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鉄の傘

作者: シキカン
掲載日:2026/04/03



どれくらい時間が経ったのだろう…。

雨音の激しさに、今僕はこの世で独りなのではないかと錯覚する。


「俺たち、付き合うことにしたんだ」

絡ませた指を僕に見せつけならアイツは言った。

親友の恥ずかしそうな表情と、彼女の照れくさそうな笑顔が脳裏にこびりついて離れない。

そこからの記憶はない。気づいたら傘もささずに公園のベンチに座っていた。

僕はアイツの一番近くにいたのに、なんで気づかなかったんだろう。

僕に向けられたあの笑顔も、あの仕草も、全部好きだったのに、“友達”としてだったんだよな。

こんな甘い考え…もし僕が砂糖なら、この雨に打たれ続けて溶けてしまいたい。


すると急に雨が当たらなくなり後ろから

「風邪ひくぞ」

とアイツの声が聞こえた。

涙で濡れた瞳を雨で誤魔化し、少しだけ振り返るとアイツは俺に傘をさしてくれていた。

そして今はアイツもずぶ濡れだ。

「…オマエのが風邪ひくだろ」とボソッと呟いた。

また前を向き、アイツに背を向ける。

「彼女はどうしたんだよ」

「家まで送っていった。傘持ってなかったし。」

その言葉に胸がチクっと傷んだ。

「そのまま一緒にいればよかったじゃん」と皮肉混じりに言うと、アイツは突然僕の肩を掴み自分の方に僕の体を向けて憤った。

「いきなり目の前で顔面蒼白になって走り去った親友見て、放っておけるわけないだろ!!」

その残酷な優しさの矢に僕は心臓を貫かれた。

傘が地面に落ちる。

こんな時ーー


アイツの胸に飛び込めたらいいのに。


…いや、出来るわけない。


なぁ、神様。なんで僕を“女”に産み落としてくれなかったんだよ。

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