り、屋敷の方へと走って行った。

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