第1話 病院潜入生配信事件調査記録:川村優太の失踪
この物語は複数の資料や記録から構成されており、少々長めの文章となっております。しかし、霞ノ杜療養所で起きた不可解な出来事の全容を理解するためには、これらの資料をすべて読み解くことが必要です。どうか最後までお付き合いください。この記録があなたの元に届いたことには、きっと何か意味があるはずです。
第1話 病院潜入生配信事件調査記録:川村優太の失踪
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以下は、霞ノ杜市特別失踪事件調査委員会が収集した証言・記録である。本資料は2022年9月15日に発生した動画配信者・川村優太(当時22歳)の失踪事件に関する一次資料及び関係者証言をまとめたものである。なお、一部の記録は判読不能箇所や証言の矛盾を含むが、資料としての真正性を保つため編集を最小限に留めている。
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【資料1-A】事件概要(警察作成・捜索報告書より抜粋)
事案番号: 霞ノ杜市警察署刑事課 2022-09-0218
発生日時: 2022年9月15日午後11時17分頃(最終配信途絶時刻)
発生場所: 旧霞ノ杜結核療養所(霞ノ杜市北部山間部)
被害者: 川村優太(22歳・動画配信者「ユウタのリアル心霊ちゃんねる」運営)
報告者: 佐藤健太(被害者の友人・配信視聴者)
事案内容: 被害者は動画のライブ配信のため単独で廃病院に侵入。配信中に異音と異常現象が発生し、突如として通信が途絶えた。
捜索状況: 9月16日〜9月23日にかけて警察・消防による捜索を実施。被害者の所持品の一部は発見されたが、本人の発見には至らず。9月30日に捜索活動を終了。
備考: 当該廃病院では過去にも2件の不審死(2008年の写真家の転落死、2013年の高校生失踪事件)が発生している。
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【資料1-B】現場略図(警察作成)
図1: 旧霞ノ杜結核療養所周辺地図(×印は被害者の車が駐車されていた位置)
図2: 病院建物内部図(〇印は遺留品発見場所、点線は配信映像から推定される被害者の移動経路)
図3: 地下区画の推定図(病院の公式図面には記載がない区画・確認済みの範囲のみ記載)
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【資料1-C】証拠品リスト
1. 被害者のスマートフォン(電源は入るが画面にノイズのみ表示・データ一部抽出済み)
2. 被害者の財布(現金12,800円、運転免許証、クレジットカード在中)
3. ライト付きヘッドバンド(血液様の痕跡あり・DNA鑑定中)
4. 落書きされた病院カルテ(1962年のもの・被害者の指紋確認)
5. 配信用ウェアラブルカメラ(破損状態・記録データ一部復元済み)
注: 上記証拠品はいずれも事件発生から3日後、病院の地下区画で発見された。被疑者の痕跡は発見されず、自然災害や事故による失踪の可能性も低いと判断される。
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【資料1-D】最終配信映像分析記録
分析実施: 2022年9月19日
担当者: 清水刑事・画像分析課
清水: 以下、川村優太の最終配信映像(2022年9月15日午後10時03分〜11時17分)の分析結果をまとめる。
00:00-05:10: 被害者が車内から配信開始。「今夜は伝説の旧霞ノ杜結核療養所に潜入する」と説明。視聴者からのコメントに応え、単独行動であることを強調。「みんなの期待に応えるため、地下の手術室まで行く」と宣言。
05:11-12:40: 車を路肩に駐車し、病院敷地に侵入。フェンスに「立入禁止」の看板があるが、「毎回のことじゃん」と笑いながら無視。敷地内に踏み入れた時点で、マイクに風の音が強まる。
12:41-18:22: 病院正面玄関に到着。建物の外観を撮影しながら「1948年開設、1972年に閉鎖、その後は放置されたまま」と説明。玄関のガラスが割れており、そこから内部に侵入。
18:23-25:50: 病院1階の廊下と数部屋を探索。壁の落書きや残された医療器具などを撮影。この時点では平静を保っている。
25:51-29:30: 階段を見つけて2階へ移動。「二階には結核患者の隔離病棟があったらしい」と解説。廊下の奥で白い影のようなものが一瞬映るが、被害者は気づいていない様子。
29:31-35:42: 2階の病室を探索中、突然天井から水滴が落下。被害者は「雨漏りか」と言うが、当日の天候は晴れで降水はなし。視聴者コメントには「血のようだ」という指摘が複数あるが、被害者は否定。
35:43-42:10: 別の病室で古いカルテを発見。「1962年6月17日」の日付があり、患者名は「実験体21-F」と記載。被害者は「冗談だろ」と笑うが、落ち着きがなくなった様子。
42:11-48:30: 地下への階段を発見。「ここからがメインの見どころだ」と言いながら降下。地下に入った途端、音声にノイズが入り始める。
48:31-53:15: 地下廊下の探索。暗闇の中、懐中電灯の光だけで進む。廊下の突き当たりで金属製のドアを発見。「手術室」と書かれた表札あり。
53:16-57:40: 手術室内部の撮影。錆びた手術台や古い医療器具が残されている。壁には「成功例」と書かれた写真が複数貼られているが、写真はすべて黒く変色して判別不能。
57:41-1:01:22: 手術室の隅に小さな扉を発見。「さらに地下があるのか?」と言いながら開ける。扉の向こうは狭い通路になっている。この時点から映像が時折乱れ始める。
1:01:23-1:05:48: 通路を進むと、丸天井の小部屋に到達。壁一面に何かの図形や文字が書かれており、被害者は「なんだこれ」と混乱した様子。カメラを向けると、映像が大きく乱れる。
1:05:49-1:08:37: 部屋の中央に「実験記録」と書かれた金属製の箱を発見。開けようとした瞬間、部屋の電気が突然点灯。被害者は驚いて叫ぶ。「電気が通ってるはずない」と混乱。
1:08:38-1:10:56: 背後で足音が聞こえ始める。被害者は恐怖で震えながらも撮影を続ける。「誰かいるのか?」と叫ぶが返答なし。
1:10:57-1:13:20: 急に部屋の温度が下がったのか、被害者の息が白くなる。壁に書かれた文字が浮き上がるように光り始め、被害者は「何が起きてる…」と呟く。
1:13:21-1:14:02: 突然の異音と共に映像が乱れる。断続的に病院内のさまざまな場所の映像がフラッシュバックのように映る。一瞬、白衣を着た複数の人影が映り込む。
1:14:03-1:14:50: 被害者の悲鳴と共に、カメラが床に落下。映像は床を映したまま固定される。背景で「やめて……」「近づくな……」という被害者の声。
1:14:51-1:17:12: 床に落ちたカメラに映るのは被害者の足だけ。徐々に後退していく足元。何かに引きずられているように見える。最後に「助けて……」という叫び声と共に映像と音声が途絶える。
専門家所見: 映像内の時間経過と実際の時刻が一致しておらず、1時間13分の配信中に実際には1時間45分が経過していたことが判明。また、最後の10分間には映像に説明のつかない異常(人影、光の歪み、不自然なノイズパターン)が複数確認されている。
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【資料1-E】視聴者インタビュー記録
実施日: 2022年9月17日
対象者: 佐藤健太(23歳・川村の友人)
聴取者: 村田刑事
村田: それでは、川村さんの最後の配信について、あなたが見ていた内容を詳しく教えてください。
佐藤: はい。僕はユウタ……川村のチャンネルの常連視聴者で、あの夜も最初から見ていました。ツイッターで「今夜は伝説の廃病院に行く」という予告があったので、楽しみにしていたんです。
村田: 配信中、何か異常だと感じたことはありましたか?
佐藤: 最初のうちは普通でした。いつものユウタの調子で冗談を言いながら、廃墟を探検して……。でも、地下に降りてからは様子がおかしくなったと思います。
村田: どんな風におかしかったですか?
佐藤: まず映像が時々乱れ始めて……。あと、ユウタの声が次第に震えてきたんです。最初は「視聴者を怖がらせるパフォーマンス」だと思ったんですが……。
村田: 演技ではないと感じた理由は?
佐藤: ユウタを5年くらい知ってるんですが、あんな風に本気で怯えた顔は見たことがなかったです。それに……。【10秒間の沈黙】
村田: どうかしましたか?
佐藤: 警察には言ってないことがあるんです。あの配信、実は僕だけじゃなくて300人近くが見ていたんです。でも、終わった直後からコメント欄に書き込んでいた人たちが次々とアカウントを削除し始めて……。翌朝には、残っていたのは僕を含めた20人くらいだけでした。
村田: アカウントを削除? なぜそんなことが?
佐藤: わかりません……。でも、最後の10分間の映像には、「見てはいけないものが映っている」というコメントが殺到していました。僕にはよく見えなかったんですが、何人かが「顔が写っている」と……。
村田: 顔? 誰の顔ですか?
佐藤: 【震える声で】わかりません。でも、その後、残った視聴者たちとSNSでやり取りしたんです。みんな同じようなことを言っていました。「映像を保存しようとしたら、スマホやPCがクラッシュした」「夜中に謎の着信があった」「知らない番号からメッセージが来た」って……。
村田: そのメッセージの内容は?
佐藤: 「私たちの場所を教えてくれてありがとう」だそうです……。
村田: 他に何か覚えていることはありますか? どんな些細なことでも。
佐藤: 【30秒間の沈黙】そういえば、最後の部分で……壁に何か文字が書いてあるのが見えました。よく見えなかったけど、「継続中」だか「実験継続」だかって……。あと、床に落ちたカメラに映ったユウタの足……履いていた靴の裏側に何か書いてあったような……。
村田: それは重要な情報かもしれません。他には?
佐藤: あの……これは僕だけかもしれないんですが、配信が終わった後、一瞬だけ画面が戻ったんです。真っ暗な中で、白い医療用マスクをした人が何人も映っていて……。それで「次の被験者をお連れしました」という音声が聞こえて……、再び画面が消えました。
村田: それは本当ですか? 他の視聴者も見ていますか?
佐藤: わかりません……。怖くて、誰にも聞けなくて……。【泣き始める】警察さん、ユウタは見つかりますか? あんな場所、何かおかしいです……。
〔インタビュー一時中断〕
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【資料1-F】ライブ配信コメント抜粋
注: 以下は川村優太の最終ライブ配信のコメント欄から、警察が復元できた一部分である。ユーザー名は匿名化している。
User_A: おっ、今夜は廃病院か! 期待してるよ
User_B: この病院って本当に人体実験してたって噂あるよね
User_C: 早く中に入れよ!怖いところ見せてくれ
User_A: マジで例の病院じゃん!前から行ってほしかったんだよな
川村優太: 「みんな今夜は地下の手術室まで行くからな! 絶対に最高の配信にするぞ!」
[…時間経過…]
User_D: 部屋の隅に何か居なかった?右に影が…
User_E: 気のせいだよ。古い建物だし光の反射でしょ
User_B: いや、マジで何か映ったよな?俺も見た
User_F: 音量上げてみ?なんか声聞こえない?
User_A: 俺も見た!右端に影がチラッと
川村優太: 「え?何かいるの?俺には何も見えないけど…」
[…時間経過…]
User_G: マジでやばい、地下はやめとけって。あそこは危険だ
User_B: この配信、なんか雰囲気おかしくねぇ?
User_H: 初めて見るけど、このチャンネル演出凝ってんな
User_G: 俺この病院の噂知ってるけど、地下には[コメント途中で削除]
User_C: ユウタ、引き返す必要ないよ。見せてくれ!
川村優太: 「大丈夫だって、心霊現象なんて所詮は気のせいだし…」
[…時間経過…]
User_D: 壁の字読める人いる?「成功例」じゃない?
User_F: なんかゾクゾクしてきた…これマジなの?
User_E: カビか何かでしょ。古い病院なんだから
User_A: これマジでヤバくね?演出だよな?ね?
User_H: 後ろ後ろ!誰か立ってる!
User_D: この病院、60年代に失踪事件あったよな…
川村優太: 「なんだよ、急に視聴者増えてきたな。みんな噂好きだな…」
[…時間経過…]
User_G: マジでやばい出ろ!今すぐ立ち去れ!
User_F: 音声おかしくない?ノイズがひどい
User_C: おお!電気ついたぞ!これはビビった!
User_B: これガチっぽくなってきたな…怖すぎ
User_H: 誰が点けたんだよ…マジで誰もいないよな?
User_E: 電気系統が古いから、ショートしただけじゃ?
川村優太: 「え?嘘だろ…なんで電気が…誰かいるのか?」
[…時間経過…]
User_A: 後ろの人影マジで何?これは演出じゃないよな?
User_H: これ演出だよな?ね?そうだよね?
User_F: マジで怖い…見てられない…
User_D: 白衣…あれ手術着じゃない?複数人いる
User_G: だから出ろって言ったのに!逃げろよ!!
User_B: ユウタの顔、本気で怯えてる。これやばい
川村優太: 「誰もいないって…え?何で息が白く…寒い…」
[…時間経過…]
User_C: おい、これもう演出じゃないだろ…
User_E: 誰か救急車呼んだ方がいい。場所わかる人は?
User_D: 警察に通報した。白鷺市北部の旧療養所で間違いないよな
User_A: 誰か場所特定して助けに行けないか?マジで心配
User_F: 映像が歪みすぎ…何が起きてるの?
User_B: これもう見てられない…マジで何かいる
川村優太: 「やめて…近づくな…」
[…最終部分…]
User_G: これ保存しとく。証拠になる
User_H: 位置情報オンになってる?誰か場所特定して!
User_B: 見ちゃいけないものが映ってる気がする…
User_D: 壁に書いてある文字、「実験継続中」って書いてある
User_C: なんだこれ…顔がたくさん映ってる…
User_F: この配信後に消すわ…怖すぎる
User_A: 頼む、助けてくれって言ってる?誰か現地行って!
User_E: これは冗談じゃない。地元の人いたら警察に連絡を
User_H: ユウタ!最後に何て言った?聞き取れなかった
User_D: この映像、絶対に保存するな。危険だ
[配信終了]
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【資料1-G】被害者のメモ帳アプリから回収されたメモ(9月13日の記述)
注: 以下は川村優太のスマートフォンから復元された最後のメモである。判読困難な部分は[判読不能]と表記した。
9月13日
霞ノ杜結核療養所ロケハン完了。過去最高の心霊配信になるはず。
情報まとめ:
・1948年〜1972年まで運営。公式には結核患者の療養施設。
・噂では戦後の混乱期に人体実験が行われていた。
・地元の古老は「夜になると叫び声が聞こえた」と証言。
・1972年に突如閉鎖。理由は[判読不能]
・2008年に写真家が取材中に転落死。死因は「事故」とされるが遺体に[判読不能]
・2013年に肝試しに来た高校生が行方不明。未解決事件。
地下への入口は見つけた。手術室の奥の小さな扉。明らかに公式の図面には載ってない。
最高のネタになる。視聴者が喜びそうな「証拠」も用意した。再生数爆上げ間違いなし。
気になるのは、ロケハン中に聞こえた[判読不能]の声。録音されてなかったけど、確かに「帰れ」と言っていた。
まあ、そんなの気のせいだよな。明後日の配信が楽しみだ。地下室の奥まで行けば、チャンネル登録者は間違いなく10万人突破する。
最後に確認:機材チェック済み。バッテリー満タン。緊急時の脱出経路3つ確保。何も問題ない。
でも念のため、このメモを残しておく。何かあれば、全データはクラウドに自動アップロードされるようにした。
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【資料1-H】地元住民インタビュー記録
実施日: 2022年9月20日
対象者: 田中幸子(78歳・霞ノ杜市在住)
聴取者: 特別調査委員会・山下調査官
山下: 田中さん、今日はお時間をいただきありがとうございます。旧霞ノ杜結核療養所について、ご存じのことを教えていただけますか?
田中: あの病院のことですか……。【深いため息】若い方があそこに入るなんて、本当に愚かなことをしますね。
山下: 何か危険なことがあるのでしょうか?
田中: わたしが若い頃、あの病院で働いていたんです。看護助手として。表向きは結核療養所でしたが、実際は……。
山下: 実際は?
田中: 【小声で】特別病棟がありました。地下に。一般のスタッフは近づけない場所でした。週に一度だけ、深夜に患者が運ばれてくるのを見ました。でも、出てくるところは一度も……。
山下: その特別病棟では何が行われていたのですか?
田中: 詳しくは知りません。ただ、当時の院長先生が「人間の限界を超える研究」と呼んでいたことは覚えています。研究チームは皆、外国から来た医師たちで……日本の医療倫理委員会の目を逃れるためだったのでしょう。
山下: 何か具体的な証拠はありますか?
田中: ある夜、清掃のために地下に降りたとき、偶然書類を見てしまいました。「意識転移実験」とか「肉体の限界値測定」とか……。怖くなって、すぐに戻りました。翌日、その書類は消えていました。
山下: 病院が閉鎖された理由はご存じですか?
田中: 【長い沈黙】ある朝、突然の閉鎖命令が出たんです。前日の夜、地下から凄まじい悲鳴が聞こえて……そして……。
山下: そして?
田中: 【震える声で】朝になったら、特別チームの医師たちが全員姿を消していました。地下病棟の扉にはカギがかけられ、誰も中に入れなくなっていました。その日のうちに閉鎖が決まり、患者は全員転院……。わたしたちスタッフも即日解雇されました。
山下: その後、病院には戻られましたか?
田中: 二度と近づいていません。でも……【さらに声を落として】時々、夜中に家の電話が鳴るんです。出ると、あの時の患者たちの声が聞こえるような……「助けて」「ここから出して」って……。
山下: それは……。
田中: 【急に表情が変わる】あの若い人は見つかりますか? 配信していた人……。
山下: 捜索は続いています。何か情報があれば。
田中: 【唐突に】あの病院には「何か」が残っています。実験は失敗していません。成功したんです。だから病院は生きているんです。人を呼び寄せるんです。
山下: どういう意味ですか?
田中: 【虚ろな目で】あの医師たちは言っていました。「人間の意識を建物自体に定着させる」って……。失踪した人は、皆、あの病院の一部になっているんです……。
〔インタビュー終了〕
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【資料1-I】配信から回収された異常画像(3枚)の説明
注: 以下の画像は川村優太の配信映像から切り出されたものである。いずれも通常の再生では数フレームのみ表示される瞬間的な映像である。
画像1: 病院2階の廊下。一見すると何もないように見えるが、拡大・コントラスト調整の結果、廊下の奥に白衣を着た5人の人影が並んで立っているのが確認できる。顔の部分は黒く塗りつぶされたような状態。(タイムスタンプ: 10:31:42)
画像2: 手術室の壁。配信では一瞬だけ映り込んだフレーム。壁には「実験継続中 - 被験体募集 - 意識転移成功率75%」と書かれている。この書き込みは警察の現地調査では確認されておらず、現実に存在したかは不明。(タイムスタンプ: 11:08:56)
画像3: 配信終了直後に一部視聴者のみが目撃したとされる映像。複数の医師が円陣を組み、中央に横たわる人物(川村と思われる)を取り囲んでいる。医師たちの顔は不自然に歪んでおり、人間のものとは思えない。映像の隅には「1972-2022 継続実験」という文字が見える。(タイムスタンプ: 11:17:03 - 配信公式終了後)
専門家所見: これらの映像には技術的な説明がつかない異常が含まれている。特に画像3は配信が完全に終了した後に送信されたデータであり、技術的に不可能な現象である。また、これらの映像を詳細に分析しようとした警察のコンピュータ3台が突然の故障を起こしており、何らかの電子的干渉の可能性が指摘されている。
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編集者注: 本資料は霞ノ杜市特別失踪事件調査委員会の内部記録である。川村優太失踪事件については、いまだ全容解明には至っていない。注目すべきは、被害者が意図的にセンセーショナルな配信を計画していたにもかかわらず、実際に異常現象に遭遇した形跡があること、また病院の歴史的背景と現在の事件が密接に関連している可能性が高いことである。調査は継続中。
〔追記:本資料作成の5日後、画像分析を担当した清水刑事が突如として休職。理由は「精神的不調」とされているが、同僚の証言によれば「夜中に病院から電話がかかってくる」と訴えていたという。また、警察に寄せられた匿名の情報提供によれば、新たな「探検者」が病院を訪れる計画を立てているとの情報がある。〕
長い資料の数々をお読みいただき、ありがとうございます。これはただの失踪事件の記録ではなく、もっと深層に潜む真実への第一歩に過ぎません。この資料が示す事実と矛盾、そして語られないものの存在に気づかれたでしょうか。真相は表面上の記録の奥に隠されています。次なる資料が明かすのは、さらに不可解な事実の数々かもしれません。ここまでの「記録」を読み解く準備はできていますか?この先もお付き合いいただけますか?