恐怖の「提案系」感想&コメント
クリエーター界隈では度々「感想」が問題視されることがあります。
多くのクリエーターにとって感想をいただけるのはとても嬉しいことですが、場合によってはその感想が原因で作品を生み出せなくなってしまうこともあるからです。
そういったクリエーターに負の影響を与える感想は、感想とは名ばかりの誹謗中傷だったり、作品やその登場人物に対する悪口だったりと、基本的には悪意ある内容が多いです。
しかし、実は悪意のない内容であっても、クリエーターが作品を生み出せなくなる原因になることがあります。
今回はその中でも特に問題となりやすい「提案系」の感想について紹介したいと思います。
ここからは物書き視点での内容になりますが、本題に入る前にまず感想に関する小話をします。
クリエーターの中でも漫画家や作家など文章を書くタイプのクリエーターは、書かれて嫌な感想についてSNSで呟いたり、エッセイで紹介したりすることがあります。
各々が具体例をあげて紹介していますが、人によって感覚や受け取り方は異なるので、中にはピンと来ないという人もいるかもしれません。
例えばよく見る内容として、「~先生の○○と似てますね!」みたいに他作品の名前を出されるのを嫌う人は結構見る気がします。
しかし、この例を見ても「私は別に嫌な気持ちになんかならないけど?」と思った人もいるのではないでしょうか。
私もどちらかと言えば気にならない方というか、むしろ光栄に思うタイプなのですが、これはあくまでも「知っている作品」であることや「自分の好む作品」であることが前提となります。
もし知らない作品の名前を出されたら正直困惑すると思いますし、不安も感じると思います。
理由は、褒められているのか皮肉を言われているのか、それとも暗にパクリだと言われているのかがわからないからですね。
有名作品であれば作者なら誰だって知っているだろうと思われがちですが、作者が有名作品を知らないというケースは意外と多いです。
作者の中には他の作品を読まない「書き専門」みたいなタイプの人もいますし、専門でなくともほとんど他の作品を読まないという人もいます。
他にも世代の差なんかは結構大きくて、一昔前は男の子なら誰でもドラゴンボールを知っているという風潮でしたが、今は知らないという人が一定数いるのだとか……
そういった感想を書く人は、ほとんどの場合悪意なく知っていると思い込んで書いているのだと思いますが、作者側の受け取り方次第では不快感を与える可能性がある――ということを頭の片隅に留めておくと良いでしょう。
ちなみにコレ、私自身もやりがちなので戒めの意味でも書いています。
何故こんな小話を挟んだかというと、今回紹介する「提案系」の感想も、思い込みや善意から書かれることがほとんどだったりするからです。
ネットが発達したことで、世の中には陰謀論を信じたり、ネットの嘘を鵜呑みにしてしまう人がそれなりに多いと知れ渡ったと思っています。
特にX(旧Twitter)では様々な憶測や暴論が飛び交っており、それを信じてしまったがためにヤバい人扱いされている人も珍しくありません。
そういった人達は良く言えば純粋で、悪く言えば騙されやすかったり思い込みの激しいタイプと言えます
X(旧Twitter)をやってない人であれば、「さすがにヤバい人扱いは酷いでしょ」と思うかもしれません。
なので簡単に例を出しますが、「電線には、実は電気が通っていない」と書かれていたら皆様はどう思うでしょうか?
普通は信じないと思うのですが、私が見た人は「鳥は普通にとまってるし、前からおかしいと思ってたんだ」と反応していました。
流石に冗談だろうと思ってその人のことをしばらくチェックしていましたが、どうやらマジっぽい……
他にも地球は平らだと信じているフラットアース派など、世の中には色んなことを信じ込んでいる人達が一定数います。
嘘だと思う人もいるでしょうけど、詐欺や悪徳宗教にハマってしまう人は昔からいますし、家族がそんなタイプで苦労している人もいるんじゃないでしょうか。
思い込みが激しくなる原因は本人の資質も大きいですが、育ってきた環境や加齢、ストレスが原因ということもあるので、責めたり貶したりすることではありません。
ただ、そういう人もいるということを認識しておくと良いでしょう。
そのうえで、本題となる「提案系」の感想について書いていきたいと思います。
まずこの「提案系」という言葉ですが、これ自体は私が勝手に作った表現ですので実際にある言葉ではありません。
多分伝わるとは思いますが、要するに作品に対して何か提案してくるタイプの感想を暫定的にそう呼んでいます。
小説や漫画などの感想には稀に「この先の展開はこうしたらどうでしょうか?」とか、「このキャラは不愉快なので早めに殺した方がいいと思います」といった、物語の展開に対する提案や要望が書かれることがあります。
まあ個人個人で好き嫌いはあるので気持ちはわからないでもありませんが、作者側からすればいきなり部外者から内容に口出しされるようなものなので、正直余計なお世話という気持ちを抱く人が多いのではないでしょうか。
まあ、この時点で純粋な感想ではないし、マナー違反だとも思いますが、「提案系」の厄介さはそれだけではありません。
というのも、無視するだけでは済まないという問題があるからです。
恐らく上記を読んでる時点で「そんなの無視すればいいだろ」と思った人もいると思うのですが、場合によってはその感想と今後予定している展開が一致してしまうこともあるため、作者側としては非常に悩ましい状況になってしまいます。
それすらも無視すればいいと思う人もいるでしょうが、全員が全員そう簡単に割り切れるワケではありません。
この業界では、この手の「提案系」の感想が連投されたり、酷い場合は「ファンに結末を書かれてしまった」ことで続きが書けなくなった――という話は結構耳にします。
実際に公言している人もいるので探せば見つかると思いますが、これは冷静になれば容易に作者側の気持ちを想像できるのではないでしょうか。
自分がやろうと思っていたことや、書こうと思ってた内容を他人に先に提案されるのって、物凄くストレスですからね……
読者が容易に想像できるような内容を書かなければいいだろ! と思いますか?
いやいや、誰しもが天才や鬼才ではないので、そんなのは無理な話です。
作者一人に対し読者は大勢いるワケですから、その中に一人でも作者を上回る才能を持っている人がいるだけで終わりですよ。
ただですね、実は単純な展開予想や考察だけであれば、度が過ぎなければ問題ないと思う人も結構多かったりします。
このエッセイでは区別として「予想系」や「考察系」の感想として扱いますが、これは嫌うどころか好まれることもあるくらいです。
たとえば、序盤から色んな伏線を張ったり情報を小出しにしている作品なんかは、読者が途中で答えに辿り着くことも珍しくありません。
でもこれって、普通は作品をしっかり読み込まないと気づけないと思うので、作者側としては中々に嬉しいことなんですよね。
もちろん嫌がる人もいると思いますので気軽に書くのはオススメできませんが、絶対にやめた方がいいとまでは言えないと思います。
あくまでも、度が過ぎなければですが……
それに対し「提案系」の感想は、はっきり言ってやめた方がいいと思います。
作品の今後の展開に触れる点では変わらないため「予想系」や「考察系」と似てはいますが、「提案系」は明らかに作品への干渉を目的としているため非常に印象が悪いです。
同じように今後の展開が書かれていたとしても、「~という展開にしてみてはどうでしょうか?」と書かれているだけで一気に不快な気分になります。
仮にもし今後同じ展開にする予定だったたとしたら、この感想を見ただけで一気に書く気が失せそうですね。
ある書籍化作家様も自身のブログで、「私の案を採用してくれたんですね!」は虫唾が走りそうと書かれていました。
いや本当、そんなつもりは全くなかったのにこんなこと書かれたら、かなりキッツイと思います……
例えるまでもないと思いますが、なんとなく気分で髪を切っただけなのに、「前々から君はショートカットが似合うと伝えていたけど、やっと僕の言うことを聞いてくれたんだね」とか言われたらゾゾゾ……ってなりますよね!
私が今回このエッセイを書こうと思ったのも、とあるヒロインが沢山登場する漫画の作者様がX(旧Twitter)で注意喚起的なポストをしていたからだったりします。
内容としては各々の考えたヒロイン案を個別に送ってくるのはやめて欲しいというものですが、これも「提案系」の感想と同種のものですから問題点がほぼほぼ同じです。
上記でも書きましたが、全くそんなつもりがなかったり、そもそも見てすらいなかったとしても、感想を書いた人が「自分の案を採用してくれた!」と勘違いしてしまうのが「提案系」の厄介なところと言えるでしょう。
そして、そこから予想されるトラブルの最悪の例とも言えるのが、かの「京都アニメーション放火事件」です。
ただでさえ「提案系」の感想と同じ展開なんて書きたくないのに、無視して書いたらネタが被ってトラブルになる可能性まであるんなんて、恐ろし過ぎます……
それはもう文字通りの地雷ですから、踏まないように注意していたら歩けなくなっていた――なんてことになっても不思議ではありません。
恐らくは「提案系」の感想を書く人も善意でやっているのだと思いますが、善意の押し売りという言葉があるように、自分の勝手な思い込みによる善意は迷惑になり得ます。
これを純粋な人や思い込みの激しい人に伝えるのは難しいかもしれませんが、このエッセイを読んだ方は「作者側が求めていない提案は嫌がられる可能性がある」ということを意識していただければ幸いです。
最後にですが、これを読んでも感想を書くこと自体は怖がらないでくださいね。
いや、本当は感想系の話題には触れたくなかったんですよ。
これ読んだ人が感想書きづらくなったりするの、嫌だったんで……
最初にも書きましたが、クリエーターにとって感想って凄く嬉しいものですし、それを糧だったりエネルギーにして作品を生み出している人も沢山います。
だから本当はもっと気軽に感想を書いて欲しいという気持ちもあるんですけど、近頃は事件になったり色々問題も起きてるので、少しでも意識してくれる人が増えたらなぁ……という気持ちで今回長々と書かせていただきました。
それでは皆様、良き執筆&読書ライフを!




