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金髪オタクの私が異世界転生したけど、金髪の婚約者が顔だけが良いカスで許せない。

作者: 飛羽音 翠
掲載日:2026/02/26

私、元日本人のレーナ・メディウム。プレイしたことはないが、有名で少し知っていた乙女ゲー世界に転生した。


そして転生先はなんと、主人公の平民の聖女を虐めまくる悪役令嬢レーナ!


普通の人なら狼狽える場面だが、私にとってはそんなことはどうでもいい。


この国、金髪の方が多くて本当に助かる……。


彼女は自他ともに認める金髪ハンターだった。歴代推しキャラはみんな金髪。金髪かつ緑〜青の瞳だとポイントが高く、更にツリ目でツンとしたタイプだと途端に性癖に刺さる。


そうなると、鏡越しに見る自分にも「好き……」となる。サラサラとした綺麗な金髪の長い髪。ツリ目がちで、高貴なメディウム公爵家を象徴する深い紫眼。無表情でいるとツンと澄ました猫のようだ。


あ〜〜〜〜この子絶対ツンデレだったじゃん。そうであってくれ。心を開きにくいタイプだけどその分懐に入れた人に激甘なタイプだ、知ってる。


悪役令嬢との百合ルートがもしあるゲームなら、聖女ちゃんからぐいぐいアプローチして、なんだかんだあっていつの間にか聖女ちゃんがレーナちゃんのお気に入りになってるやつだ。知ってる。


なんで私がこの子の中に入っちゃったんだ……。もったいない。どうせならレーナを攻略する側やりたかったよ……。


今日も屋敷の皆が尊い……。ああ、今、私付きのメイドのアンナがお茶を淹れてくれた。アンナは薄い茶髪だが、陽の光の元ではキラキラと輝く綺麗な髪なのだ。柔い緑の瞳が春を思わせるようで見ていて幸せな気分になれる。


アンナが淹れてくれたお茶を飲み、学園に行く支度をする。


そうなのだ、この乙女ゲーの舞台は学園らしい。らしい、と言うのは私はこのゲームをやったことがないから確証がない。


どうせ最後は悪役令嬢レーナは卒業パーティーで糾弾されるんだろうな〜と思っている。まあ、知ったこっちゃないが。そうなったとしてもあの男に嫁ぐよりマシだろう。


そんなことを考えながら、部屋を出て足を進める。玄関近くの階段を降りた時、家族が暖炉近くのソファで歓談していた。私が通りすがると声をかけてくれる。


「いってらっしゃい、レーナ」

「気をつけてなー」

「姉さん、学校頑張れ」


薄い白金髪をゆるくまとめて結い上げた優しい水色の瞳の母、黄色寄りの金髪の短髪で紫眼の父、私と同じ金髪で紫眼の弟に応援される。この家族を見ていると、みんな金髪の美形揃いで眼福すぎてにこにこと口角が自然に上がってしまう。


「うん!私頑張るね!行ってきま〜す!」


どうして原作のレーナはこんな優しい家族に囲まれて悪役令嬢になったのかが意味不明だ。……やっぱりあの男のせいだろうか?


御者のセドリックが学校まで馬を走らせてくれる。彼も金髪だ。襟足を少し伸ばしており、下の方で括ってまとめている。とても良いと金髪オタクは思います……。

彼はメイドのアンナと兄妹で、アンナと同じ春のような淡い緑眼をしている。アンナはたれ目ぎみで穏やかな風貌だが、セドリックはツリ目がちだ。


つまり、私のド好みド真ん中なのだ。金髪・緑〜青の瞳・ツリ目。この三拍子が揃うと途端に私はだめだ。


おかげで毎回馬車に乗り降りする際に手を触れる時緊張してしまう。


はぁ……どうせだったらセドリックみたいな男と結婚したい……。セドリック、真面目でお硬い男だけど好きな子には一途だし。彼には下町に交際している彼女がいる。


そんなことを思いながら窓の外を見つめているとすぐに着いてしまった。馬車が止まり、セドリックに手を引かれて外に出る。


「今日もありがとう。また放課後にね」

「はい、お嬢様」


セドリックと別れてクラスへ向かう。毎朝、この瞬間が最も憂鬱である。


ガラリ、と教室の扉を開けると、あいつが寄ってきた。


「おはよう、レーナ。今日も……最悪なその面を見せてくれてどうもありがとう」


私の婚約者、ロカ・フォン・ダグラスだ。にこにこ微笑みながら嫌味を言ってくる。お前は歩く社交界か?と言ってやりたい。


「おはようロカ。今日も顔だけは良いけど顔以外は最悪ね」


こいつは本当に最悪だ。金髪の短髪・翡翠の瞳・ツリ目という三拍子揃いの私にとって最高の外観を持っている。だが嫌いだ。性格がいけ好かない。


仮にも第1皇子が婚約者の公爵令嬢に「最悪な面」はないだろう。少なくともこんな美少女に向かって言う言葉ではない。本当にありえない。


「本当、サラサラで綺麗な金髪、透き通って美しい翠眼、ツンとしてて少年から青年に変わりつつある顔立ち、鍛えている筋肉……」


そう言いながら彼の髪を触り、指を差しながらその身をじっと見て観察する。


「中身以外は最高なのに!!誰かこいつをどうにかして好青年にしてくれないかしら!」


彼は顔を真っ赤にしてぷるぷる震えている。怒っているのかしら。これしきのことで。小さい男ね。


「レーナだって、き、きれ……その面に合わない毒舌をよくもそう回せるものだな」


そう言って誤魔化したようにニヤリと笑って腕組みをする。その姿は様になる。だからこそむかつく。


「あんたのせいよ!言っとくけどね、私がこんなのになるのはあんたが私を怒らせてくるからよ。私はロカに売られた喧嘩を買ってるだけ。普段はもっと優しい子なの、私は」


「へぇ、俺以外にはこんな顔見せないのか……」


少しにやにやしている。気色悪い。


「当たり前じゃない」


「俺も、レーナ以外にはこんな風じゃないのに……」


そうなのだ。彼は私以外に対するときはきちんとした好青年な王子様なのだ。なぜ私にだけそれができない?婚約者だからって舐められてるのかしら。私にだって王子様モードで接してくれたっていいじゃない。


「直してくれないかしら?」


「直そうと、努力はしている。だが、レーナの前に出ると、いつも口が勝手に罵倒してしまう……」


「なにそれ最悪」


「すまない……」


「こんな人が婚約者なの終わりすぎ……。どうせ初夜は手酷く抱かれるんだわ!」


「おい、嫁入り前の女の子が初夜とか言うな」


「女の子だなんて、思ってないくせに」


「……」


そう言うと黙り込む。そういう所が本当に大嫌いだ。会話はもう終わったとみなして、席について準備を始める。


ロカから婚約してきたくせに。



あの日は本当に嬉しかった。


雪が降っていたその日、5歳の私は初めて皇城に足を踏み入れた。第1皇子のロカの婚約者決めのお見合いのためだ。


ロカを初めて見た時、あまりの可愛さと美しさに言葉を失った。金髪・ツリ目・翠眼で私好みの顔。ツンとした表情でこちらを見ていた。


彼もまだ私と同じく5歳だというのに、魅力的なオーラを放っていた。社会的に許されたならば思わず抱きついていただろう。


緊張しながら席に座ったのを覚えている。母から学んだ貴族マナー、間違えていないかな、大丈夫かなと不安だった。


その不安を解そうと、ロカが会話で笑わせてくれた。何を話したのかはもう覚えていない。だが、「優しい子だなぁ……」と思ったことは強く覚えている。第1皇子がこの子ならこの国も安泰だ、とも思った。


無事にお見合いを終わらせ、その日は帰った。

「婚約者に選ばれたら、どうしよう……。あんな綺麗な子のお嫁さん……。成長したら絶対イケメンじゃん……」

と、その日は妄想にふけって眠れなかった。



その後日、お見合いの結果が来た。


「ロカ殿下はお前を気に入ったそうだ。お前が嫌ならお父様が陛下に断るぞ、断っていいんだぞ、レーナ」


「もうあなたったら。レーナをまだ嫁に出したくないからって、圧かけないでちょうだい」


「だが……」


「お父様、お母様、私、ロカ殿下の婚約者になりたいです……!」


そうして私は、5歳からロカの婚約者になったのだ。



だったのに、こんな性格だったなんて、聞いていない。詐欺だ。


婚約者になった瞬間にこうだ。手のひら返しの早さで本性を見せてきた。おかげで5歳から15歳の現在まで辛酸を舐めさせられてきた。


しかし、それもきっともうすぐ終わる…!何と言ったって、2学期に入った。もうそろそろ転校生が転入してくる季節だ!聖女ちゃんがもうすぐ来るに違いない!


聖女ちゃん、頼むのでうちのロカを攻略してくれませんか!?私とは相性悪いからこうなんだろうと思ってるけど、ふわふわ聖女ちゃんならあいつも優しくしてくれる可能性あると思うんです――!


最近はそればかり考えている。神頼みならぬ聖女頼みだ。


丁度先生が教室に入ってきてホームルームが始まった。


「皆さんおはようございます。実は今日はこのクラスに転入生が来たんです」


どうやら待ちに待った瞬間が来たようだ。この教室にふわふわしたピンクブロンドでピンクの瞳の可憐な少女が入ってくる。その際ぴょこんとアホ毛を揺らしている。


え、ふわふわのピンク髪かわいい。こんなの絶対聖女ちゃんじゃん。


「おはようございます。フローラ・ラリタと申します」


「フローラさんは聖女として教会からやってきました。くれぐれも失礼のないように」


フローラに席が宛てがわれ、ホームルームが終わる。


さあ、ロカ、行くんだ。フローラに話しかけに行くんだ――!そう思ってロカに目線を送ると、彼は力強く頷き、早速立ち上がって来た。私の所に。


「え、なんで私の所に来たの?」


「は?レーナが俺に目線寄越したからだが」


「いや、あんた、フローラちゃんに話しかけに行きなさいよ。第1皇子として学園を案内してあげるとかさあ」


「いや、俺に案内されるとか気を遣うだろ絶対」


「確かに。でもどうにかして頑張ってフローラちゃんにアピールしないと…!」


「なんでだよ」


「見て。あんなに可愛い。その上に聖女。お嫁さんにしたいと思わない?」


「お前なあ……。レーナがいるのになんで他に嫁を増やそうと俺が思うと思ってるんだよ」


「誰も増やせなんて言ってない。ほんとロカって最低」


「なっ、じゃあお前、俺にフローラさんを宛てがおうとしているのか?俺の婚約者でいるのがとうとう嫌になったのか!?」


「とっくの昔に嫌ですけど?こんな男に嫁いでも大事にされる未来が見えない」


そう言うと、ロカは愕然としたように目を見開き、口をわなわなと震わせる。え、まさか、想定外だったの?


「ううっ……俺は、レーナのことを、大切に……なんて」


思ってない、どうせ、そう続くんだろうな。予想がつく。


そこで彼は一度言葉を切って、自分の頬をぱちんと両手で叩く。突然のロカの奇行に目を見開いていると、ロカは大声で言った。


「思っている!!俺は、レーナが何よりも大切で、愛している!!」


「はぁ……?あんた、こんな大声で何言ってんのよ。教室に響いちゃってるじゃない」


彼の声で教室中の目線を集めて胃が痛い。フローラちゃんも目をぱちくりさせながらこっちを見ている。かわいい。あー、明日、校内ニュースにならなければいいけど。


「そんなこと、どうでもいい。レーナが俺の婚約者じゃなくなる方が100倍嫌だ」


「え」


まさか、さっきの愛してるって言葉、本気?

そんな考えが頭に浮かび、ぽっと頬に熱が集まる。いや、でも、そんなわけ。ロカが私を愛しているわけがない。


「そんなの、有能な将来の皇妃を逃すのが嫌なんでしょ」


「違う!!好きな女と結婚できなくなるのが嫌なんだよ!」


「っ…!好きな女ってなによ!じゃあ今までの私への散々な罵詈雑言は何だったわけ!?」


「あれは……本当はいつも、『好きだ』『愛してる』『結婚したい』『綺麗だ』って言いたかった!!」


「はぁ!?」


突然の愛の言葉のオンパレードに顔から火が噴きそうになる。ロカからこんなこと、こんなに言われたことなんてない。


「けど、レーナが『硬派な人が好き』って昔言ってたから、抑えようとしたら、代わりに別の強い言葉を口走ってただけなんだ。本気で言ってたわけじゃないんだ。いつもあんな酷いこと言ってごめん。もう言わない」


「だから、お願いだ。これからも俺の婚約者でいてくれ……。頼む、レーナ……。俺を捨てないでくれ……」


そう言って、彼は縋りつくようにぺしょぺしょになりながら地面に座り込む。とても第1皇子の姿には見えない。でもなんだか、今までロカに感じてこなかった愛おしさが湧き上がる。


「……いいわよ。これからも、ロカの婚約者でいてあげる」


「本当か!?」


「ただし!ちゃんと愛の言葉を言うこと。もう抑えないでよね」


「ああ…!」


そう言って、ロカは私に抱きついてきた。ロカの鍛えあげられた胸板の厚みと体格差を感じて自然と頬に熱が更に集まる。


「レーナは俺が硬派な男じゃなくてもいいのか…?」


「私が好きな硬派な男はね、硬派なのに好きな女には一途な男。そのギャップが好きって言ってたの。本質的に好きな部分は『一途』って部分。間違っても、好きな女に罵詈雑言吐く男は全くもって好きじゃない」


「そうだよな……今までごめん、レーナ」


「……言って」


「え?」


「もう一回、愛してるって、言って。そしたら、許す……」


体を離し、ロカは私の顔を見ながら愛おしげに目を細めて言った。その顔は、今まで私を見つめる時によく見るロカの表情だった。


「愛してる、レーナ」


答える代わりに口を開く。


「……私、ロカのこと、今まで嫌いだった」


「うぐっ……」


彼は苦しそうに胸を押さえる。


「なんで私を婚約者にしたんだろうってずっと思ってた」


「レーナに一目惚れしたからだが」


「ふ、ふーん」


ロカにこうやって愛の言葉を言われると一々照れてしまう。なんせ耐性がなさすぎる。


「んんっ、それでね、私、あんたのこと、顔だけは好きだから。……そんなに私のこと好きなら、頑張って振り向かせて見せなさいよ」


「……わかった」


ロカは私の熱い頬に手を触れて零す。


「レーナ、照れてて可愛い。愛してるって言われたらそんな顔するんだな」


「だって、初めて、言われたし……」


「初めてだったか!?」


「初めてですけど〜〜!?」


「すまない。これからはもっと言う」


「……」


「好きだ、レーナ」


彼は私の手をとって、手の甲に口づける。その仕草にまた頬が熱を持った。


翌日の校内新聞には聖女ちゃんを押さえて一面に第1皇子の告白が載った。聖女ちゃんに少し申し訳なかった。


この日から、ロカは愛の言葉を余すことなく口にするようになったし、レーナはそれに一々真っ赤になりつつも、「私も好き」といずれ応えるようになりましたとさ。



お読みいただきありがとうございました!

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