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共通・謎の青年の家、縁日

チリーン、風鈴の音が風に消えた


この暑さには何年経っても慣れないだろう


祖父母に会う為、毎年夏休みはこの田舎に来ている

いかにも田舎らしくクーラーはない


「クソ暑い!!」


シリアスな語りをぶち壊し、この物語の主人公が第一声を発した。


「いつになったら曾孫の顔が見れるんだろうねェ…」


「曾孫て!?あたしまだ花の高校生だよ!昨日見たドラマみたいに向こうからイケメンが現れるよ…タブン」


「そうね毎年“ここ”に来てるんだから今年こそ運命の出会いがあってもおかしくないわよね」


「田舎で?ナイナイナイナイ坊主頭にタンクトップにムシアミもって蝉取りするガキしかいないでしょ」


「「今時そんな古風なガキいねーから」」


くだらない恋バナで盛り上がっていると誰かが尋ねて来たのだった


「ピンポーンすいませーん」


押すと音がなるアレはちゃんと付いているのに―――――


うん、明らかに変な人だ。


「どちらさま?」


祖母がスライド式の扉を開けると、予想と反して普通の眼鏡をかけた青年が玄関の前で立っていた。


不細工ではないが地味、服装は和服に袴、なのに羽織っているのは革ジャンでやはり変人である


「あの…僕、しばらくこの近所に住む事になりました」


頭の後ろに手を当てて―――簡単に言うと照れた時無意識にやるアレをしている。


「あら~ご近所さんね運命の出会いかしらねえ、アナタ娘の彼氏にどう?」

突拍子もなく何を言い出すのだろう


「はぁ!?なにいってんのママ!」


槍玉に挙がってしまった彼は、いまどんな顔をしているだろうか


「あ…そろそろおいとましますコレ…つまらないものですが」


ほんの一瞬、彼はこちらを視たような気がした。


(え…何で?聴こえてたのにスルーされた?)


行程も否定もないなんて、自意識過剰だけどもせめて『ハハッないですよ~』な反応は出来た筈だ。


「悪いね~」


少しだけ彼が気になってしまったので近所に住まう事となる彼を尾行だ。



――――おかしい


彼が入って行くのは人里離れた山奥、で家の近所ではない

しかもこの山には恐ろしい伝説があるとかないとか胡散臭い話があるらしい


(まさか…彼はその伝説を調べに来たの?)


こんな山奥に都会から人が来る理由などそれしかない


「まずい…道に迷った」


いつのまにやら標的を見失って途方に暮れている間に辺りはどんどん暗くなっていく


〔――――そこで何をしている〕


後ろを振り向くといつの間にかその場に湖があった。

その中で月光に照らされて真っ黒な夜に映えそうな銀髪を輝かせ、秀麗な顔立ちの男が全裸で水浴びをしているではないか


〔そこの女人、なにをいまでも裸体を視ておる…〕


ジロりと私を見据えるその男、恥じらいもなく堂々とこちらへ歩いてくる。


「変態!変態!おまわりさーん!」

逃げ出そうとしたら近くの木にぶつかってしまった。


額がじんじん痛んで涙目になっていると――――


〔おい小娘〕

謎の男は膝立ちになり、私の額に手を当てる。


〔…男なら殴ってるところだぞ〕

不思議な力で痛みは――――特にひいていない額に貼られたのは多分普通の絆創膏。


実は森の神様かなんかで神通力のようなものが使えるとかそんな期待を抱いていた。


結構優しい―――――――


でも


「とにかく服はきてええ!!」

すっかり忘れていたけど、イケメンだけどただの露出狂だ。



「…怪しい男を尾行したらここにたどり着いたと?」

「そうです」

「散々変質者呼ばわりしておきながら

お前もストーカーとやらではないか」

この人だか化け物だかわからないのには言われたくなかった。

ストーカーと言われればそうなんだけど。


「その人間の後を付け、何がしたかったんだ」

「ほら…漫画でよくあるじゃないですか?」

妖怪だか仙人っぽいこの人に漫画が解るのかしらないけど。


「…絵巻物のようなものか」

「はい。それだと何か行動を起こすとなんやかんやで恋人ができるんですよ」

うまく説明できないので結果論のみ話す。


「何もその人間で起こす必要もあるまい」

「だってここ田舎だし小学生しかいないし

都会人ってなんか特別な気がしていいなあ…って」

「目の前に特別な力を持った我がいるというのに…」


そういや目の前には妖怪風イケメンがいたんだ…、気がつかなかった。


「兎に角、早く帰った方がいい」

「はーい今日は帰りますよ」

「…もうここには来るな」

「やだ明日こそインテリ文豪眼鏡とフラグる!」

私はダッシュで帰宅した。




耳の早い母達に聞いて引っ越してきた彼を調べた結果、彼の名は“古有里こうり庵士あんし”。

彼についてわかったのは名前と、職業が駆け出しの小説家だということだけだった。


「こんにちは」

「こんにちは!古有里さん」

向こうから挨拶をされたので即座に返す。

声をかけようとしていたのに、私よりも先に掛けてくれて嬉しい。


「以前、伺った日には名乗り忘れたと思うんですが、どうして僕の名前を?」

「近所の人から聞きました」

名前くらいで驚かれても、どう対応すればいいのか。


「あはは、そうですよね」

「はい~」

「…そう言えば貴女のお名前は?」

名乗る前に名前聞かれちゃったよ。

脈アリと思っていいのかな!?


豈透あにすきにしきです!遠慮なく下の名前で呼んでください!」

「名字と名前の響きがいいですね」

さすがはプロの小説家。字や名前そのものじゃなく、響きについてなんて着眼点が違うわ。


「錦ちゃん、いま暇ですか」

「暇です」

夏休みの宿題は初日で終わらせたし、田舎には電波がなく娯楽もない。


「よかったら家で小説の話を一緒に考えてくれませんか?」

「イエス!!はい、もちろん、よろこんで行きます考えます!」

わくわくしながら謎の多い彼についていく。




「……人間か」

「え!?」


彼の家には、森で会った銀髪の男が――――――


「また会ったな」

「ちょ……え!?」

「知り合い?」

それはこちらの台詞である。


「ななな……?」

「21?」

いや、掛け算じゃなくて。

______



「昨日の晩にこの田舎なら怪談とかイワク付きの風習オカルト系の話とか守り神とかスピリチュアルなありそうだなー。と思いながら夜中に歩いていたんだ」


夜中にそんな怪しい田舎を徘徊って、度胸あるなあ。


『あれ、変なコスプレイヤーがいる』

『人間、この姿が見えるのか……』


「まあかくかくしかじか、森を歩いていたら、彼がそこら辺にいたんだ」

「説明ぶんなげすぎじゃないですか……」


いくらなんでも会ったばかりの得体のしれない男が家にいるのはさすがにまずいような。


「コンソメ味のポテチは良いな。ゴージャスよりキックのほうが馬鈴薯の風味を感じられ、より美味だ」

――――この男が神仏のたぐいには見えないし。たたり神のコスプレしてる中二病かな。



「あなたって何者?」

「神だ」

「え?トイレットペーパーがどうしたって?」


「……はあ!?」

ないわ……ただのコスプレの中二病でしょ。神ならなんかすっげー力使えるはず。


「やっぱり疑うよね。なんかすごい力とか使ってくれないかな」

「きさまら……神にたいして礼儀もないのか」


「神がポテチなんか食うかよ。リンゴでもくってろ」


家の入り口から声がした。


`ガラッ、と木製の扉がスライドする。


赤い和服を着た金髪の少年が不機嫌そうに腕を組んで、玄関前に立っている。


「こんどは誰!?」

「俺はそこの馬鹿の同郷だよ」


まさか彼は早くに中二病にかかった少年だろうか。見た目は若いが実はウン百歳とか言い出さないよね。


「ちっ……帰るか門が閉まるとまずいからな」

――まだ昼だけど、門限なのかな?


「なんか、頭が混乱しているのでまた明日きます」

「うん……なんかごめんね」

さて、帰ろう。あれ、なんだか森の向こうが光っているが、気のせいだろうか?


――――見に行こうかな?


やめよう。私はなにごともなく家に帰ると、出掛けていた兄の伍糸<いつし>がいた。

「あ、お兄ちゃん」

「錦、今日は神社で縁日やるらしいぞ」

「え、マジで!?」


縁日=ラブイベントじゃない。


「兄ちゃんは縁日にいくが、一緒にまわる気はない。彼氏でも誘っていってこい」

「お兄ちゃんこそ、彼女みつけなよー」

と軽口を叩き、私は昏幻紫<たそがれげんし>神社へいく準備をした。


「ほーら浴衣よ」母が見せてくる。


―――というわけで、ちょうどよく用意されていた浴衣を着て、家を出た。


「さて、誰を誘おうかな」

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